ラウンドワンの決算から考える2ヶ月以上休業しても大丈夫なのかと業績予測

どうもコージです! 私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。 そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのは株式会社ラウンドワンです、その名の通りラウンドワンの運営を行っている会社です。

こんなニュースがありました。

ラウンドワン、国内全店舗で休業延長 5月31日まで

ボウリング場など複合レジャー施設を運営するラウンドワンは国内全103店舗の臨時休業を5月31日まで延長する。従来は5月6日までの予定だった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言と休業要請の延長に対応する。6月1日から再開する予定だが、状況に応じて判断する。
同社はこれまでに3月4日から10日間、北海道の店舗を臨時休業したほか、4月2日から大阪・東京の22店舗、4月4日からは国内全店舗を臨時休業としていた。

どうやらラウンドワンは国内全店舗の休業を5月31日まで延長することを決めたようです。
丸々2か月の休業になってしまいますから、業績に与える影響は非常に大きそうです。

今回はそんなラウンドワンの今後について考えていきましょう。

それではまずこちらの資料をご覧ください。

2019年4月~2019年12月の段階で、売上高は7.2%増の770億円、営業利益は9.3%増の57.4億円、純利益は7.7%増の35.3億円と好調だったことが分かります。
好調だったのに長期の休業を余儀なくされたのは残念ですね。

続いてこちらの資料をご覧ください。

2019年4月~2020年3月期の計画では、日本国内の店舗は2店舗減少させて計103店舗に、米国市場では10店舗増加させて計42店舗へすることを目指していた事が分かります。

さらに国内店舗に関しては、4店舗で様々なスポーツなどのアクティビティが行えるスポッチャを併設させる改修工事を行い、他にも最新のカラオケ機やゲーム機を導入していることが分かります。

つまり国内市場に関しては、完全に規模の拡大を行うフェーズから店舗ごとの収益性をどう上げるのかというフェーズに移っている事が分かりますね。

その成果もあってか、国内セグメントに関しては店舗数を減らしながらも売上は608億円→620億円へと12億円(1.9%)の増加、利益は45.1億円→53.1億円へと8億円(18%)の増加となっている事が分かります。
施策の成果がきちんと出ていたんですね。

一方米国市場は店舗数を増やしたことによって売上こそ110億円→149億円へと39億円(35.4%)も増加していますが、利益は5.2億円→3.2億円へと1.6億円減少してしまった事が分かります。
米国はまだまだ規模を拡大していく投資段階だという事ですね。

実際に今後の新規オープン予定を見てみると米国でかなりの店舗数の拡大をしようとしていたことが分かります。

収益性を高めた日本で安定利益を出して、その資金を利用して米国で一気に拡大しようという戦略だったのでしょうが、新型コロナの影響でこの計画は大幅に遅れる、もしくはとん挫することになるでしょうね。

どの程度店舗の建設などの計画が進んでいたのか分かりませんが、ある程度進んでいた計画の中止が出てくると業績を悪化させることになるかもしれませんので注意が必要です。

続いて財務状況を見てみましょう。

現金性の資産は223億円ほどあることが分かります。

一方直近で支払いが必要な金額がどの程度あるのかというと、通常の営業の中で出てくる買掛金は3.6億円と小さいことが分かります。
ラウンドワンは初期投資型で、設備を作ってしまえばその後の営業で必要な物品はそんなに多くなさそうですね。
しかしカラオケ機などリース(レンタル的なもの)しているものが多いためか、1年内に支払いが必要なリース債務が82.4億円あることが分かります。
単純計算で12で割ると6.8億円ほどですので休業を2ヶ月したといっても20~30億円あればよいと考えられるます。
休業が始まる4月5月までに、この数字に大きな変化は無いでしょうから直近の支払いには余裕がありそうです。

しかし、店舗を閉めていたとしても土地などの賃借料支払いや、人件費はかかります。
また、支払日がいつなのか分かりませんが1年以内に支払いが必要になる借り入れや社債の償還、リース料の支払いなどで130~150億円ほどある事が分かります。
さらに内訳不明なその他が99億円ほどあり、この中にも支払いが必要な部分が多いでしょう。
今後客足がどの程度戻ってくるかは予測できませんので、1年単位で考えると手元資金が十分かといえば必ずしもそうとは言えなそうです。

そのため、ラウンドワンは5月1日に160億円の融資枠を確保したと発表しています。
これだけあれば資金的には余裕がありそうですので2ヶ月間の休業があっても耐えられそうですね。

ラウンドワンの業績予測!!

今回は2020年3月期の決算がどうなるか考えてみましょう。

2020年2月までは例年通りの客足で、3月からで影響が出始めて売上が24.1%減だという事が分かります。

最悪のケースでどの程度業績に悪影響を与えるのか考えてみましょう。

2019年4月~2019年12月までの売上は770億円、売上原価+販管費が713億円ということで単純計算で、770億円÷9=85.5億円が1ヶ月の売上、79億円が1ヶ月にかかる売上原価+販管費と考えられます。

2020年3月の売上の減少が24.1%ですから、85.5億円×75.9%=64.9億円となります。
売上原価+販管費に関しても、売上の減少に合わせて減少するでしょうが、最悪のケースを考えるという事で変わらないと仮定してみます。
3月の営業利益=売上高‐(売上原価+販管費)=64.9億円-79億円=15.1億円の赤字となりますね。

12月の段階で57.4億円営業の利益ですし1,2月の利益もあるはずですから、十分利益が出る計算になりますね。

続いてこちらの資料をご覧ください

繰延税金資産が36.4億円あることが分かります。

この繰延税金資産に関しては、将来の利益の見通しが悪化すると取り崩す必要があります(取り崩した金額の分だけ業績が悪化します)。
なぜ取り崩す必要があるのかについては、以前に「クックパッドがどうして赤字決算になったのか解説する」という記事で詳しく説明しましたので、そちらをご覧ください。

ラウンドワンは4月5月と2ヶ月もの休業をします、つまり2021年3月期の業績は赤字転落も十分考えられるほど悪化するでしょう、となると繰延税金資産の取り崩しが行われる可能性は高いです。
ちなみに繰延税金資産の取り崩しは、税引き後の純利益を悪化させます(営業利益や経常利益には影響がないという事です)

36.4億円全て取り崩される訳ではないでしょうから赤字転落とまではならないでしょうが、税引き後の純利益を悪化させる可能性が高そうです。

なので2020年3月期の決算では、営業利益は60億円以上と十分出ますがその割に純利益は小さく10数億円~20数億円程度となってしまう事を予測します!!

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