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これから介護の世界に来るひとへ ②

 「ITリテラシーが低い」と書かれた記事を読んだ。

 5〜6年くらい前から出てきた言い回しだったと記憶を手繰るが、なかなか便利な言葉だなといつも思っている。まあ面と向かって「機械オンチ」とはなかなか言えないご時世だし。

 では、どの業界にも「職場リテラシー」の低い人はたくさんいる話。初めに言っておくが、これは多様性のお話。流行りのダイバーシティと言うことだから絶対に批判なんてしてはいけない。

 もし仮に、お得意先の法人の管理職(50代くらい)の方からの業務報告のメールの文末に「今日はリモートワークなので、これから家飲み!ビールを飲みながら夕涼みで〜す」とクソみたいな近況が書いてあったり、これだけ「○○ハラ」みたいな言われ方が定着しているにもかかわらず、休憩室でズルズル、くちゃくちゃと音を立てて昼食を食べる人が同僚に何人もいたりしたとしてもだ。

 さらにその場で、他のスタッフがお昼を食べている横で、おもむろに歯ブラシにチューブをネリネリして歯磨きを始めたと思ったら、泡だらけのお口で雑談を始めて休憩室中がミントの香りで満たされたとしても。

 忙しい昼過ぎ、テロテロのTシャツにボロボロのスニーカーと上下ジャージのパンフレットを手にした青年と若い女性が「新しい事業所を立ち上げたので仕事ください」とご挨拶に来られたとしても、今はまさにダイバーシティを強く意識して、それを尊重しなくてはならない社会なので批判なんてもってのほかだ。

 重要なのは多様性を尊重し、個々の働きやすさを第一に考えた職場環境をみんなで作って行く事なのだから、それを批判するなんてとんでもない事だから常に気をつけるべきだ。本当だ。

 きっとみんな忙しくて、話せばみんな純朴ないい人が多い。仕事熱心で、なによりも「人が好き」な人々が多く集まるのが介護の分野。

 この文章を書いている時、昔専門学校で働いていて、訪問介護の実習があった事を思い出した。

 毎日、午後にその日の学びをスタッフさんも交えて話し合う会議の間、ずっと昼飯を「ガツガツ!ズルズルっ!」って食べていた職員さんがいた。学生には、社会人を経験してから看護師を目指す方も多い学校だったので、ある日、いきなりすごい剣幕で言いよられた事があった。

 「私達が発表しているすぐ横で、自分のご飯を食べるなんて失礼だとは思わないんですか!職員に常識がなさすぎます。先生なんで注意しないんですか!」周りにいた同じ班の学生も、その状況に面食らって頷いていた。「まあ本来、その状況をそこにいる管理者や、先輩のだれもが指摘しない事をアセスメントするべきだよ」と返したらぶっとばされそうなのでやめた。

 僕は、その日のスケジュールを基に、切れ目のないスケジュールでお客様の都合に最大限合わせて訪問している訪問看護のスタッフさん達の仕事が大前提にある、そんな中で、たまに来るなんの関わりも無い学生の勉強のために、ほぼスタッフ全員が時間を割いてくれていた事に感謝の言葉しかなかった。

 本来のスキルだけで結果を出すのが職人なら、介護の分野にはその比率が高い。でも今は、バット一本で結果を出す事が本分のプロ野球選手が不祥事で消えたり、名演技で人々を魅了する事を生きがいにしている役者が逮捕されて炎上する世の中だ。

 日頃の小さなゴタゴタや揉め事で、簡単に足を掬われるような時代だからこそ、自分の業界だけでなく「他の業界ではどのような働き方をしているのだろう」といった視野も待っていないと、未来は危ういと思う。

 「リテラシーが低い」なんていう言葉はただの悪口だ。でもそう言われていたとしたら、世の中と何かがズレている、という感覚も持つべきだ。

 

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