松竹の決算から考える一等地に不動産を持つ伝統企業の強さ

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

この記事について話したVoicyです、読むお時間のない方は聞いてみてはいかがでしょうか?


今回見ていくのは松竹株式会社です、映画やテレビ番組の製作などの映像関連事業から演劇まで取り扱うエンターテイメントの老舗企業ですね。

エンターテイメント関連は最近ようやく再開されるものも多くなってきましたが、それでもまだまだといった感じですし新型コロナの影響を強く受けてしまった業界の1つです。

今回はそんな状況下で大きなダメージを受けている可能性が高い松竹の今後について考えていきましょう。

それでは早速こちらの資料をご覧ください。

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売上高は60.8%減の197億円、営業利益は33.2億円の黒字→36.2億円の赤字、純利益は20.4億円の黒字→94.8億円の赤字となっており大幅な減収で赤字転落となってしまっている事が分かります。

続いてもう少し詳しく見ていきましょう。

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松竹の事業セグメントは①映像関連事業②演劇事業③不動産事業と3つある事が分かります。

それぞれの事業の業績の推移は
①映像関連事業:売上291億円→114億円 利益19.7億円→29.8億円の赤字
②演劇事業:売上142億円→20.7億円 利益4.4億円→13.0億円の赤字
③不動産事業:売上57.6億円→58.4億円 利益25.0億円→27.0億円
となっており、不動産事業以外の2事業が大きく業績を悪化させている事が分かります。

映画やテレビ番組の制作や演劇関連は緊急事態宣言中は完全にストップしていましたのでその影響が出ていそうですね。

続いてはどうして各事業がこのような推移となったのかについて見ていきましょう。

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まず映像関連事業は、新型コロナの影響を大きく受けてしまったものの、例えば映画では自粛明けの8月に公開した「事故物件 恐い間取り」はヒットしたようです。

「今日から俺は」や「鬼滅の刃」の大ヒットがあったように、意外と公開した映画はヒットしたものが多いですよね。

やはりエンターテイメントが自粛され減っている中で、外出して楽しむエンタメとして映画というのが非常に重宝されている感じはしますね。

これからは冬の訪れとともに、新型コロナの感染拡大が予測されていますがそんな中でも、やはり家の中ではなく外出して遊びたいという需要は大きいはずです。

となると映画は上映中は喋らないので飛沫も飛ばないですし、感染者が増え再自粛のような空気感になったとしてもある程度の業績は保てるのではないかと思っています。

またテレビ製作に関しては、時代劇や2時間ドラマや連ドラの製作などを行ったようです。
テレビの活動が今後またストップする可能性は非常に低そうですので、業績は回復していきそうです。
ただテレビは市場自体が縮小していますのでとなると、業績はある程度回復するものの好調となる事はなさそうです。

CS放送に関してはインターネット配信の動画サービスがシェアを拡大している事によって、厳しい状況が続いているようです。
正直、ネット配信の大手企業と比べるとコンテンツに掛けられる資金力から考えてクオリティ的にも勝てなそうですし、ユーザー側の視聴の利便性から考えてもCSは厳しくなる一方でしょう。

映像事業に関しては、映画はある程度業績の回復が期待できるもののテレビとCS事業の悪化によって低調に推移しそうです。

続いて演劇事業ですがこちらはもちろん演劇上の休館と観客を50%に制限の影響が大きく業績が悪化してしまったようです。

今は100%まで入れる事が出来るようになっていますし、今後は業績の回復が起きる可能性が高そうです。

ただし、映画と比べても演劇は顧客の年齢層が高めだと考えられます。
となるとそもそも客足の戻りが遅いうえに、冬になって新型コロナの感染拡大が起きてしまうとさらに客足が遠のく可能性があります。

そもそも前期からこの演劇事業は4.4億円ほどしか利益が出せていない事業ですから、しばらく赤字が続いてしまうのではないでしょうか。

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また、不動産事業では全体的に稼働率が高かったようで、各テナントとも賃料交渉を行いながらも安定的に利益を確保したようです。

松竹のように歴史のある企業で、昔から好立地のところに不動産を持っている企業は不動産事業が好調なところがとても多いです。
今回新型コロナがあって改めて好立地の不動産を持っている事の強さを認識させられますね。

では全体的にみると業績の悪化が大きいわけですが、財務状況はどうなっているのでしょうか。

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まず、現預金や売掛金などの手元資金は250億円ほどあり、流動資産は356億円ほどあることが分かります。

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一方で流動負債は273億円ほどありますから短期的な資金力としては、余力がる事が分かります。

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しかし営業キャッシュフローは105億円ほどのマイナスとなっていることが分かります、通常の営業活動の中で100億円もの資金を失ってしまったという事ですね。

映画などの映像製作や演劇関連の劇場なども再開になっていますので、ここまでのマイナスとはなっていないでしょうが、資金を失っていく状況が続いていると資金繰り的にも厳しくなっていきそうですね。

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また長期借入金も489億円→640億円まで増加している状況ですから、長期的にも財務内容は悪化してしまっています。

では松竹の財務状況は厳しそうかといえばそうでもありません。

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松竹は土地を418億円ほど、投資有価証券は280億円ほどと資産自体は大きく持っているんですね。

さらに、松竹の不動産の含み益は莫大な金額です。
2015年時点で含み益が400億円以上だったようですので、その後の不動産価格の上昇を考えればさらに増えているでしょう

となると借入が増えているとはいえ、借入余力もまだあるだろうと考えられます。多少業績の悪化が続いたとしても借入によって資金調達をして耐えられそうです。

新型コロナがあっても、本当に好立地の不動産は稼げていますし今後も不動産価格の下落が起きなそうです。
東京の好立地の不動産はなかなか売りに出てきませんので、お金を出したら買えるというものではないですから、こういった松竹のようにいい不動産を昔から抱えている歴史ある企業は強いですね。

という事で松竹の業績はある程度回復しそうですが、映像事業ではテレビやCS事業は市場自体が縮小しているので業績の悪化が続きそうだという事、演劇事業では顧客層の年齢層の高さから客足の戻りが遅く、冬に新型コロナの感染拡大があると業績が悪化しそうだという事から業績の低迷が続くことを予測します!!

ですが、歴史ある企業で一等地に不動産を多数持っている事から莫大な含み益を持っており借入余力も大きく、エンターテイメント業界の需要が回復するまで耐えきる事が出来ると考えられます。

なのでその時に演劇や、映画などでどれだけ良コンテンツを出していけるかが勝負となりそうです。

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