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書評:『世界がわかる宗教社会学入門』橋爪大三郎

①紹介

社会学者・橋爪大三郎氏による『世界がわかる宗教社会学入門』(ちくま文庫、2006年)を紹介します。私たちにとって宗教とは一体何なのでしょう。日本人が苦手なこの分野。古代から現代にもたらされた遺産を、世界のありのままの姿を広く浅く観察してみませんか?

②考察

・「日本人は要するに、宗教音痴なのです」
→私自身クリスチャンだが、キリスト教の本質を熟知しているわけではない。そして生まれ故郷・日本に根づいた仏教や神道への理解も不足している。日本人はみな「日本教徒」なので他の宗教を受け入れなくとも生きていけるだろうが、不感症の代償は大きい。

・「宗教を信じる世界の人びとが、日本人と同じような感覚(死生観)をもっているだろうと勝手に思いこむのだけはやめましょう」
→国内外を問わず多くの学者が言うように、日本というのは、海外の文化や宗教を日本的に解釈し、原型とは別に新しいものを生み出す不思議な国だ。おかげで天国や地獄という概念があっても、それらがどの宗教に由来し、どこの神の名によって祈るのかすら日本人の大半は知らない。

・「檀家制度が壊れて、経済的に成り立たなくなった寺院が、葬式のチャンスに、過去何十年分の費用をまとめどりする‥‥‥戒名の社会的機能はこんなところです」
→日本で一回の葬儀にかける費用が、他の先進国の場合に比べてずっと高い理由はこれだろう。無宗教であるにもかかわらず、葬儀の時だけ妙に真面目になって拝むのは立派だが。日本人が「死」を恥のように感じて忌避することとの関係がありそうだ。

③総合

日本人は一般に無宗教とされているが、厳密にはある程度の宗教心を持っていると言えよう。結婚はキリスト教式で、葬儀は仏教式、年が明けたら神社へ行って神頼み。歴史上の誰かが法で定めたことではなく、エスカレーターの片側を空けるのと同じで、いつからか始まった慣習だ。日本人にとっては慣習こそ宗教だろう。では彼らと特定の宗教を信じる者(クリスチャンやムスリムなど)とを分けるのは何かといえば、宗教「観」の有無だと私は考える。

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