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読書:『日本人とドイツ人』雨宮紫苑

①紹介

ドイツ在住のフリーライター・雨宮紫苑氏による『日本人とドイツ人-比べてみたらどっちもどっち』(新潮新書、2018年)を紹介します。日本よりドイツの方が肌に合う。そう思い移住したドイツで著者が見た両国の違いとは。異国の地で迷走する日本人女性の歯に衣着せぬ怒涛の比較文化論です。

②考察

「日本人の英語力の低さよりも、外国人とコミュニケーションがとれないことの方が、よほど問題である」
➢ ここでの「コミュニケーション」とは、雨宮氏の言う「対応力」と同義だ。外国語が話せることと対応力があることは似て非なるもの。日本人がコミュニケーション力に欠けるのはやはり、失敗を恐れ、それを相手にどう思われるのかを過度に気にする残念な性格によるものだろう。

「日本人がいくら『日本は日本です』といっても、ほかの国は自国の価値観やグローバルスタンダード(主に欧米主導の倫理観)に照らし合わせて容赦なく批判する。そのことを忘れてはいけない」
➢ 今年の「報道の自由度ランキング」(国境なき記者団)と「ジェンダーギャップ指数」(世界経済フォーラム)によれば日本はG7の中で最低位(前者は70位、後者は118位)であり、これらは毎度批判されている。日本至上主義的な選民思想に浸っている限り「バカの壁」は消えず、日本社会を海外目線で見つめることもまた難しいだろう。

「心配りという意味での『空気を読む』は美徳だが、理不尽を受け入れるという意味での『空気を読む』は、日本の大きな問題だと思う」
➢ これに対してドイツ人は自己主張が強く議論を好むため、「空気を読む」という習慣が皆無だ。むしろそんなことをすれば舐められるに違いない。無駄に空気を読みたがる日本人の性格は「日本教」によるものか。

③総合

ここ最近、訪日観光客(特に中国人)のマナーの悪さには目に余るものがある。しかし、文化の違いを承知していながら「郷に入っては郷に従え」などと言うのは、自分たちの価値観の押し付けに過ぎず、ただの傲慢であり差別に他ならない。海外に住んでみたら雨宮氏のように日本の国柄があらゆる意味で異質に見えてしまうのだろう。

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