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もしも高校倫理の先生が荀子だったら『荀子』

荀子「こんにちは。僕は荀子。今日は古代中国から君たちに倫理の授業をするためにやってきた。よろしくね。」

生徒一同「よろしくおねがいします。」

後天的努力のみが大切

荀子「まず君たちに質問だ。天才って居ると思うかい?」

生徒A「生まれつき特別な才能を持つギフテッドと呼ばれる人たちが世界中に居るそうですよ。アインシュタインなんかが代表的です。」

荀子「僕は天才なんていないと思ってるんだ。生まれた瞬間はみんな大差無い。あらゆる差は後天的な努力によって生じると考えてる。アインシュタインだって生まれた瞬間に相対性理論を発見したわけじゃないよね。」

生徒A「努力すれば誰でもアインシュタインになれると?」

荀子「そうだ。例えば部活でキツい練習はしたくないよね。これは人間の本能だからみんな一緒だ。そこで本能に負けてサボってしまう人と、サボらず最後までやり抜く人が居る。レギュラーになれる人と補欠になる人との差はここにあるんだよ。才能じゃない。」

礼儀を学ぼう

荀子「さらに質問をしよう。人間と他の動物との差はどこにあると思う?」

生徒B「言葉を話せることだと思います。」

荀子「良い着眼点だね。僕は人間と他の動物の違いは勉強するかどうかだと思ってるんだ。勉強しない人は犬や猫とあんまり変わらないのさ。中でも礼儀について学ぶことが人間にとっては大切なんだ。」

生徒B「礼儀ってあいさつの仕方とか言葉遣いとかそういうことですか?」

荀子「あいさつや言葉遣いも礼儀の一つだね。簡単に言うと礼儀とは正しい立ち居振る舞いのことだ。」

生徒B「正しい立ち居振る舞い…大切だとは思いますけど、人生にはいろんな場面がありますから体系的に学ぶのは難しそうですね。」

荀子「その通りだ。礼儀を体系的に学ぶのは難しい。そこで僕がオススメする勉強法は師匠を見つけることだよ。お手本となる人を見つけて真似をしてみることからはじめるのが一番効率的だ。」

学んで実践する努力を続けよう

荀子「正しい立ち居振る舞いを勉強したら必ず実践すること。立派な人は学んだことを必ず実践するものだ。」

生徒C「知ってると出来るは違うってやつですね。常に正しい言行を心がけるって疲れそうですけど。」

荀子「それでもやるのさ。正しい言行を積み重ねていくことによってのみ人は立派になれるんだ。小さなことでも、人に見られていなくても気にしちゃいけないよ。」

生徒C「正しさの基準みたいなのは無いんですか?師匠を見つけろって言われてもすぐには見つかりません。」

荀子「そんな時は反対にやっちゃいけないことを考えてみよう。怒らないこと、逆らわないこと、人をバカにしないこと、大口を叩かないこと、こびへつらわないこと、ケンカしないこと、ズルしないこと、人を傷つけないこと、必要以上に欲しがらないこと、自己中心的にならないこと、いま思いつくのはこれくらいかな。」

生徒C「うわ、心当たりがありすぎる…」

荀子「正しく生きる努力を重ねて、意識しなくても礼儀にかなった言行ができるようになったら完璧だね。」

生徒C「が、がんばります!」

荀子「頑張ってね。すべての出来事には原因がある。正しく生きる努力を続けて立派な人になれば幸せは必ずやってくるよ。さて、そろそろ時間だね。今日はここまで。ありがとうございました。」

生徒一同「ありがとうございました。」

参考文献
金谷治訳注 『荀子』(上) 1961年 岩波書店
金谷治訳注 『荀子』(下) 1962年 岩波書店

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