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宗教画のような映像美『ノスタルジア』

タルコフスキーは、ロシア界隈ではいわずと知れた御仁、わたしの所属する早稲田露文科でも、
タルコフスキーの『鏡』など見させられた。が、あまりの退屈な難解さに眠気との闘いになった覚えがある。
けれど、大学院に行く以上、タルコフスキーを知らないでいくわけにはいかない。それに、ついこの間、院生の中で合宿があり、臆病な性格のくせに、ときどき蛮勇を発揮を発揮する私は、学部生という身分ながら、ついて行ったのだ(!!!)。最終日、合宿先の宿の玄関口の階段で記念撮影をみんなでしたのだが、皆ぎゅっと集まらず、ぱらぱらと立っていたので、教授が「ノスタルジアみたいですね」とおっしゃったのだが、わたしは見ていなかったので笑えなかった(悔しい)。それで、帰ってすくAmazon primeで、
『ノスタルジア』(1983)を見た。
『ノスタルジア』は、不遇の最後を遂げたロシア詩人サフノフスキイの足どりを追って、イタリアにやってきたアンドレイという詩人が主人公だ。彼は、ルネサンス画のように美しく、みごとな金髪を持った女性を通訳(?)に連れている。
あとでわかるのだが、この詩人は病魔に冒され、もう長くない。
この通訳の女性は、イタリアの寺院で、敬虔に祈る女性たちを見て「わたしはそこまで祈れない」と思う。そして、寺男に「なぜ女はあれほどの熱をこめて祈るのかしら」と尋ねる。だが、寺男は腑に落ちるような答えを返せなかった。しかし、通訳の女性が立ち去ろうとすると、「お待ち」と寺男は呼び止め、祈る女性たちへと注意を向けさせる。祈る女のひとりが、祭壇の布をさっとひらくと、無数のハトたちがバタバタと飛び出してきた。

通訳の女性が詩を読んでいると、アンドレイはだれの詩か、と聞く。
女性は「アルセー二・タルコフスキー」の詩を翻訳で読んでいるという。
(タルコフスキイあるあるの父親ネタ)アンドレイは、翻訳で詩は理解することはできない、と返す。では外国の詩を理解する方法はなんだろうか?
アンドレイは答える。「国境をなくすことだ」。

場面変わって、温泉につかっている人々が、ドミニコという名の老人がそばを通るのを見て話している。ドミニコは狂人で、7年かそこら家族と家に閉じこもろうとしたとか。そして、なんでも、温泉の中にろうそくを持って入ってくるそうだ。興味をひかれたアンドレイは、彼に近づく機会を得ようとする。近づけたアンドレイは、ドミニコからろうそくを託される。これをもって、火をともしたまま、温泉を渡りきれと。帰ってきたアンドレイは、通訳の女にこれまでの不満をぶちまけられる。

アンドレイは、温泉でアンジェラという少女に出逢う。アンドレイは、子供の前で滔々とロシアとイタリアについて弁舌をふるうが、突然それを止め
「人生は楽しいかね?」と尋ねる。アンジェラが「たのしい」と返したので、アンドレイは「よいことだ」という。

アンドレイが、試練に挑もうとしているさなか、けんか別れした通訳の女から電話がかかってくる。彼女は恋人とともにインドに行くという。そして、
ドミニコは、演説をしにローマにきているらしいと。彼女は義務を果たせたかか尋ねる。アンドレイは終わってないのに、なぜか果たせたと言う。

ドミニコは、青銅の騎士像の台に上って叫ぶ。「私たちは無駄と思える声に耳を傾けるべきだ。水をよごさず、皆ひとつになるべきだ。」(あまり覚えてないが、こんな感じ)「ここで音楽を・・・」とドミニコは、「第9」が流れる中焼身自殺する。

一方、アンドレイは、ろうそくチャレンジをしていた。意外に難しく、
ちょっとした風や湯気で火は消えてしまう。やっと、何度目かの挑戦で、
成功する、とともに、彼はくずおれる。
ラスト:小さな子供が、へたり込んでいるアンドレイを見ている。

タルコフスキー映画は、闇、暗がりの描写が多く、画面が闇に覆われることが多いのだが、それが女性の白い顔や金髪や光を対照的に美しく見せている。

☆一滴に一滴をくわえても一滴=1+1=1
アンドレイの旅に通訳は必要ではない。アンドレイは、翻訳を否定しているし、国境をなくしたいという思想の持ち主である。そして、ドミニコとの交渉は、通訳の彼女なしで進んだのだ。ドミニコは、自転車を漕いでいたが、その自転車は進まない。このとき時間は止まっている。そう、アンドレイが追いかけてくるのを待つために。ローマへの旅、死出の旅を遅らせたのだ。
ドミニコの部屋には、1+1=1という謎の書き付けが貼ってある。
そして、ドミニコは、水のつぶに水のつぶを上から垂らして「一滴に一滴を加えても一滴」という。でもなんだかその考え、ちょっと帝国主義っぽさを感じる。国境を無くしたら、言葉はどっちにあわせるのか?その理屈で、大国は小国を併合してしまうのではないか?
なんていうか、一見良いこと言っているようでどうなのかな、、、と思ってしまう。(批判大歓迎です。バカヤロー、ちがわい。と思われた方、済みません。)



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