ラグビーW杯フランス大会 ニュージーランド対南アフリカ、決勝戦を見る前に振り返っておきたい今年の2試合
決勝戦のカードが決まった。
ニュージーランド対南アフリカ。
プールAの2位とプールBの2位の対戦である。
ワールドカップの決勝戦という位置づけであるが、カード自体は見慣れたものだ。ザ・ラグビーチャンピオンシップで、来年も再来年も定期的に見ることのできるカードだ。
希少性に乏しい。その意味で、4年に1度のお祭りの頂点にしては、やや期待外れの感がないでもない。
しかし、この両者の対戦はいつも見ごたえがある。
今回はどちらが勝つだろうか?
過去の対戦成績を振り返っておこう。
ただし「次」の試合を占うのに、あまり昔に遡っても意味がない。
近年はどうなっていたのか?
互角なのである。
そして今年は、すでに2度も対戦しているのだ。
ワールドカップ決勝戦は、両チームにとって今年3度目の対戦に当たる。
2023年の2試合はどのような内容だったのか?
それを踏まえた上で3戦目の勝敗の行方を想像するのも悪くないだろう。
1試合目 7月15日@オークランド
この試合はフル動画がYouTubeにあがっている。
以下は試合内容を私なりに要約したものである。(記号の意味は、ラグビー好きの方にはおわかりいただけると思う。)
内容は、ニュージーランドのスピード対南アフリカの肉弾勝負というオーソドックスなものであった。
スクラムは南アフリカが勝っていた。ラインアウトでは南アフリカの失敗が目についた。
フルタイムの点差は、ほぼ開始20分でついた差である。
開始20分までのニュージーランドの得点は、相手をスピードで上回って奪ったトライであった。それ以降は、互いにゲームのペースに順応したのか、均衡モードに入ってしまう。
2試合目 8月25日@ロンドン
私はこの試合をJ SPORTSで見たが、ハイライト動画ならYouTubeにあがっている。
この試合はニュージーランドが大敗を喫したとして注目された。
しかし今回見直してみると、これは〝異常〟な試合であった。
何が起きたかと言うと、前半にニュージーランドが反則をとられまくったのである。スクラムで、ラインアウトで。そしてスコット・バレットとサム・ケインにイエローカードが出て、2人同時にシンビンに入るという事態が発生する。さらに前半38分には、同じくスコット・バレットがラックにチャージしてレッドカードの退場処分になる。異様な雰囲気のまま前半を終えるのである。
後半は15人対14人であった。ニュージーランドのスクラムにはバックスが加わったが、崩壊した。
そして、あわやニュージーランドの無得点試合かと思われたところで、南アフリカの積極的に前に出る防御が裏目に出て何とか1トライを返した、という試合なのである。
フルタイムの得点だけを見ればニュージーランドが大敗したように思うかもしれない。しかし、ニュージーランドに対して南アフリカが強かった――との印象を、この試合は与えない(キックレシーブに対する南アフリカの圧力が予想外で、ニュージーランドの選手たちが慌てた、という一面はあるにせよ)。上の事情を知れば、むしろ、あれだけ有利な状況にあって、南アフリカはたったこれだけしか得点できなかったのか、との印象の方が強いのである。
直近の結果が28点差だから南アフリカ優位、との見方に私は賛成できない。
3試合目(ワールドカップ決勝戦)へ向けて
どちらが勝つだろうか?
わからない。私には、次の1戦の勝敗を予想する能力はない。もう1度やれば別の結果が出る、そういう2チームだと思われる。
ただ、直近の2試合から想像するに、前半の20分にペースを作った方が勝つだろうという気がする(1試合目はニュージーランドがペースを作った。2試合目はニュージーランドに異常が生じた)。
いや、20分では長すぎる。15分か。
開始15分で答えが出てしまうのではないか。
フェアキャッチでスクラムを選択した南アフリカである。
南アフリカは、開始直後に先制してリードするために新たな奇策を用意しているかもしれない。
ここに来てファフ・デクラークとハンドレ・ポラードを先発させるなど、何がなんでも前半にリードするという意思表明ではないか。
私は「開始15分」をテーマに観戦しようと思う。
プール戦でアイルランドに負け、準々決勝・準決勝はいずれも薄氷を踏む1点差で勝ち上がってきた南アフリカ。
開幕戦でフランスに負け、準々決勝でアイルランドに脅かされたものの、それ以外はあまり苦労することなくスイスイと決勝に進んだニュージーランド。
どちらが勝っても最多優勝記録を更新する(3回→4回)。
南アフリカが勝てば2連覇となり、次の大会では前人未踏の3連覇がかかる。
ニュージーランドはヘッドコーチのイアン・フォスターの退任が決まっている(3月に発表された事実上の更迭。一時は直近5戦の成績が1勝4敗だったのだ)。もし勝てば、ニュージーランド協会は、優勝チームの指揮者の解任を先走って決めたことになる。
どちらに転がっても、面白い結果が待っている。
(後日追記)
開始15分のスコアは、南アフリカの6対0だった(ニュージーランドにイエローカード1枚あり)。やはり序盤を制した方が勝ったと言えよう。
南アフリカはノートライで優勝してしまった。
それにしても、まさか両チームの主将にカードが出るとは。しかも片方がレッドとは。
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