東宝の決算から考える、TOHOシネマズ休館の影響とその後

どうもコージです!
私は、毎日決算書を読んで企業の未来を妄想しています。
そんな私が決算書の中で面白かったポイント、未来への妄想ポイントを説明しています。

今回見ていくのは東宝株式会社です。
映画の配給やTOHOシネマズの運営をしていることで有名な会社です。

早速ですがこんなニュースがありました。

映画館、休業相次ぐ 緊急事態宣言受け

映画各社は7日の政府の緊急事態宣言の発令を受け、5月6日まで休業すると発表した。シネマコンプレックス(複合映画館)のTOHOシネマズ(東京・千代田)は7都府県の全35劇場、イオンエンターテイメント(東京・港)も全33劇場を8日から5月6日まで休業する。松竹も同日程で、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、大阪府、兵庫県の16劇場の営業を休止。東映は直営の劇場である丸の内TOEI(東京・中央)と渋谷TOEI(東京・渋谷)を休業する。

映画各社は東京都が外出自粛を要請した3月25日以降、2週にわたって土日の営業を休止。緊急事態宣言を受け、平日も含めて営業を休止することにした。

シネマコンプレックス(複合映画館)のTOHOシネマズ(東京・千代田)は7日、3月の興行収入が前年同期比6割減ったと発表。業績への影響は避けられない。

TOHOシネマズを運営している、東宝は緊急事態宣言を受けた7都道府県について5月6日までの休業するようです。

今回はTOHOシネマズを休業しても会社は大丈夫なのか?
さらに、休業を受け今後の業績がどうなるのかについて考えていきましょう。

こちらの資料をご覧ください。

2019年3月~11月期については、売上は1884億円から2011億円へと126億円(6.7%)の増加、営業利益は355億円から428億円へと73億円(20.6%)の増加しており、増収増益と非常に好業績だったことが分かります。

動画があふれるようになり、映画館は廃れていくのではないかと思っていましたが、逆に動画の普及とともに業績は伸びています。
数年前から体験価値の重要性が頻繁に語られるようになりましたが、スマホを2時間も手放して1つの事に集中できるというのは体験価値が非常に高いのかもしれません。
自宅で映画を見る事と、映画館に行った時に感じる満足感の違いは、スクリーンや音響ではなくそこにあるのではいかと考えています。

せっかくの好業績ですが映画業界にとって新型コロナの影響は甚大だと考えられます。
映画館は密室空間というイメージがありますから、ワクチンなどが生まれるまでの1年~2年単位で影響が出てしまう可能性があります。
密室にわざわざ行かなくていいよね、となってしまうのではないでしょうか。

そして1年以上影響が続けば、人の行動様式も当然変わります、映画館に行くという価値観が多くの人から失われてしまう可能性すらあり得るという事です。
となると影響は本当に長期的に出てしまうかもしれません。

続いてこちらの資料をご覧ください。

東宝の売上の中で実は不動産事業が意外と規模が大きいことが分かります。
テレビ局などもそうですが、芸能系の大きな会社は一等地に大きな土地を持っていて不動産収入が結構あるところは多いです。

この不動産事業も撮影スタジオの運営などを行っているようですからそこは撮影休止になり業績が悪化しそうですが、賃貸用不動産については休業中の業績を支えてくれそうです。
複数の収入源を持っておくのは大切ですね。

また、映画と演芸事業で2019年3月~11月の売上が1473億円ですから単純計算で1ヶ月163億円の売上です。

最初のニュースの通り3月の時点で売上が60%減少していますから、映画と演芸で100億近く売り上げが減少したという事になります。
7都道府県以外では営業を続けるようですが、主要都市は休館となりますから今後は130~40億円近く売り上げが減少してもおかしくありません。
先ほど書きましたが、この影響は長期間続く可能性もありますから非常に厳しそうですね。

これは、資金繰りに困って倒産なんてことにはならないのでしょうか?

財務体質を見ていきましょう。

東宝は自己資本比率が77.5%と非常に良好な財務状況だという事が分かります。

続いてこちらの資料をご覧ください。

現金もしくは現金化しやすい資産項目として、現預金と売掛金とで477億円あり、現先短期貸付金と有価証券、投資有価証券という何らかの有価証券として保有している部分が2207億円ある事が分かります、大量の有価証券を持っているのですね。
合計で2654億円にもなる資金化可能な資産を持っています。

続いてこちらをご覧ください

一方支払いの必要性がある負債は250億円ほどで、内訳不明な流動負債のその他を含めても合計470億円ほどですから今後不調が続いたとしても資金的な余裕は大分ありそうです。

しかし株式市場は大きく下落していますから、大量に持っている有価証券部分は大きく毀損している可能性がありそうです。

ちなみに現先短期貸付金とは、買い戻し契約のもと債券などを購入する事で出てくる項目です。

例えば10億円分の年利1%の債券を1年後に買い戻しして貰う契約で買うわけです。
そうすると、買った側は10億円×1%=1000万円の利息を受け取ることが出来ます。一方売った側は1年間の間10億円の資金調達が出来ることになります。
実質的には年利1%で貸付をしているのと同じなので、貸付金という名称になっています。

つまり現先短期貸付金の部分は、買い戻し契約があるので時価変動のリスクを受けない事が分かります。

という事は時価変動リスクがあるのは、有価証券と投資有価証券の1300億円分になる事が分かります。
この中には国債などの低リスクなものも多いでしょうが、東宝はテレビ局などと株式の持ち合いをしていることで有名です。
昨年の時点でフジテレビ株を300憶円以上TBSも150億円以上もっています。
2019年11月からフジテレビは30%・TBSは10%程度下落していますから、100以上は毀損している可能性は高そうです。

しかしこの部分は、投資有価証券として計上されており、株価の下落が来期の損益に含まれない点は注意が必要です。
100億円分の赤字が出るわけでは無いということです。

東宝の未来!!

東宝はさらに不動産の含み益(決算書には載っていない)が2877億円もあるようです。決算上の土地の額は580億円ですから含み益の巨大さが分かります。

不動産価格も下落が予想されていますが、こちらも含み益の減少は来期の損益に含まれないので注意してください。

という事でまず、大量の有価証券と不動産の含み益が莫大ですので休業したからといって経営上には全く問題はなさそうです。

しかし、新型コロナの影響で映画館に人が戻ってくるのは大分長時間がかかる、もしくは行動様式が変わって帰ってこない可能性があるという事。
損益に影響のある部分は多くなさそうだが、有価証券や不動産の価値が大きく毀損しそうな事を踏まえると。

来期の業績低迷はある程度抑えられる(物凄い大赤字とはならない)ものの、決算発表以上に会社の価値が下がる事になると予測します!!

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