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D2Cは本当にDirect to Consumerなのか?vol.5~D2Cの急成長と忘れ物~

僕がD2Cのスタートアップで働いているため、D2C企業内部からの目線でD2Cについて思うところをつらつらと述べていく。

vol.4~成長とブランドの変化~では、D2Cが成長する中で起こったブランドの変化と、そこで僕が感じた違和感について語りました。

前回の記事はこちら

今回は、急成長したD2C企業がどうなったか?そしてその間に何か忘れてしまったものはないか?について述べていく。

D2Cの急成長と収益

 企業は利益を追及し最大化を目指すものである。したがって顧客とブランドが変化しても、利益が最大化できていれば問題ないとも言える。(僕が思う本来のD2C「顧客のパートナーとしてのD2C」はそうではないのだが、)

そこでまずは、急成長し顧客とブランドが変化したD2C企業の金回りについて説明しようと思う。 金回りという悪印象の言葉をあえて使うのは、金回りを考えすぎたことに対する僕自身の嫌悪感が含まれているからである。

vol.1で説明したLTVを重視したビジネスモデルは、顧客がリピートすることでLTVが最大化され、すなわち利益が最大化される。したがって新規顧客だけでなく、既存顧客(リピーター)も当然大切にしなければならない。言い換えると、LTVは顧客のリピートを前提としているため、リピートしてくれないと利益が生まれないのである。しかし急成長するD2Cは、成長のために新規獲得にばかり着目し既存顧客をないがしろにする。

短期的に見れば新規獲得が実現し、新規顧客からの見かけの利益で事業成長しているように見える。しかし長期的に見ると新規顧客がリピートしなければ、新規顧客を獲得した分だけ赤字が嵩むこととなる。

まとめると以下のようになる。

①新規顧客獲得

②既存顧客のリピートは置き去り

③既存顧客も新規顧客もリピートせず赤字

急成長の中で忘れたもの

 ここで僕が言いたい「忘れ物」とは、LTVの収益の仕組みでも既存顧客へのリピート促進でもない。顧客はパートナーだという概念である。それなくしてLTVの収益の仕組みを再考し理解したとしても、既存顧客へのリピート促進を強めたとしても大した効果は見込めないだろう。効果が出たとしても新規獲得をした時と同様、一過性のものに過ぎない。

LTVの仕組みを再考し、新規顧客のリピートを半強制的に促すために定期購入を導入する。既存顧客へのリピート促進のために、割引セールなどを行う。よくある手法だが根本的に忘れているのだ。パートナーは無理やり引き寄せるものではない。相互理解のもと寄り添い合うものなのである。

愛する家族の将来と関係性を考えない人がいるだろうか。

親友を生涯金で繋ぎ止める人がいるだろうか。

愛犬の首輪を外し野ざらしにする人がいるだろうか。

愛車が傷つきパンクして放置する人がいるだろうか。

急成長したD2Cはそんな誰もが大切にしているものを忘れてしまっているのかもしれない。

「vol.6~D2Cの抵抗~」で、ようやく自らの過ちに気づいたD2Cがどう状況を打開しようとしたのか、について書いていこうと思う。


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