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朝を迎える

見続けていたものが
バラバラに崩れ去り
その欠片の一つ一つが
僕の心に殻を作って
今日の時間をひどく鈍く終わらせる。

全部誰かのせいにしてしまいたい。
全部僕じゃないんだって言ってしまいたい。
世界や周りの人にあたってしまいたい。
でもそれは結局できない。
世界も他人も
ずいぶんと僕に優しいんだ。

君との過去が、うっすらと今の僕に影を落としている。
これを思い出と呼ぶのは
なんだか違う気がするんだ。

けれど、このはっきりとしない感情
誰かの吐き出した煙草の煙のような
薄い膜がのどにはりついたような
手垢に塗れた硬貨のような
このはっきりとしない感情を
悲しみや苦しみといった
仰々しく神聖な名前をつけてしまっていいものなのか。

僕の中に確かに根付いている君の息遣いが
今、僕の都合の良いように書き変わっていくのは
君とのすべてを
思い出とも呼べないままに
ここまで放っておいたからなんだろう。

太陽が美しい朝を持ってやってきた。
その美しさには
君はもちろん、きっと僕も含まれてはいないんだろう。
そんな世界が
今はたまらなく愛おしく感じる。

少し遅く感じる今日が始まる。

貴方のその気持をいつか僕も 誰かに返せたらなと思います。