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CONTAX T2を使った上手な写真の撮り方(2)ピント合わせの話。

CONTAX T2は「ピント合わせに失敗しやすい」と言われることがある。
実際、使っていて時々そう感じるが、原因は一つではない。
今回は、その回避策などを考えてみたい。

◎顔認識なし、フォーカシングエリアは中央1箇所のみ
これはデジタルかフィルムかという問題以前に、1990年代初頭の技術上の仕様ということになるけれど、CONTAX T2には、いわゆる「顔認識」はない。「瞳認識」もない。オートフォーカスが被写体を追従する機能もない。

今のデジタルカメラではコンパクトカメラでも、自動的に「ユーザーがピントを合わせたいと思っていそうなところ」にピントを合わせるようになっているものが多い。そういう最近のデジタルカメラのような動作は出来ない。

CONTAX T2は、ファインダーの中央に見える白い丸の中にしか、合わせられない。
これを忘れて、例えば2人が並んだ横位置の写真を撮ろうとすると、2人の間にある背景にピントが合ってしまって人物がボケてしまった、といった話は、よくある失敗例だ。
この対策については、後で「(対策1)◎フォーカシングエリアに正確に被写体を入れる(対策2)◎AFロックの活用」に詳しく記す。

◎アクティブオートフォーカス
CONTAX T2のピント合わせは「アクティブオートフォーカス」と呼ばれる方式である。CONTAX T2は赤外線を利用して被写体までの距離を計測する。カメラ本体から赤外線を発射して、その赤外線が反射して帰って来るまでにかかった時間等を計測して、ピント合わせを行う。かつてのフィルムコンパクトカメラではよく利用された方法である。
これに対して、今のカメラのほとんどや、かつてのフィルムカメラでも一眼レフタイプの多くでは、「パッシブオートフォーカス」と呼ばれる方式を採用している。これは、レンズを通して得られた画像をセンサーで分析して、カメラから被写体までの距離を計測する。(厳密には、コントラスト方式、像面位相差方式、ハイブリッド方式などがあるが、いずれもCONTAX T2には関係ないので説明は省略する)。

◎アクティブオートフォーカスの弱点
 アクティブオートフォーカスは、被写体や撮影場所が暗くて、画像の分析が困難な時でもピント合わせができる反面、カメラ本体から発射した赤外線(他の機種では超音波を使う場合もあるようだが、CONTAX T2は赤外線を使う)が被写体に当たって、それが正確にカメラに戻ってくることを前提としているため、次のような場合に、ピント合わせに失敗しやすい。

(1)被写体が乱反射する場合。
 動物の毛皮や、細かく密生した植物など。contax T2において、猫の写真でピントがずれやすい一因でもある。
(2)あらぬ方向に赤外線を反射してしまう(カメラに戻ってこない)場合。
 斜めに置いた鏡や、強く反射する円柱状や球状の被写体。これらは赤外線を反射はするものの、カメラに戻ってくる可能性が低い。というより、まずない。
(3)ピントを合わせたい被写体が、とても小さい場合。カメラから発射した赤外線が、微妙に逸れてしまい、背景にピントが合ってしまう場合がある。

 ここからは、CONTAX T2での、ピント合わせのコツを記したい。

◎対策(1)フォーカシングエリアに正確に被写体を入れる
CONTAX T2のファインダーを除くと、中央に、実線の丸と点線の半円がある。この丸と半円が「フォーカシングエリア」、つまり、シャッター半押しで赤外線を「ここ」に向けて発射し、反射までの時間で、被写体までの距離を計測する。
通常は実線の丸のなかに被写体を入れてシャッターを切ればピントが合う。(1)〜(3)に該当しない、広い風景や、普通に赤外線を反射してくれる「ファインダーの真ん中に人物がいる構図」などでは、特に工夫をしなくても、オートフォーカスに失敗することは少ない。
 だが、次の例では、仮にパッシブオートフォーカスであったとしても、ピント合わせに失敗する。

(4)構図上、フォーカシングエリアに被写体が入っていない場合。

(4)については、一手間を惜しまなければ回避できる。AFロックを積極的に活用することである。

◎(対策2)AFロックの活用
ピントを合わせたい被写体が画面の隅にあるような場合には、一旦カメラを動かしてフォーカシングエリアの中に被写体を入れて、シャッターボタンを半押し、次に、撮りたい構図になるようにカメラを動かしてからシャッターを切る。(AFロック)
動物など、動きが激しい被写体だと、この手は使えない。あきらめて被写体が画面中央に来る構図でシャッターを切るほかない。だが、被写体が画面中央にさえあれば、AFに成功する可能性は高い。赤外線の反射というと何だかのんびりしているように聞こえるが、あくまで「光」の速度。私の経験では、動いている船から飛んでいるカモメにピントを合わせることに成功したことがある。フォーカシングエリアに被写体が入っていれば、動きの激しい被写体に、絶対にピントが合わない、とまでは言えない。

(その例↓ AFロック未使用)

なお、被写体が、おおむねカメラから1m前後以下の近距離にある時には、フォーカシングエリアは「点線の半円」を利用する、とT2の取扱説明書には書いてある。
この件についてGoogleで色々検索してみると、近距離でなくても「点線の半円の方がピントがよく合う」という記述を見かける。この真偽については、私は(T2を使ってきたにもかかわらず)よくわからない。というのも、あまり近距離で撮影することがなかった(風景が多かった)からで、距離が無限大以上になるような写真が多かったせいか、普通に実線のフォーカシングエリアを使っていて問題は感じなかった。
そもそもT2は70cmより近い距離にはピントが合わない。この点については「T2とはそういうカメラなのだ」と割り切るほかない。

(対策3)◎マニュアルフォーカスの利用
CONTAX T2には、手動でピントを合わせる、マニュアルフォーカス機能がある。カメラ上部の右側のダイヤルに、0.7から∞(無限遠)までの数字が記されている。このダイヤルが、被写体までの距離を「70cmから無限遠まで」、自由に設定する機能を持つ。
CONTAX T2のマニュアルフォーカスは、「被写体までの距離」をダイヤルで設定しておき、シャッターを切った瞬間にレンズを動かし、「設定した距離にピントを合わせる」というものである。一眼レフのMFレンズなら、ファインダーの中で画像がぼけているかどうかでピントを確認できるが、 CONTAX T2では、ピントが合っていなくてもファインダー内の画像はクリアである。この点が一眼レフのMFレンズとちょっと違う。ではどうやって距離を測ってピントを合わせるのかというと、目測しかない。
ただしT2は、目測だけに全てを委ねている訳ではない。マニュアルフォーカス時にもCONTAX T2は赤外線センサーが動作している。そして、「被写体のピントが合っているかどうか」を、ファインダー内の黄緑色のランプの点灯で知らせる。ピントが合っているかどうかの判定は、AF時と同じである。赤外線センサーが、反射してきた赤外線をキャッチすることで距離を測っている。逆に言えば、AF撮影時と同じく「被写体までの距離の計測に失敗している」可能性がある。黄緑色のランプは参考程度と考え、目測と「黄緑色のランプの点灯/非点灯による測距結果」があまりにも異なる場合には「目測を優先する」。
つまり、まず目測で被写体までの距離を測って、その目測を元にダイヤルでピントを設定し、補助的に黄緑色のランプによるピント合わせ確認を活用する、ということになる。もちろん、フォーカシングエリアの丸の中に被写体を入れた上で、ピント合わせの確認をすることは言うまでもない。(AFロックと同じ理屈)

(対策4)◎絞りを絞ればピントは合わせやすくなる
上記の方法の難点は、絞り開放(F2.8)の際に、微妙なピントのずれが生じやすいことである。これはCONTAX T2に限った話ではなく、レンズというものは絞りを開けば開くほどピントの合う距離の奥行きが浅くなることに由来する。
だから、(1)(2)(3)に該当する時には、絞り開放で背景をぼかした写真を撮ることは、CONTAX T2では難しいと言える。
逆に、絞りを絞れば、ピントは合いやすくなる。人物を撮っても、背景にまでピントの合った写真が撮れる。レンズは絞りを絞るほど、ピントの合う奥行きが深くなる。これのピントの合う浅さ・深さ「被写界深度」という。
マニュアルフォーカス時でも、おおむね絞りをF5.6から8以上に絞れば、被写界深度が深くなる(ピントの合う範囲が広くなる)ので、多少のピントのずれは目立たなくなる。ただし、主要な被写体から離れた背景にもある程度ピントが合ってしまうが、これはいたしかたない
私の実感としては、マニュアルフォーカスで撮影する時には、まず絞りを8以上に絞り、「目測+黄緑色のランプ」で被写体までの距離を設定し、一旦ファインダー内の黄緑色のランプが点灯したあとで、改めてカメラから目を離して目測で距離を確認し、黄緑色のランプがおおむね正しいかどうか判断して撮影すれば、ほぼ問題はないように思う。
それでは動きの激しい子猫などは撮れないではないかと思うかもしれない。正直なところ、その通りなので、そういう写真は、CONTAX T2の苦手とするところであると割り切るほかないように思う。

(対策6)◎絞りを絞るために高感度フィルムを使う
ピント合わせではなく露出(画像の「明るい」「暗い」)にかかわる話になるが、絞りを絞った上で、手ぶれを防ぎやすい高速度のシャッターを切るには、感度の高いフィルムを使わないと難しい場合が多い。晴天屋外でも感度400以上のフィルムを利用されることをお勧めしたい。(お勧めしたい「感度1600のネガカラーフィルム」は販売終了となってしまった。)

※こちらもご参考にどうぞ。
CONTAX T2を使った上手な写真の撮り方(1)絞り、シャッター速度の話

なお、記事を読んでいるうちに「今すぐT2が欲しくなってしまった」方は、こちらからどうぞ⬇。


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