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オランダ人デザイナーと有田焼との出会いから生まれた、「UTSUÀ」という世界への新提案

ー 繋ぎ手

日本の磁器発祥の地として400年以上の歴史を持つ佐賀県有田町。そこに居を構えるのが、明治時代から陶磁器を扱っている株式会社まるぶんさんです。

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そんな老舗のまるぶんさんが新しく発表した有田焼のシリーズ「UTSUÀ」。透き通るように艶かしい白磁一色に、繊細なファセット(切子面)が施されたシャープでエレガントなフォルム。私たちが見慣れたいわゆる“有田焼”とは全く違う存在感を放っています。

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こちらのデザインをしたのはオランダ人デザイナー、タイメン・シュメルダース (Tijmen Smeulders)氏です。

新進気鋭のヨーロッパのデザイナーと、400年の伝統を持つ有田焼のコラボレーションのきっかけは、2016年より有田で始まった、アーティストインレジデンスプログラムでした。

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オランダを中心とした世界各国からアーティスト・デザイナーが有田に集まり、滞在型創作活動を行っています。そこで出会ったタイメン氏の繊細で美しいデザインに魅力を感じ、一緒に商品開発が始まりました。

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素材には熊本県天草市の天然の上質な陶石のみを使用し、有田焼の伝統的加飾の一つである、「鎬(しのぎ)」からインスピレーションを得たデザインは、現代的に洗練されながらも、日本人である私たちにはどこか懐かしさと馴染みやすさが感じられるものとなっています。

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「UTSUÀ」というブランド名には日本という枠を超えて世界中に愛されるテーブルウェアになって欲しいという思いが込められているそうです。

日本語の「器(うつわ)」を、世界の人たちが発音しやすいように「UTSUÀ」と表記しました。
また、「器」は食器のほかに、寛容さや謙虚さといった人間の大きさを示す意味にも使われます。和洋折衷、様々な料理やライフスタイルに対応できる器という意味も含まれています。

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2019年4月には、イタリアの国際インテリア見本市ミラノサローネに出展。
ヨーロッパはもちろん、世界各国から最先端のインテリアや雑貨が集まっていて、連日多くの人で賑わう中、「UTSUÀ」は、有田焼の高い技術と歴史、デザイン性の融合を高く評価されました。

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ー ものがたり

タイメン氏が有田に来たのは2017年の6月の始め頃でした。

彼が滞在した家は、有田内山地区の古民家。家の前には川が流れ、周囲をぐるりと山に囲まれた、自然豊かな環境の中にあります。ここに彼は3ヶ月間滞在し、有田の人々との生活を通して、日々有田の伝統・歴史・文化を肌で感じながら創作活動を行いました。

タイメンはデザインの構想を一切持たずに有田に来ました。
先入観を持たないことで、日本や有田との初めての出会いを吸収しやすくするためです。
彼がまず行ったことは、有田焼の関係者たちと出会いヒアリングすること。
ヒアリングを通してデザインのインスピレーションを得ていきました。

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当初の計画では、1ヶ月間のリサーチ後にデザインを作る予定でしたが、最初の1週間でアイデアが決定。
そのアイデアをプレゼンしたことをきっかけに、まるぶんとタッグを組み開発に向けて動き出すことになりました。
このデザインコンセプトの開発にはかなりの時間が必要になることが分かり、佐賀県窯業技術センターや窯元の協力を得ながら製品化を進めていきました。

まず最初にドローイングデザインができたのはカラフェ(水差し)でした。3ヶ月という短い開発期間中ではありますが、滞在中にカラフェと小さなカップのプロトタイプまで完成できたそうです。

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帰国後もオランダ・ロッテルダムと有田とで密に連絡を取り合い、時にはタイメン氏が有田に来たり、有田からロッテルダムへプロトタイプを持ち込んだりしながら商品化が進んで行きました。

タイメンのデザインは非常に繊細であり、細部に至る厚みや深さまでミリ単位の調整が行われました。窯業技術センターの最新機器や最新3D技術を用いデザインを突き詰めながら、窯元でそのデザインを再現できるように新しい技法の考案や試作を行いました。

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そしてついに、2019年の8月―タイメン氏が有田に来てから2年の月日を経て、11種類の形状からなる「UTSUÀ」が誕生しました。

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ー 想い

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日本の地に脈々と根付いてきた有田焼の流れを受け継ぐ職人、遠い地からやってきた若きデザイナー、それぞれがそれぞれの美意識や技術を出し切り、現代ならではの技法も用いながら最高に美しいと思うものを生み出しました。

器の役割は、中に入るもの、特に食材を美しく包み、毎日の営みの時間をより充溢させてくれること。そこに和や洋の垣根はありません。

「UTSUÀ」は、日本で生まれた「器」という美しい概念の可能性を広げ、より自由な楽しみ方を私たちに教えてくれているようです。

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ー 繋ぎ手情報

株式会社まるぶん




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