いきなりステーキ(ペッパーフードサービス)の借入から考える、それでも状況は厳しい話

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回取り上げるのは、株式会社ペッパーフードサービスです、こんなニュースがありました。

ペッパーフード、食材仕入れ先社長から20億円借り入れ

「いきなり!ステーキ」を運営するペッパーフードサービスは1日、食材供給元であるエスフーズの村上真之助社長から20億円を同日付で借り入れたと発表した。返済期日は7月末。急速な出店と売り上げ不振、新型コロナウイルスの影響によって業績と財務が悪化しており、運転資金と返済資金の確保を急ぐ。

同社は19年12月期に連結営業損益が7100万円の赤字、フリーキャッシュフローは68億円のマイナスとなり自己資本比率も2%まで低下していた。20年1月以降、最大69億円の調達を想定した行使価格修正条項付きの新株予約権を発行したが、コロナショックで株価が低迷。調達は約17億円にとどまっていた。

4月の「いきなり!ステーキ」の既存店売上高は前年同月比63%減。20年1~3月期の決算発表日は「未定」としている。

どうやら、いきなりステーキは大株主であるエスフーズの村上新之助社長から20億円もの個人借入を実行するようです。
上場企業が個人から借入れると言うことはそれだけ状況が厳しい事が伝わってきますね。

まず、この借り入れまでの流れを説明します。
①業績不振に陥ったペッパーフードサービスは資金調達に失敗して、資金繰りが苦しくなった。(詳細記事:いきなりステーキ(ペッパーフードサービス)の決算にみる株価が下がると倒産する可能性がある理由)

②新型コロナも直撃して、資金繰りがさらに厳しくなっている中でなぜかコストをかけて、採算の取れているペッパーランチ部門を切り離して新しく子会社を設立した。(詳細記事:いきなりステーキ(ペッパーフードサービス)が倒産して、社長がペッパーランチを買う可能性)

ちなみにここで私は、新会社を設立した理由としてペッパーフードサービスが倒産間近ので、事業として比較的優秀なペッパーランチを脱出させた可能性が高いのではないかと考えました。

そしてその新会社設立と同時に20億円の借入を発表したんですね。

今回はそんなペッパーフードサービスの借入と今後を考えていきましょう。

それではまず、こちらの資料をご覧ください。

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まず、借入には担保が設定されている事が分かります。
さて経営状況がギリギリのペッパーフードサービスで担保となる物はなんでしょうか?
そうです、これ多分新会社の株式なんですね。

つまり、新会社設立の目的の1つは担保化して借入を行うことにあったと考えられるでしょう。
新会社で行っているペッパーランチ事業の方は、いきなりステーキ事業と違いまだ採算が取れると考えられるので、最悪20億円帰って来なくてもペッパーランチ貰えるんでいいやって話ですね。

また、貸し手はペッパーフードサービスの大株主でもある、エスフーズの社長だということで、このエスフーズはペッパーフードサービスの食肉の主要な仕入先でもありますから、簡単に潰してしまって販路を失いたくない、貸倒れによる損失を出したくない、最悪ペッパーランチの販路を確保しておきたいという狙いもあるでしょう。

次のポイントは、借り入れの期間が7月31日までと非常に短い事です。
考えられるのは、今回の借入は貸し手側からすると様子見的な要素が強いのでは無いかということです。

新型コロナの影響が一段落してからどのように外食市場が変動するか分からないので、とりあえず様子見してダメそうだったら、返済期限が来ても借り換えをさせずペッパーランチもらっとこって事ですね。

業績回復の目処がたてば、借換えをさせたり(ペッパーフードサービスの決算にみる株価が下がると倒産する可能性がある理由)こちらの記事でも紹介したように、株価が回復すれば新株予約権による資金調達が期待出来ますからその資金によって経営再建を目指す事が出来るということですね。

つまり、今回の20億で耐えられそうなのが2ヶ月だとも考えられます。

という事で今回の借入でピンチを凌げたかというと、そうは言えなそうです、延命しただけだと考えられます。
数ヶ月延命した後にペッパーフードは倒産、ペッパーランチはエスフーズ社長のもとへという可能性は十分にありそうです。

とりあえずは新株予約権の行使下限である、666円の株価を越えられるのかに注目です!!

おまけ:これグレーなスキームにも使えんじゃねって話

今回のエスフーズの社長が貸付をしたのは、可能であれば取引先でもある「いきなりステーキ」や「ペッパーランチ」の販路を確保しておきたいという考えだと思いますが、今回の件は結構グレーな事業買収スキームにすることも出来るんじゃないかと考えたのでおまけとして紹介してみます。

どうするのかというと、基本的には今回の流れと同じで買収先が取引先で倒産の懸念がある時(今回の件で言えばペッパーフードサービス)に優秀な事業だけを子会社化して、その会社の株式を担保にオーナー個人で貸し付けをします。

そしてその貸付した資金で自社(今回の件で言えばエスフーズ)の債権(売掛金など貸倒リスクが出ているもの)を回収します。

そしてその後に倒産させると、担保として新しく作った会社を受け取れるという事です。
20億円はオーナーの懐から会社にうつっただけで、会社を手に入れることが出来るという事ですね。
さらに、会社からすると貸倒による損失を避けることも可能です。

今回のように倒産による貸倒懸念が出てきたときだけ使えるグレーなスキームですが、どこかがやっててもおかしくないですね。
という事でおまけでした!!

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