寄せても応じず

吹き抜ける風に顔を顰めて
手に持つ鞄の重さを感じつつ
今、交差点を行き過ぎていく。

空を見上げてみても
感傷に浸るには
あまりに弱々しい月が浮かんでいるだけ。

ここじゃ駄目だって
言い続ける人を尻目に
どこでだって駄目だって
思い続ける僕は
どこにも行かないまま、どこへも行けないまま。

愛した昨日は過ぎ去った。
愛した記憶は過ぎ去った。
過去になればすべてを愛そう。
今日の事も、これまでの事も。

いつだって過去だけは綺麗で美しいのだから。

君が笑う世界にいた僕は
君が泣く世界にいた僕は
確かにそこに存在していて
つられて笑う僕の世界に
つられて泣く僕の世界に
確かに君が存在していて
僕らは確かに世界にいたんだ。

照り返す朝日に顔を顰めて
握りしめた手の熱を感じつつ
今、交差点を行き過ぎていく。

空を見上げてみても
感慨にふけるには
あまりにも薄い青ばかり 

ここじゃ駄目なんだって
叫び続けた彼を横目に
どこでだってどうせって
俯き続ける僕は
どこにも行かないまま、どこにも行けないまま

愛した春は過ぎ去った。
愛した言葉は過ぎ去った。
過去になればすべてを愛そう。
今日の事も、これまでの事も。

いつだって過去だけは綺麗で美しいのだから。

そうだろう。

それだけでいいんだ。

貴方のその気持をいつか僕も 誰かに返せたらなと思います。