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凍てつく土地で、ぬくもりを感じる手触りを追求。木の限界まで精密にこだわる丹野製作所の木工作品

ー作り手

家族との時間や衣食住も大切にしながら仕事をしています。
そうした日々から生まれたものは手にした人にもホッとしてもらえるのではと考えています。

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北海道旭川市の田んぼや林に囲まれたのどかな地域で、木工制作を行う丹野製作所さん。主に北海道の木材を使用し、卓上で遊べる玩具、名刺ケースや印鑑ケースなどを制作されています。

思わず撫でたくなる滑らかさと、触ったら伝わる木のぬくもり。作品は、細かい部分の手触りにもこだわり、隅々まで手間がかけられて、一点一点手作業での調整があって完成します。

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取れそうで取れない…!むずむずっとした気持ちにさせる、ちょっといじわるな「大人も熱中、美しい玩具」シリーズ。
ビー玉を持ち上げるだけのシンプルなルールの玩具「SPACE」は、家族や友達とタイムや個数を競うなど、賑やかで楽しい時間が生まれることを想像させます。

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「仕掛けのある木の文具」は、木でできていることを感じさせないような、精巧なつくりと遊び心のある仕掛けが特徴の木製文具のシリーズ。

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中でも人気なのは、磁石式名刺ケース。補強や製作工程の見直しを繰り返しならがら、わずか数ミリの細かなパーツまで木で作りあげたロングセラー商品でもあります。
カチン!という音を立てながら、隙間もなくピタリと蓋が本体に収まる抜群の締め心地は病みつきになります。

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また、印鑑ケースは、側面にある左右のボタンを同時に押すと中のトレイが飛び出すというメカニックさも感じる作品。
外箱も中やトレイのすべての木目がつながっているのは、同じ木材から取り出し、作業後に元の木目の通りに組み戻しているから。この手間のかかる工程も、木目の表情を楽しんでもらいたいという、丹野製作所さんの思いが込められています。

北海道ではとても寒いことを「しばれる」といい、その寒さは、息をするたびにスッと喉が凍てつく感覚を覚えるほど。
長い長い冬の間でも、木に温かみが宿り、ホッとする作品ができる源は、丹野製作所さんが家族との暖かな時間と暮らしを大事にしているからなのでしょう。

ーものがたり

丹野製作所さんは、丹野雅景さん、ゆりさんのご夫婦で制作を行っています。

両親も木工を行なっていたことから、手伝いをしながら自然と木工の道に進んだという雅景さんは、精密な仕組みのある木工製作が得意。

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木は材料となってからも生きています。湿度によって反ったり縮んだり、樹種や箇所によってクセが異なったりと手もかかりますが、その一つ一つの声を聞きながら適材適所に生かしていくように努めています。

木を生かしながら、木製であるギリギリを追求した作品を排出している雅景さん。木とは思えないようなメカニックな仕組みのある木製品をつくりたいという探究心が現在のものづくりにつながっているそうです。

その木でできる限界を突き詰めた作品は、使い手の好奇心をくすぐり、その好奇心が愛着心へと変わっていくのです。

一方でゆりさんは、製品や販促物などのデザインを行っています。

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2019年に工房の隣にオープンした展示室では、雅景さんの作品はもちろん、ゆりさんが手がけるブランド"あそぶものづくりtek"の遊び道具に実際に触れながら、ゆっくりと過ごすことができます。

作品も展示室も「触れる」ことにこだわるお二人は、使い手に木への並々ならぬ想いが伝わることを願って、日々制作されています。

ー想い

お二人がいつも感じているのは、木への感謝です。

製品の材料にも薪にもなる木材、
感謝の気持ちでできるだけ無駄にしないよう使い切りたいと思っています。

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ご自宅で薪として使用するなど、丹野さんご家族にとって木材は生活に欠かせないもの。

身近なものだからこそ大切にしたいし、触れて良さを感じて欲しい。
貴重な資源である木材を無駄なく使いきるように工夫し、樹種毎の木の特性をふまえた構造にすること、そして人をホッとさせる心地よい手触りに仕上げることを心がけていらっしゃいます。

木に関わる仕事をはじめてから約20年が経ちます。その間に稀少とされてきた樹種だけでなく、身近な木材も年々と採れる量が減り高騰してきています。貴重な資源である木に感謝の気持ちを込めて、無駄なく使いきれるように日々取り組んでいます。また今後はこれまで活用されてこなかった樹種や間伐材の利用にも取り組んでいきたいと思っています。

この話を伺うと、今目の前にある自然が近い未来にはなくなっているかもしれない、有限なものだと気づかされます。丹野製作所さんの温かみを感じ、この想いを思い出しながら、作品を手に取っていきたいものです。

ー作り手情報

丹野製作所


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