コラム「発達障害の親子関係を放置していると大変なことになる」

#創作大賞2023

発達障害 当事者団体代表として15年やってきた石橋の当事者としての意見
~元農水事務次官の長男殺害事件について~

 元事務次官の事件について、被害者である長男が発達障害の診断を受けており、それらの報道に関連して、多くの誤認が発生していることを、発達障害の当事者団体の代表として、憂慮しております。これを鑑みて、発達障害の当事者およびその家族のため、このマニュフェストを発表するに至りました。
 発達障害とそれに伴う家庭内暴力が殺害の直接的動機。これについて、被害者が家庭内暴力に至る背景および成育歴を十分に検証してもらいたい。
私は団体設立から15年、のべ2000人を超える発達障害の当事者や家族と会って話をしてきました。その中で、私の共通認識として間違いない経験則は、「発達障害の子供の育て方は特別。常識的子育て論では対処できない」ということです。常識的子育てを行うと、結果として発達障害児には「不適切療育」となることが多数あり、不適切療育の結果、発達障害の子供たちに二次障害として、多くの問題行動や社会不適応が発生します。これらの事実は、当事者や関係者にとって、もはや常識レベルの知識となっています。しかしながら、当該事件に関して、「暴力行為を行っていた長男にも非がある」という意見が多数見受けられ、まだまだ常識的子育て論が横行していることを懸念しています。
 最も認めてもらいたい両親に、幼少期から否定され続けた被害者の心情を想像すると、同じ発達障害の当事者として、親を憎みたくなる気持ちが理解できるし、挙句に殺害される最期になってしまったことが非常に悔しい気持ちになります。
 この事件は、シンプルに「熊澤被告とその家族に発達障害についての知識がなく、かつそれらを受け入れる心理的状況でもなかった」ゆえに発生したものであると、私は考えています。逆に言えば、我が子が発達障害だと判明した時点で、「適切な療育方法」を提示することができれば、このような事件は未然に防ぐことができたと考えられます。ただ、現状では、素晴らしい研究を地道に行なっている方々もいるのですが、いかんせん支援者の絶対数が少なく、現実的に「適切な療育方法」をすべての人に提示することは不可能に近いという事も把握しています。したがって、報道に対して「この家族に支援の手を差し伸べられなかった社会や支援側にも問題がある」というコメントは、発達障害の置かれている現状をまったく把握できていないという意味で、誤った意見だと捉えています。
 大多数の親御さんは、我が子の為を想って、厳しく躾をしたり、愛のある叱責を日々なされていると思いますが、結果として、それらは発達障害児の成育にとってマイナス要因にしかならず、親御さんの意図に反して、結果として我が子の社会性を奪うことになる。この因果関係が、親御さんだけでなく、社会一般に全く認識されていないことに対して懸念しており、このまま状況を放置していては、同様な事件が発生するのではないかと危惧の念をいだきます。したがって、報道に対して「子供を甘やかした結果である」というコメントは、まったく的外れであるだけでなく、むしろ正反対の認識が世間一般になされている証左だと考えます。
いま本当に変わらないといけないのは世間でもなく、支援機関でもなく、当事者でもなく、まず最初に親の意識を変えること。どうすれば出来る?そのために必要なのは?

1、行政主催で「発達障害の持つ子の子育て講座」を定期的に開催する。

2、希望者による任意の家族会を定期開催。

3、さらに希望する人にペアトレやペアプロなどの情報提供

この3段階で親の意識はかなり変わる。結果、成人当事者も発達障害児も親自身も救われる。さらには支援者の負担も減る。かつ、支援する側に回れるピアスタッフを育成することができる。

 そのために当事者ができることは?
とにかく自助グループを長続きさせること。毎月淡々と会を開催すること。長期継続すれば、信用や視界の低さは後からついてくる。
長続きのためには、主催者が消耗しないこと。
消耗しないためには、いらん事しないこと。自助会での人間関係やイベント開催にエネルギーを無駄使いしないこと。

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ihi1484 #note https://note.com/ihi1484/n/n4a51b65b82d7

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