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イリノイ工科大デザインスクールにはどんな学生がいるのか?

こんにちは。イリノイ工科大デザインスクール(Institute of Design, 通称ID)に留学中のShinです。

秋学期の後半で6つも授業を取ってしまい、思った以上に追い込まれ執筆が滞ってしまいました。
気を取り直して、本日はIDのプログラムについてご紹介したいと思います。

プログラム紹介

大きく分けて3つのプログラムがあります。

Master of Design (MDes)
経歴:デザイン(または建築)経験あり
期間:2年(4学期)
構成比:約5割(19年当時 / 筆者推計)※以下略

MDesはまさに王道のデザイン修士課程。学部でデザイン学科や建築学科を卒業、あるいは仕事でデザイン中心の仕事をしていた方が対象です。年齢層は20代半ば〜後半が多い印象。

Master of Design Method (MDM)
経歴:デザイン経験ありなし両方可、実務経験5年以上
期間:1年(2学期)
構成比:約1割

MDMは実務経験豊富なデザイナー / ビジネスマンが最新のデザイン理論・手法をスピーディに習得するプログラム(現在はビジネス出身がほどんど)。戦線に1年で復帰できるという点が魅力の1つだと思います。数は少ないですが、年齢層は30代前半〜50代と様々、経験の幅も広くIDで最もバラエティに富んだ学生といえます。

Foundation + MDes (+MBA)
経歴:デザイン経験なし
期間:2年半(5学期)
構成比:約3割

最初のnoteでも書きましたが、デザイン経験がない人間が1から学び直す学科です。最初の半年が基礎理論・演習を学ぶFoundation期間、その後MDesに移行して2年間学びます。年齢層は20代前半〜30代前半、そう、私は最年長です(笑)

経歴は様々です。経営学、社会学、哲学、コンピューターサイエンス、ブランディング、Webディベロッパー、教育系NPO、果ては我々のような大企業のoffice workerまで色々揃っております。

ここまで学生のバックグラウンドとその構成比を見ていくとIDはビジネス寄りのデザインスクールというのが私の見解です。授業内容もかなりビジネス要素が強いと感じていますが、それは別の機会に譲ります。

MDMか?Foundation+MDesか?

さて、ビジネスマンが選ぶ道として、まずMDMかFoundation+MDesかの2つの選択肢がありますが、どのように選べば良いのでしょうか。考えるポイントは、文字に起こすと当たり前に聞こえますが「リソース(資金・時間)」と「将来進路」の2つです。

MDMの良いところはやはり1年(秋入学だと9ヶ月)で現場に戻れる点です。仕事のブランクも最小限に抑えながら、デザイン理論・手法を効率よく学ぶことが出来ます。また、学期あたりの授業料は3万ドルとMDesより少し高いものの、期間が短いため総費用は6万ドル+生活費となり、ある程度の貯金があれば国のローンや奨学金、親からの援助で補える範囲です。

一方で、短期間であることの裏返しとして、受講できるクラスが限られるというのがデメリットです。1学期で留学生が無理しても取れる単位は16.5、1年で33単位が最大になります。そこから必修分を引いて24単位。セミナー(1.5単位)16クラス分、ワークショップ(3単位)8クラス分と聞くと多く聞こえますが、IDでは60~70のクラスが提供されているため、思ったほど取れないのが現実です。実際、MDMの学生が履修で悩む姿を何度も見てきました。MDM生は広く浅く学ぶか、深く狭く学ぶかを明確に意思決定する必要があります

よって「卒業後はビジネスを軸足に、デザイン手法も理解した上で仕事をしたい、かつ明確に学びたいことも決まっている」方はMDMが向いていると思います。卒業生の進路を見ても、コンセプト企画や戦略などのいわゆる川上の仕事をされている方が多い印象です。

反対に、Foundation + MDesはデザイナーとしてより軸足を置きたい方向けのプログラムです。今は自学で何でも学べる時代と言われていますが、デザインの「デ」も知らないど素人が半年間の(鬼の)Foundation期間で、プロダクト / ビジュアル / 写真 / インタラクションの基礎を急速に学べるというのは非常に魅力的だと思います。周りの意見を聞いても「Foundationプログラムは洗練されている」というのが受講者の共通認識です。その後のMDes期間が2年間あるため、IDのクラスもかなり幅広く取ることが出来ます。

デメリットは時間と学費です。2年半という時間は在学中短く感じますが、キャリアとして見ると決してそうとは言えません。また、学期あたり2万5千ドルx5学期+生活費はやはり並大抵ではありません。。それだけの投資をして本当に学びたいのか、何を習得したいのか腹落ちする必要があります。

卒業後の進路については(知りうる限りで)日本人卒業生は1名しかおらず、その後のロードマップがどういった形になるかはまさに私を含む在校生4名(執筆時点)がこれから描いていくことになります。

MBAとのDual degreeを選ぶべき?

MBAとの併願プログラムに興味を持つ方も結構いらっしゃるのではないかと思います。確かに、デザインとビジネス両方の修士を取れるというのはかなり魅力的です。一方で、私自身はこのプログラムを取っていないため、詳細はEddieさんがいつか話されることを期待しますけれども(笑)、学費(年間+100万円)と時間的制約が増えることを考慮する必要があります。

特に、時間的制約は想像以上に影響が大きいと見ています。まず、授業で土曜日が半日以上埋まり、週一でしか授業がないため、修了するには夏休みも取り続けることになります。よってインターンにも影響します。さらに、週一しかない=宿題が少ないということにはなりません。むしろ授業が少ないからこそ宿題が多く出ているようです。したがって、併願生は時間あたりのアウトプットと各宿題の期待値を冷静に見極めながら、スケジュール管理をシビアに行っている印象です。

加えて、先ほど申し上げた16~17単位中、4〜5割がMBAの授業で埋まるため、受講できるデザインクラスは限られてきます。他のMDes生と同じく必修も取る必要があります。よって、MDMと同じで、自分がどこに軸足を置くのかをしっかり考えなくてはなりません

私の出願時の考え方と振り返り

色々と述べてきたところで、私はどのようにしてFoundation + MDesを選んだのか、そして今振り返ってみてどう感じるかを少しお話したいと思います。

まず、私の希望として卒業後にクリエイター側で仕事をしたいという思いがありました。出願理由にも関わりますが、ロジックで攻めるビジネスの進め方に限界と疑問を感じていた当時、思い切ってキャリアの舵を切り替えたいと考えていた私にMDMは少しその点が弱いように感じられました。また、今後のキャリアを根本的に見直したいと考えていた中で、9ヶ月という期間もネックでした。過去、1年間海外赴任を経験していたため、その短さを肌で経験していたからです。

一方、検討当初はMBAとの併願も考えましたが、費用の高さに加え、不器用な自分は結局どちらも中途半端になるリスクがあると考え最終的に出願しませんでした。ビジネス経験をある程度積んでいることも鑑み、MBA的知識は必要最小限を独学で身に付け、将来どうしても必要な場合はMBA取得者と組めばいいと割り切りました。自分が全てを身に付ける必要はなく、「自らがどうあるべきか」よりも「どうなりたいか」を優先しようと開き直ったのです。

そして1年経った今、その選択は間違っていなかったと強く感じています。一つは、幸運なことに私がモノづくりを自分の想像以上に好きであったことが大きいです。Foundationの授業は体力的・時間的にキツかったですけれども、それ以上に没頭してやり切ることが出来ました。作業を好きになれるかどうか、これは精神衛生上雲泥の差です。

こういう場合、子供の頃から創作活動が好きだったといったエピソードがよく聞く話ですが、私には全く当てはまりません。そこは家族が保証してくれると確信しています(笑)それでも上手くハマったのは、ロジックだけでも、アート一辺倒でもなく、その中間にデザインが属しているというのが自分の性に合っていたのだと解釈しています。

また、期間の長さも進路を考える上でやはり必要だったと思います。今学期になってやっと自分の将来進みたい道が見えてきており、MDMの9ヶ月では授業を取ることに追われ、キャリアをじっくり考える余裕はなかったなと実感しています。

MBAとの併願についても、私の場合は選ばなくて良かったと思います。ビジネスよりもデザインの授業が好きな私にとって、かなりの時間をMBAに取られるのはストレスで耐えられなかったでしょう。

結局、自分の決断を後から肯定しているだけではないかとも言えます。ただ、留学前の現状にフラストレーションを抱えていた時期から、留学後の怒涛の勉強の日々を経て、「人間いかに納得感を持って過ごすかが大事」だと思うようになった身としてはそれで十分だと感じています。

最後に改めてお伝えしたいのは、IDにはビジネスマンがデザインを1から学ぶための選択肢が広く用意されていること。そして、将来何が起きるかは分かりませんが、戦略的に考え出願することで、その選択を最大限活かすことが出来るということです。私の拙い話が少しでもお役に立てましたら幸いです。

もうすぐ秋学期も終わりますので、冬休みの間に更新ペースを上げて、出願の話や直近で取った授業の話を共有させて頂けたらと思います。

お時間どうもありがとうございました。

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