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読書:『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』樋口耕太郎

①紹介

経営者の樋口耕太郎氏による『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』(光文社新書、2020年)を紹介します。その理由を沖縄社会に根付く歪な文化に見出した時、もう気安く「いいところ」とは言えなくなるでしょう。日本の一大観光地・沖縄の抱える不都合な真実がここに。

②考察

● 「沖縄の根本原因を突き詰める旅は、日本の根本原因を突き詰める旅でもあり、そして、私たち自身を見つめる旅になるだろう
➢ 強い同調圧力と現状維持の風潮のせいで、沖縄社会は長きにわたって「変化」を拒み、無感覚な若者を量産してきた。樋口氏は、対症療法に意味はないと言い、問題の原因を究明する第一歩としての「傾聴」が重要だと説く。この力を培うための指導を行う学校や企業がはたして日本に存在するだろうか。

● 「沖縄社会が貧困なのは、貧困であることに(経済)合理性が存在するからだ
➢ 上記の理由によって沖縄は貧困から抜け出すことができないでいる。ウチナーンチュがこの窮状を変えようとしないのは、自分が目立つことで異端者扱いされると知っているからだ。これでは革新的な技術やビジネスが成り立ちにくい。県内で基地反対の声をあげる人が圧倒的に少ないのもこれが理由だろう。

● 「貧困は経済問題ではない。自尊心の低さが招く心の問題だ
➢ 樋口氏によれば、ウチナーンチュ(特に若者)の多くは「翼」=可能性を元から持っているにもかかわらず、その存在をすぐに否定してしまう。自分を愛する方法も力も希薄な彼らに対しては、翼があることを悟らせる以外に方法はない。そのために必要なのは、相手の関心に関心を持つことだと氏は言う。自分の好きなことを見てほしいと願うからこそ、人は活力を得て動くことができるのだろう。そうして生まれるのが自尊心なのかもしれない。

③総合

私の知る限り、沖縄生まれの有名タレントで、帰省することはあっても、ずっと住んでいるという人は一人もいない。それは沖縄社会に見られる「できるものいじめ」のせいだろう。良くも悪くも話題に事欠かない場所として今も沖縄が異彩を放ち続けているのは何とも不思議な話である。

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