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読書:『禅と日本文化』鈴木大拙
①紹介
仏教学者の鈴木大拙による『禅と日本文化』(北川桃雄訳、岩波新書、1964年)を紹介します。本書は鈴木が海外に仏教を紹介するために英語で著されました。私たちの日々の生活の中に宿っている禅の精神。それが日本文化に及ぼす影響は計り知れません。
②考察
● 「禅の教義は、形態を超越して精神を把握することなのであるが、それは、われわれに自分たちの住む世界は特殊諸形態の世界である事実、精神は形を媒介としてのみ表現される事実を想起させることをけっして忘れぬ」
➢ この説に従えば、人間の肉体は精神の器に過ぎないということになる。一人一人の顔立ちや体格のあり方は各々の精神状態を如実に表していると言っても良いだろう。人間は皆、肉体があって精神があるのではなく、精神があって肉体があるのかもしれない。
● 「仏教がどれほど日本人の歴史と生活のなかに入りこんでいるかを知ろうと思うなら、その最上の方法として、あらゆる寺院とそこに蔵せられている宝物のいっさいが破壊されたと想像することだ」
➢ 私たち日本人は、これらのものが破壊された様を見て、言い表すことのできない悲壮感や諸行無常の念を思い浮かべるのだろうか。だとすれば、そこに仏教由来の「無」の存在を知ることになる。無が日本人の精神に訴えかけるものは、目に見えるものに増して大きな意味を持っているに違いない。
● 「悟りは(略)通常に異常を見、平凡な事物に神秘的なものを感知し、創造全体の意味を一気に領得する一点を把握し、一本の草の葉を採ってこれを丈六の金身仏に変ずるのである」
➢ 日常の非日常化、普遍の特殊化とでも言うべきか。一日という限られた時間に何の意味も見出さずに終えるのではなく、一分一秒に意識を傾ける姿勢が重要になるだろう。「日日是好日」という禅語が脳裏に浮かぶ。
③総合
理論より実践を重んじる禅は日本文化の形成に多大な影響を与え、武士道の確立に貢献した。古来より続く日本の衣食住だけでなく、現代のビジネスマナーにもその精神が見られるだろう。何気ない日常に目を注ぐことは悟りであり、日本人が日本人であることの意味を問う機会なのかもしれない。
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