見出し画像

4万年前の火山のかけらを身につける。札幌のルーツを読み解く、Liaisonのファッションアイテム

ー作り手

思わず手に取ってしまったり、心地いいと思う素材や色には、その人自身のルーツが関係していると思うことがあります。それぞれ見て触れてきたものが違うからです。
例えば、北海道に暮らす人と、沖縄に暮らす人。季節ごとに両者が連想する色や香りは違うはず、と言えば、少し共感してもらえるでしょうか。

Liaison(リエゾン)さんのルーツは、北海道の札幌。
作品を通して札幌の魅力を伝えたいと言うLiaisonさんが制作するのは、札幌軟石のアクセサリーです。

約4万年前、支笏湖ができるきっかけとなったと言われる火山の噴火がありました。その噴火による火砕流が冷え固まってできたのが札幌軟石です。

軟石公園

画像12

4万年前の自然現象が作り出す、ふたつとしてない模様。マグマの泡が固まった白い斑点模様や、火砕流がその場にあった石や砂利などを巻き込んだ模様は、札幌軟石にしかない特徴です。

石なので、重くて加工しにくいと思われがちですが、軽石の仲間なので、とっても軽く薄いものはパキンと手でも折れてしまうほどです。

アクセサリーとして身につける重さとしては、ほとんど金属パーツの重さだけと言っても過言ではないくらい軽いのも特徴のひとつ。

画像2

ざらっとした質感に、素朴な色合い。落ち着いた輝きを放つゴールドが、不思議と軟石を引き立てている様にも見えます。石の切り口で模様が違うので、表情もさまざまです。

六花シリーズ

住宅や倉庫などの建材として使われるなど、札幌が作られるために重要な役割を果たしてくれた「札幌軟石」を、身につけるアクセサリーとして身近に感じてもらいたいと思い創っています。

作品からは読み取ることのできない歴史ですが、札幌軟石は札幌の発展を支え、Liaisonさんはそれを知るきっかけとして存在しています。

景観色スカーフ

また、姉妹ブランドのLiaison colorでは、「札幌景観色」を使ったファッションアイテムを制作。札幌景観色は、札幌市が誰もが綺麗であると思える70色を[色彩景観ガイドライン]として選定したもの。札幌市民の意見や、札幌の人工物・自然物の色彩変化を調査・研究されたそうです。

画像13

70色のひとつひとつは、風土イメージを連想できるオリジナルの札幌らしい色名を持っています。例えば、「生チョコ」「ラベンダー」「モエレ沼」「札幌軟石」も色名として使われています。さっぽろテレビ塔に「ペチカ」「蝦夷松」というように、札幌の街中でも色が使われているそうです。

景観色ネイル

Liaison colorでは、その色を組み合わせてスカーフやネクタイ、スマホケース、ネイルポリッシュなどを展開しています。作品には、季節の名前がついているものが多く、その色合いで札幌の季節を感じとることができます。

景観色スマホケース

札幌軟石同様、観光の際に、少しでも札幌にしかない色という知識を持ってみていただけたら、嬉しいなと思います。

このような札幌軟石や札幌の色との出会いが、使い手のルーツの一部になっていくことがLiaisonさんの願いです。

ーものがたり

Liaisonの作品を制作するのは、河野理恵さんです。以前から「ものづくり」をしたい、と思っていた河野さん。ブランドを立ち上げるきっかけとなったのは、偶然「札幌軟石」の作品展示を見たことでした。その作品は、鍋敷やセロハンテープの台、スマホ用のスピーカーなど。石が様々な形に加工され、また、とても生活に取り入れやすいものになっているのをみて「これで私も何か作りたい」と思ったそうです。

札幌軟石

自分には、この札幌軟石をどのような形で使い手に届けることができるのか。そう考え、まだ作っている人がいなかった札幌軟石を使ったアクセサリーに挑戦しようと、試作品作りが始まりました。

制作風景カット

当初、加工の仕方がわからず、札幌軟石を使っている作家さんに飛び込みで教わったそうです。また、加工場でできる一番薄い状態にしてもらい、そこからアクセサリーに使えるような石の形にするまで独学で試行錯誤を重ねました。

制作風景ヤスリ

小さな電動丸鋸などで切り出し、ヤスリをかけて形を整え、洗って粉を落とし乾かし、さらに粉が飛ばないような加工をして更に乾かしパーツを作っています。揮発性があるので、洗って濡れても、暖かい場所に置いておくと割と早く乾いてくれます。

ご自身が時間をかけて身につけた加工方法を、惜しげもなく教えてくださるのは、河野さんの「知って欲しい」という想いがあるからです。

景観色大判スカーフ

その後、姉妹ブランドとして「Liaison color」を2020年8月に立ち上げました。景観色は、札幌市民でも知っている人が多くはなく、素敵な色が70色もあるのにもったいない...何か形にできないかと考えていたそうです。

河野さんの「目の前にあるものをどうにかしよう」という考えや、まず飛び込んでみる行動力。そこからは、いいものなのに知られていない悔しさから生まれた、"もっと魅力を知ってもらいたい"という莫大なエネルギーを感じます。

ー想い

「Liaison(リエゾン)」はフランス語で「つながり」を意味します。
作家の名前「リエ」と北海道の別名「エゾ」が入っており、北海道から作品を通して沢山の方々と繋がりたい...北海道と繋がって欲しいという意味を込めています。

河野さんは、札幌を少しでも感じてもらえるような作品作りを目指しています。

それは、以前テレビ局のディレクター、タレント事務所のスタッフとして働いていたことが関係しています。どちらも北海道を大切にし、その魅力をたくさんの人に伝えるということが根底にありました。河野さん自身が北海道に住んでいても気づかなかった魅力が沢山あり、道外や海外の人はもちろん、道民のみなさんにも改めて魅力を知ってもらいたいという気持ちで仕事をしてきた河野さん。

その気持ちは、ずっと変わらずあるのだといいます。お仕事での出会いが、河野さんのルーツになっていったのですね。

札幌軟石採石場

採石場は、今では1つの場所のみ。そんな中でも、加工のしやすさやデザインが再注目され始め、新たな建物にも使われ始めていたり、道外からの発注も増えているそうです。

札幌軟石という素材を知ってもらい、今後札幌観光に来る機会があれば、街中で札幌軟石が使われている建物などにも注目してもらったり、昔採石場だった場所が幻想的な公園になったりしているので、札幌軟石をめぐる観光なんかをしてもらえるように、新しい札幌の観光の一つに繋がってくれたら嬉しいなと思います。

積み重ねてきた札幌愛が溢れている作品。札幌軟石や札幌景観色は、観光雑誌に載らない情報かもしれませんが、Liaisonさんの作品を手に取りながら、札幌の情景を想像して想いを寄せ、旅へのきっかけにしてみてはいかがでしょうか。

ー作り手情報



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?