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MMP #1(後編)|いいへんじの「現在地」をたしかめる ― 【これから】のいいへんじ 編 ―


いつかまた同じ場所に集まることができるようになったときのための「下ごしらえ」をしていく企画、「MONTHLY MAKING PREPARATIONS」

第一回は、公演の準備を進める前に、いいへんじの「現在地」を確かめてみることにしました。【いま】のいいへんじだけではなく、【これまで】と【これから】のいいへんじとのつながりを考えながら、生活について、演劇について、ざっくばらんにおしゃべりしています。

※ この座談会は、2020年5月7日に、オンライン通話にて行われました。
※ この記事は、(後編)です。


▼ 参加者

いいへんじ

中島梓織
松浦みる
飯尾朋花
小澤南穂子

いいへんじのおとなりさん
水谷八也(早稲田大学文学学術院教授)
清田隆之(恋バナ収集ユニット「桃山商事」代表)
▼ 全体の目次
この記事は(後編)です。

(前編)―【いま】のいいへんじ 編 ―
① いよいよ、MMP、はじまります!
② 「いいへんじのおとなりさん」とは?
③ いま、いいへんじが考えていること。(生活編)
④ いま、いいへんじが考えていること。(演劇編)

(中編)―【これまで】のいいへんじ 編 ―
⑤ 演劇って、濃くて深くて、「超アナログ」。
⑥ 演劇にとって、いまは「ため」のとき?
⑦ 「何もできない」って、何なんだろう?
⑧ 共通点は「スピード感」に対する葛藤。
⑨ これまでのいいへんじを、「being/doing」の視点から。

(後編)―【これから】のいいへんじ 編 ―
⑩ 「やっつける」のではなく「やっていく」。
⑪ 『器』の冒頭部分を読んでみる!
⑫ 知らないところで重なっている。人類の孤独と共存。
⑬ これからのいいへんじも、「現在地」を確かめながら。


「やっつける」のではなく「やっていく」。

中島
では、次の話題として、【これから】のいいへんじのほうに入っていきたいと思うんですけれども。

これまでのいいへんじは、同じ場所に集まって空間を共有して、言葉じゃないところでのコミュニケーションも大事にしていたりもしていたので、なので、こういう状況にあって、いま、もやもや真っ最中なわけなんですけど。

それこそ、いいへんじのことを好きでいてくれる人って、普段は口下手、みたいな人がけっこう多くて。「わたしがいままで言えなかったことを言ってくれてありがとう!」みたいな。「どういたしまして!」みたいな。毎回、そうなんですけど(笑) そういう意味で、言葉ももちろんそうなんですけど、わたしたちの態度みたいなところで、言葉なきところで、共鳴してくれる人とかいたりして。そういうことを大切にしていきたい。

じゃあ、【これから】のいいへんじは、どうしていこうか?っていう、どうしていけるのか?っていう、ところを、考えていきたくて。

で、一つ、考えるときにポイントにしたいのが、「やっつける」じゃなくて「やっていく」ってことなんですね。

いま、新型コロナウイルスがどんどん拡がっていて、社会が混乱状態にあって、それに対して、「コロナウイルスやっつけろ!」って思ったとしても、相手はウイルスだし、すかっ、てかわされて。闘えない相手と闘い続けてもうなんかうわああああってなって疲弊して、で社会もどんどん疲弊して、っていうふうになっていくんじゃないかな、と思っていて。

みんな、よく、「一丸となって闘いましょう!」みたいなことをよく言うけど、「闘う」、なんだー、みたいな。感染拡大の防止っていう意味では、ひとりひとりがどうやってそれと付き合っていくかっていうか、わたしたちのアンダーコントロールにどうやってコロナを入れられれるかっていうか、それで、結果的に、勝った、ってことになると思うんですね。いまは、もう、コロナによってうわーって惑わされっぱなしなのを、うまくコントロールできるようになるっていうことが、たぶん、彼らの言ってる、勝つ、っていうことなんですけど(笑) その、勝つ、、勝つ、、「勝つ」、なんだー、みたいなことを、ずっと思っていて(笑)

それが、けっこう、コロナが流行り始める前から、わたしがメンタルヘルスに対して考えていたことと似ていたんですよね。

やっぱり、自分の身体に、自分ではどうしようもできないことが起こったりとか、コントロールできない状態になったりとかすると、どうしても、正常にしなきゃ正常にしなきゃ、いつもどおりに戻さなきゃ、って、足掻いてしまうと、余計に悪化するんですね(笑) それこそ、やっつけちゃおう、勝っちゃおう、とすると、どうしてもうまくいかないなっていうのをずっと考えていて。で、これ、いまの状況とも似てるなー、みたいな。

『器』でも、自分と病とを、うまく切り離して、そいつとともに「やっていく」には、そいつとうまく「やっていく」には、どうしたらいいんだろう、みたいなことを考えたいと思ってます。

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『器』の冒頭部分を読んでみる!

中島
みなさんには、事前に、『器』の冒頭部分をお送りしました。

ここはけっこう、迷い迷いで書いたところではあるんですけど。どういう視点で、この『器』っていう作品をやっていこうかな、っていうのを、いろいろ迷ったんですけど、こないだ、みなさんに脚本と一緒にお送りした「ウィルスの独白」っていうテキストを読んで、すごく刺激を受けて。これは、ウイルス側から見た、人間のことや社会のことを語ってるんですね。

そこで、「死にたみ側から、人間はどう見えてるんだろう?」って。「そいつらは、いま、こうやって、異常な社会で、どうにかあくせく生きている人間たちのことをどう見てるんだろう?」って、思って。なので、死にたみの視点から、この作品を始めてみることにしました。

主人公のもとにやってくる「死にたみ」をなほこが演じるんですね。なほこが、最初に、なんか、話しかけてくる、っていう、1ページ目です(笑)

ちょっと、じゃあ、読んでもらおうかな!


▼ 音声データ(小澤南穂子による朗読)


▼ テキストデータ



みんなー! おれっちの声、聞こえるー?

・・・

聞こえてないよねー? おっけおっけー!

・・・

えっ、聞こえてないよね? 大丈夫だよね? 返事がないってことは聞こえてないってことで大丈夫だよね? 聞こえてないってことで進めていくけどよろしくねってな、わけ、でー!

みんなに、おれっちの声が聞こえないうちに、みんなに、おれっちの姿が見えないうちに、はてさてどうして「みんな」という言葉でまるっとされてしまうのかさっぱりわからない世界に向かって、おれっちは、大きな声で、叫ぶ!

おれっちはー! もうすぐー! 生まれるー!

・・・     

みんながぐっすり眠る夜、「みんな」という言葉からこぼれ落ちてしまったおまえっちのベッドの下で、おれっちはこっそり生まれる! その夜、おまえっちは、柄にもなく牛乳を温めて飲んだり、お腹を壊して余計に眠れなくなったりする! 隣のあの子っちのおだやかな寝息を聞きながら、こんなに近いのにこんなに遠い、なーんてことを思ったりして、まるで世界におまえっちがひとりぼっちのような気持ちになったりする! 

けどそれ全部、おれっちの仕業だからね!

あ、ここからがいちばん大事なところです! 耳の穴かっぽじってよーく聞いてね! って言っても聞こえてないのか、じゃあいいです! いちばん大事なところをおれっちが、ただ、言います。

おまえっちがどうして生きているのか、おまえっちにもだれっちにもわからないように、おれっちがどうして生まれるのか、おれっちにもだれっちにもわからない。

おまえっちは、わからないことがこわかったね。ずっと、ずっとね。おれっちのことも、わからないから、こわいかな? それは不本意だなー。



中島

ありがとう!

小澤
ありがとうございました。

一同
(拍手!)

清田
すごいなー。

水谷
いいすねー。

松浦
わー、いいすねー。

水谷
いいよねー。

松浦
いやー、よかったー。

水谷
なんか、あれだよね。小澤さんがずっと前からいいへんじにいるみたいですね。

中島
よかったじゃーん(笑)

小澤
(拳を高く掲げる)

一同
(笑)

小澤
ありがとうございまっす。

中島
なほこ、読んでみてどうでしたか?

小澤
なんか、まず、一個言うと、なんかもうだいすき、って感じで、

一同
(笑)

小澤
「死にたみ」なのに、ほんと不思議だなって思ったんですけど、心躍っちゃうんですよね、なんか(笑)

中島
ぜんぜんいいんだよそれで(笑)

小澤
っていう、おもしろさを感じつつ、ずっといたけど気づいてなかっただけだよって、おぺさんが前に話してて、ちょっと元気な感じで書かれてるのは、「やっとおれっちの話してくれんだねえ!」みたいな、「そんな動揺してますけどさー!」みたいな、「まーまー!」みたいな。そんな感じなのかなー、とか。わりと、いいやつっぽく書かれてて、おもしろい。なんか、すごい、楽しかったです。

中島
ありがとう。ちなみに、ともかは、なほこの先輩役なんだけど。死にたみの先輩(笑) この世界にやってくるっていう意味では、なほこは新入りで、ともかは、長年、ひとりのやつにずっとずっと苦痛を与え続けてて、もうベテランなの(笑) で、ともかは、けっこう、すっ、て感じなの。「なんか生意気なやつ入ってきたな」みたいな。そういう役なんだよっていうのも、いま、はじめて言ったんだけど、なほこの聞いてみて、どうかな?

飯尾
ベテランなんすか(笑) あー、えー、死にたみにもいろいろいるんですね。

中島
いろいろいる。予定。

飯尾
みんな「おまえっち」って言ってるわけじゃないんですね(笑)

中島
あ、ちがうちがう。なほこだけ。この文法は(笑)

飯尾
てっきりみんな「おれっち」「おまえっち」みたいな感じなのかと(笑)

中島
あー、ぜんぜん。ともかは、ふつうに、人間みたいにしゃべる。

飯尾
あー、へー。なるほど。楽しみです。

中島
そう、ちょっと、がんばって、みるとかともかがしゃべるところもやりたかったんだけど、ちょっと今日はここまでなんですが。どうですか、みるさん?

松浦
・・・

中島
あ、あ、みるさん、どうですか?

松浦
あたし? あ、あたしか!

清田
みるっち!

水谷
みるっち(笑)

松浦
みるっち、はー、どう? どう、か。 まず、最初にこれをもらったときに、これをなほこがやってるイメージがとても湧きやすかったというか。湧きやすくて、うん。と、いま読んでくれた感想とか、言われても恥ずかしいよね?

一同
(笑)

松浦
えー、ほんとうに、楽しみだね。でも、もう、あたしにはさ、死にたみはついてないわけでしょ? それがまた、楽しみですね。いままでは心の声がいたからさ。

中島
そうそう、みるは、自分でしかない、っていう。新たなステージに。自分のことで悩むって人じゃなくて、自分じゃない人が悩んでるってことに悩むっていう人になる。だから、もしかしたら、いままでのいいへんじでの役割とはちょっとまた変わってくるかもしれないですね。

松浦
うん。



知らないところで重なっている。人類の孤独と共存。


中島
水谷先生、いかがでしたでしょうか? 

水谷
いやー、もうね。あのー、めちゃめちゃおもしろい。

一同
(笑)

水谷
大きく言いたいことが、二つあって、一つは、自分の中にいるけども、自分が気がついてないっていうことなんですけどね。それって、よく考えてみると、わたしたちはほとんどわたしたちの体のことを知らないってことなんだよね。自分たちは生きてて、この体でもって自分、って言ってるんだけども、この体のことをほとんど知らない。自分の知らないところで、体は勝手に動いてくれてるわけじゃないですか。

で、あとこれ、翻訳文化論っていう授業で、いつも最初の方で、話すことなんだけれども、人間の体の中のタンパク質って、染色体が伝える情報に基づいて、できていくんですよね。そのときの、「情報を伝える」のことを、医学用語で「翻訳」って言うんですよ。ということは、人間は、誰もが、知らないところで翻訳をしてるんですよね。だから、そういう意味では全員が翻訳家なんですよ。なんか、この「死にたみ」も、同じようだな、と思って。

で、その流れでいくと、もう一つが、あ、三つくらいあるのか、やっぱり(笑)

もう一つは、わたしたちは、どちらかというと、マイナスであるものを排除したがるんだけれども、その発想は、やっぱりちょっとおかしいな、と思うんですよ。余分なものを排除するってことが、まず、おかしくて。そのおかしさの反対側にあるのが、「共存」っていうことですよね。「ともにくらす」ということですよ。で、たぶん、ともにくらすっていうことを手に入れないと、コロナは乗り切れないと思うんですね。次のステージに、人類は行けないと思うんですよ。それは、人類共通の問題であって、その意味でいうと、いいへんじは、人類の最先端の場所にいる(笑)

一同
(笑)

水谷
ちょっと褒め過ぎだけど(笑) でも、さっき清田代表も言ってたけども、ブレイディみかこさんの作品は、イギリスの話で、状況としては全然違うことを書いてるんだけども、いいへんじの作品と、同じ問題が出てきてるんですよね。それはおそらく、同じような、社会の構造だとか、世界の構造があって、それが、だんだんだんだん、煮詰まって出てきた、ってことだと思うんですよ。

やっぱり、排除しないで、ともにくらす。この話が、最後どうなるかわかんないけども、ともに環境をつくっていくっていうことなんじゃないかな。だから、やっつけるだとか撲滅するだとか、そういうことじゃない発想にしないと、たぶん、人類は次のステージに進めないんですよね。ヘイトスピーチなんかもうほんと、最悪ですよね。

もう一つね、これ、送ってもらってすぐ読んで、そのときにはあんまり感じなかったんだけれども、いま、小澤さんが読んだのを聞いていて、あ、もうぜったいそうだ、って思ったのが、これ、中世の宗教劇とまったくおんなじです(笑)

一同
おー(笑)

水谷
これも、よく、演劇史の授業の中では、最初の方に話すことなんだけれども、中世に、イギリスには宗教劇があって、そのひとつが「道徳劇」ってやつなんですね。中でも有名なのが『Mankind』とか『Everyman』っていうタイトルのお芝居なんですよ。" Mankind" って、「人類」だし、" Everyman " は「みんな」「一人一人の人」って意味ですよね。つまり、人類そのものが主人公なんですよ。人類が主人公だから、見てる人はみんな「あれ、俺じゃん」ってことになるわけ。そうだよね。「俺は人類じゃない」ってやつは、いないわけですから(笑)

で、道徳劇の話は、だいたい話は決まっていて、必ずですね、" Death " 、つまり、「死」が、登場人物として出てくるわけ。それで「俺は死だ!」とか、「みんな俺のこと嫌ってるけど、誰も俺から逃げることはできないぜ!」とか言って、Mankind や Everyman に、近づいてくる。で、必ず、だいたいパターンとして、その Death は、お芝居の上では、お笑いを担当する人なんですよ。だから、なんか、いま聞いたの、その構造がものすごく似てるなと思って。

たぶん、さっきも言ったけども、これも、あるひとつの「状態」の話じゃないですか。中島さんが書こうとしてるのも「状態」の話だと思うんだけど、道徳劇もそうなんです。最終的には、まあ、宗教劇だから、キリスト教的な救いの手が伸びてくる、って話なんだけどね。やっぱり、当時の人たちにとっては「俺は救われるんだ」「神様に守られてる状態なんだ」っていうことを、信じるためのお芝居なんですよ。

おそらく、予想できるのは、この『器』っていう作品が、「生きる」っていうことを肯定するお芝居になると思うんですよね。じゃないかな、と思うんだけども。すごく、「生きる」という状態を、僕らが気がついてないことを、気づかせてくれるっていうところが、すごい、宗教劇っぽいなと思って。そんな感想を抱きました。

中島
うれしいです。やっぱり、死を、 Death を、悪者とか怖いものとか、それこそ「やっつける」べきもの、みたいにしたくなくて。わたしは、「わー、死にてー」て思うときにこそ、いろんなこと考えるし、そういうときに考えたことって、振り返ってみると、ちゃんといまにつながってるなって。そういうことを、何回も経験してるので。

あとは、死が、まだどこか遠くにあるのか、もうすぐ隣り合わせにあるのか、いや、もう、隣り合わせにあるような社会ですけど。いつだれがすぐ死んじゃってもおかしくないような社会ですけど。でも、死があることで、生きようって思える、みたいな、そういうところが、自分の中にはあるので。だから、かわいいな、って思えるようにしたかったんですよね。うざいけど憎めないやつにしたくて。

水谷
いつもそうだけど、やっぱり、キャスティングがうまいよね。

中島
ありがとうございます。

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中島
清田さんはいかがでしたか?

清田
もちろん、ここだけしか聞けてないから、まだ全体像がどういうになるのかわかんないんだけど、個人的に、ぱっと、さみしい気持ちになった、っていうのがあって。小澤さんの声の感じとかも相まってだとは思うんだけど、なんか、「おれっち」、孤独だなー、みたいな。

ぜんぜん関係ないんだけど、最近、予防接種とかで、子供を病院に連れてくと、その病院で、アンパンマンがエンドレスで流れてるの。俺、そんなにちゃんとアンパンマン見たことなかったんだけど、ばいきんまん、さみしいなー、みたいに、ちょっと思っちゃって。

中島
たしかに。

清田
しかも、アンパンマンの第一話って、よくわかんない宇宙の星で生まれたアンパンマンとばいきんまんがなぜか地球に来る、みたいな、そういう設定だったらしくて。なんか、あいつ、いつも、ひとりであの宇宙船みたいなやつ乗ってて、さみしいなー、みたいな。なんか、急に、ばいきんまんを思い出したんだけど(笑)

それはさておき、まず、「俺の声が聞こえてるのか」みたいな状況が、めちゃくちゃさみしいし、自分は相手のことをすべて知っているけど、相手は自分が知ってることを知らない、みたいな、この状況ってめちゃくちゃ孤独だな、みたいな。

たとえば、身体の全部の感覚器官が止まって、麻痺しちゃって、ほんとうは、思ったり感じたりしてるのに、口も目も手も足も動かない、みたいな。そういう状態ありますよね。

水谷
ハンバートハンバートの歌でそういうのあったね。そういう状態はあるよね。

清田
医学的な病名もあるようなので適当なイメージで語っちゃいけないことかもしれないけれど、その状況を想像すると、すごい、こう、苦しい気持ちになる。頭の中では、めちゃくちゃいろんなこと思ってるのに、どうやっても相手に伝えられない、みたいな、相手はこっちが考えてることをわからない、みたいな。勝手に、寝たきりの人、って思われちゃってたら、つらいじゃない。たとえば、勝手に、脳死とかって判定されて火葬とかされたら、ほんと、恐ろしすぎるなって。そういうことを想像したことがあって。そういう気分にちょっとだけなったというか。「おれっち」さみしいな、みたいな。「おれっち」のこと、誰も気づいてない、みたいな。その、孤独感と、非常に明るく振る舞ってる感じが、ちょっと、さみしかったです。

水谷
いまの聞くと、これ、けっこうもう、泣けるよね。

清田
おれっちの状況、切ないですよね。

水谷
泣けるよね。小澤さんの声とか言い方とかが、めちゃめちゃ底抜けに明るいわけではないんだよ。自分の状態を分かっていながら、多少、明るくしてる、みたいな。

今日、僕が送った、憲法についての文章(基本的人権と日本の近代―シェイクスピアの混乱から星野源の「ばらばら」へ―)の、最後の方で、星野源の「ばらばら」のことを勝手な解釈で書いてるんですけども、その「ばらばら」とも、ちょっと似通ったところがあるなと思っていて。もう、ばらばらで、ぜったいひとつになれないんだけれども、いっしょに重なってっていう。ふつうの世の中だと、ひとりぼっちはよくない、ってことになっちゃうんだけど。やっぱり、それって、大切にしなきゃいけないことなんだっていうふうに思うんですよ。この、引きこもってる状態を、全然苦痛に思わない僕なんかは、特にね。

とはいえ、清田代表が言う通り、孤独っていうことに関しては、なかなか感じるものがありますね。

中島

自分も、死にたみを悪者として闘ってた時期があるし、「なんで死にたいと思わなきゃいけないんだ!消えろ!」みたいに、思ってた時期があるけど(笑) それに対して、「ごめんね」の気持ちで書こうかなって、今回は思ってます。

水谷
ときどき遊びに来てもいいよ、みたいな。

中島
ああ、そうそう、ときどき遊びに来たら、わたしはまあまあ苦しくなるんだけど、まあでも、お前が来たってことは、わたしいまちょっとやばいところにいるんだな、って、わかるし。

あくまでも、これは、作家としての自分のスタンスではあるんですけど、死にたみに対してもそうですし、コロナウイルスそのものに対しても、それによってどんどん変わってきちゃってる社会に対しても、それをこう、ボンボン!って「やっつける」っていう思考よりは、じゃあどうやったらともに「やっていく」ことができるかなっていう思考で、いけるかな、いきたいな、と、思っています。

まあ、なんか、変ですよね(笑) 変な領域に足突っ込んでるなって、自分でも思うんですけど(笑) いま、非人間なるものを、理解しようとしてて、想像しようとしてて。人間のことでさえわからないのに。だから、すごく、難しくて、頭抱えるときもあるんですけど、やっていこうかな、と、思っています。

すいません、盛り上がっちゃって。これから、こういうスタンスで、こういう作品を作っていくよ、っていう、ことでした。



これからのいいへんじも、「現在地」を確かめながら。


中島
じゃあ、最後に、今回の感想をお一人ずつお聞きしていけたらなと思います。松浦さんどうでしたか?

松浦
こんなに時間を取って、客観的に、いいへんじのことを、言語化してもらえる時間、めちゃめちゃ贅沢だなって、思ってます。めっちゃ贅沢すぎて、びっくり、してるし。自分も、楽しくて。それも、よかった。です。んー、ありがとうございます!って、気持ちです。

中島
ありがとうございます。じゃあ、ともかはどうですか?

飯尾
最近、漠然と生きがちだったので。いま考えてることとか、いま周りの人が考えてることとかを、ちゃんと言語化する機会がすごい貴重だったんで、またやりたーい!って、思いました(笑)

中島
一ヶ月の間にもやもやをためておくっていうね(笑)

飯尾
来月にばーって出します! ありがとうございました。

中島
ありがとうございます。なほこはどうですか?

小澤
二人と同じ感じで、とっても楽しくて。「現在地」を確認するっていうのはすごい大事なことだなって思って。今回は、いいへんじの「現在地」を確認するって目的もあるけど、それに付随して、勝手に自分も自分の「現在地」を確認したりして。とってもとっても、とってもとっても、素敵なお時間でございました。ありがとうございました。

中島
ありがとうございます。清田さんいかがでしたか?

清田
おとなりさんとして、役目を果たせてたらうれしいですけど。やっぱり、自分が普段生きてて、考えてること感じてることと呼応してる部分もたくさんあったし、できるだけそうやって自分自身のテーマとか、ものを書いていく上で感じてること、これから書いてみたいなと思ってることと、いろいろつながっていったらいいなと個人的には思ってるので。今回に関しては、自分がいいへんじのことをどう見てるのかとかを、言葉にしたことはそんなになかったから、俺こう考えてたんだ、みたいな。常日頃から考えてたわけじゃなくて、しゃべりながら(笑) そういう、おもしろさが、ありましたね。ありがとうございます。

中島
ありがとうございます。先生、いかがでしたか?

水谷
うん。あの、僕はもう、ほんと、楽しかったですよ。で、願わくばね、本来のように、対面でね、この話ができたらほんとにいいなと思うんですよね。あと、こうやって、若い人たちで、僕が授業でやったり自主ゼミでやったりなんかすることと、すごく呼応してる人たちがいるってことが、ものすごく心強いですよ。で、やっぱりそうそう、清田代表と同じだけれども、僕も、考えながら話していて、自分の考えをまとめていくという機会にもなってるんですよね。だから、とてもありがたい時間だったと思います。あの、まあ、これからもですね、おとなりさんとして、ご利用していただければと思います。ありがとうございました。

中島
ありがとうございます。

わたしも、ほんとに、この企画自体、どうしていこうっていうのは迷いがあって。「わたしたちにできること」ってキャッチコピーがよくあるけど、できることだけじゃなくて、ちゃんと心からやりたいって思えることはなんだろうってずっと考えていて。自分たちがしっくりきてないことってバレるので。いままでの自分たちの活動に嘘つくことになっちゃうのはやだなと思ってて。だから、今回、やっぱり「おしゃべり」するってところに戻ってきたんですよね。

たぶん、これからもそうやってやっていくんだろうなってことは、いま、すとんってきてるので、それが具体的に何なのか、っていうのは、言葉にしながら、おしゃべりしながら、これから考えていけたらな、っていうふうに、いますごく前向きな気持ちです。がんばって来月までに脚本を進めるぞーって、思って、おります。

で、やっぱり、声に出して読んでもらうのはいいですね!

なほこの声を聞いたときにぶわって、想像が広がった気がして。なんか、いやひとりで書けよ、って感じではあるかもしれないんないですけど(笑) でも、その、リアクションみたいなもので、書けたらすごい楽しいなっていうか、っていうふうに思ってます。

来月からは、このやり方がメインになっていくというか、三人以外の俳優さんにも参加してもらって、書きかけの台本を読んでみてから、関係あることないこと話していくっていうふうに、これからもやっていこうかなと思っております。粛々と、続けていけたらなと、思っております。では、今日は、ほんとうにありがとうございました。

一同
ありがとうございました。

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(構成・編集:中島梓織/イラスト:飯尾朋花)



「MONTHLY MAKING PREPARATIONS」に関連する記事の売上やサポート(投げ銭)は、今年10月に予定している『器』の公演資金として、大切に使わせていただきます。



(中編)はこちら


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