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【考えごと】官能小説と方言



 つい最近、度肝を抜かれるような官能小説に出会って、無事度肝を抜かれた訳だけれども、皆様どうお過ごしでしょうか。ミズノさんは度肝を失いましたが元気です😃


        ◇ ◆ ◇




 さて件の人は、褒め称え始めるとキリがないくらい、すごい官能小説を書く。3部に分かれた最新作も最高に良かった。更新が楽しみで楽しみで、実験待ち時間にチラチラnoteを開いては待っていた。

 小説の楽しさと映画の楽しさをまとめて摂取したお得感が凄まじかった。取り扱っているテーマ的には世間の禁忌だし、私の性癖とも違うどころかむしろ清々しいくらい真逆だけれど、するする、文章が頭に入ってきて、且つ同時進行で情景が見える。すごい。ご自身のことを語られた記事はお見かけしていないが、既に何本も出されているプロなのでは??と思っている。いや正体が誰であれ構わない。事実としてすごい。noteの官能小説ジャンルの中では、手腕が段違いだと思う。

 読ませる。
 魅せる。
 風景が見える。
 会話が聞こえる。
 匂いがする。
 登場人物に影があり、色がある。

 ちょっと無理だ。到底敵わない。
 『ミズノ節』で書くふわふわした平和なエッチ話のことを私自身気に入っているし、表現の目的の根本が違うし、私はそもそも自分のためだけに書いているから、単純に誰かと比べるのもどうかと思うけど、仮に同じテーマを取り扱って書いてみてくださいとお題が出たとして『ミズノ節』では、こんなもんでは、件の人の足元にも及ばない。

 勝ち負けではないけれど、勝ち負けを前提とした場合、勝てるビジョンが一切見えない。まさに完封コールド試合である。気持ちが挫けるくらい上手い。でも、バキバキに挫けるけど、読んじゃう。だって上手いから。

 前々から述べてはいるけれど、noteはエッセイや日誌、体験談が主流の明るいプラットフォームであって、官能小説や露骨に性的な話はあまりウケが良くない上にほぼ見かけない。
 それこそ、既に別の場所でご活躍されている方がチラホラ散見されるか、ちょっと書いてみるかくらいの人がいる二極化の感覚で、正直なところ『うわ、おもしろいな〜、続きどうなるんだろう』と思うような作品もほとんどない。

 この言い方、大丈夫かなあ。
 でも本音だ。

 AIがおすすめ記事でエッチな話を持ってきてくれることもあるけれど、私は原則決まった人の作品しか読まない。どんな性癖であれ趣味であれ、一本、まっすぐ筋の通った人が、何かを吐き出そうとして書く話が好きなのだ。官能小説をメインで書かれているのではないと思うけれど、いつも良くして下さるB氏はその代表格だ。どう生きたらああいう話が書けるようになるのだろう? 親切だし面白い人だ。ところで『B氏』ってほぼ伏せ字の意味ないね。音ほぼそのままだ。

 まあ私の『面白い面白くない』って、そもそも、没後50年とか100年とかの人の小説ばっかり読んでいる人間が言うことだからそんなに気にしないでほしい。

 なんにせよ、兎にも角にも凄い人がいる。
 私はあんまり他の人をフォローしない(タイムラインを追いかけきれないことがストレス)けど、1記事でも見逃したくなくて、ビクビクしながらフォローさせて頂いた。

 映画や小説の紹介記事も面白い。本当に普段取り扱っておられるテーマが重要なのだなあと思う。更新が楽しみで、先日記事内で取り扱っておられた小説については、私も購入して読んでいる。ちょっと難しい。多分、日本語版を読むよりも、オリジナルの中国語版を読んだ方がいいかもしれない。
 サブスクでの映画配信は残念ながら無かったが、DVDならあるらしい。プレイヤー買おうかな。


 それで、作品を拝読していて、特に『いいな〜』と思ったのは『方言』だ。
 多分、あくまでも推定に過ぎないけれど、ざっくりと関西方面、作品に出てくる具体的な地名からもう少し絞ってみると、奈良や大阪に縁がある人なのかもしれない。
 「……にし」とか「おっちゃん」とか、向こうの人だ。全然違うかもしれないけど、少なくとも推定する限りでは向こうの人だ。

 官能小説と方言って、独特な『秘め事』感があっていい。

 方言が豊富に出てくる官能小説といえば、柚木怜氏の各作品もかなり好きだ。もう出るたび買ってる。『キウイ基地』と『姉枕』が特に好き。みんな買って。そして読んで。(露骨フルパワー direct market ファン)
 でも、柚木氏が作品に出される方言は、こちらもおそらくではあるけれどご出身から推定して京都の言葉なのだと思う。それなので、件の人と柚木氏の作品における方言の違いも楽しめてイイ。

 件の人も柚木氏も上手い。
 官能小説を読むとするより、読みながら映画を観る的な、ただのチープなセックスセックスすけべすけべエロエロではなくて、ストーリー上の重要な骨格としての性的要素が最高というか、ダイナミックさが、なんというかスペクタクルなのだ。安心してほしい、ミズノさんの語彙力と言うか表現力なんかこんなもんだ。勢いでしゃべったけどスペクタクルってなんじゃい。でも両氏の作品はダイナミックでスペクタクルでノスタルジックでエレジーでエモくて禁忌でエロいのだ。すごいのだ。お察しの通りゆとり教育日本代表ミズノさんの学業成績はカスなのだ。油断すると『ヤバい』だけで乗り切ろうとしかねないのでヤバいのだ。関係性は悪かったがこれでは親も草葉の陰で泣こうというものなのだ。(ねっ、ハム太郎!🐹ヘケェ!)

 さておき。

 もう一点、『いいな〜』と思う部分がある。こちらは柚木氏の作品を拝読する時にも思うことなのだが、『昭和』の空気があるのだ。乃至は『平成初期』。
 件の人がおいくつなのかは分からない。
 もしかしたら私と同い年(30歳ちょい)かもしれないが、多分、もうちょっと上なのではなかろうか。10代や20代だったとしたら腰が抜ける。でも、インターネットで個人の本当のことなんかは何も分からないから、それもありうる。
 ありうるけど、多分、超多分、私よりは年上のはず。何歳だって構わないし、性別だってなんだっていいのだけど、すごい作品を書く人のことはちょっと知りたい。
 柚木氏は公開されているプロフィールから推定する限り昭和生まれの作家さんで、件の人と似通った部分がある。

 うらやましい。
 『昭和』の独特の空気は、その時代に生まれていないと分からない。

 私が訳もわからず『昭和ロマンポルノ』と言って喜んでいるワードがある。

 昭和とロマンとポルノ(とパンティ)は相性がいいと思う。ちゃんと『ポルノ』だったのだ。コッテコテのスケベ映像作品があったらしいのだ、昭和、我が国に。

 私は大前提として、フェミニストではないが、各種コンプライアンスにうるさく、Sexual Reproductive Health and Rights:SRHR については極めてうるさい。だからぶっちゃけ昭和期のピンク映画だのエロ映画だのエロ本だので女性が消費されることに対しては反吐が出るし怒りを感じる。しかしところでピンク映画ってなに。

 そのおかげで書く作品書く作品『ミズノ節』が炸裂し、女性の心身の健康最優先のイマイチエロ瞬間風速に欠ける話ばっかりになる訳だ。誰になんと言われようと私が好きでやってるからいいんだけども。『エロくない』と言われたなら『うるせえ去ね』としか言えないのだけれども。

 両氏の作品を拝読して、あらためて自分を振り返ってみると、とにかく、武器が違う。
 何度でもしつこく言うけど、私は私のためにしか書いていないし読んでいない。私の世界の中で生きている女性陣が、優しくて頑健なパートナーと一緒に仲睦まじく暮らしていく happily ever after が達成されたならそれでいい。他人の作品のことなんか極論突き詰めるとどうでもいいし、ミズノ節が読まれようが読まれまいがもどうでもいい。知らん、他人のことなんざ。私は自分のことしか考えていない。誰に寄り添うつもりもない。いいんだ、ロミ子や春子さんたちが平和におやつとか食べてのんびり暮らしていれば。

 私の作品は、女性が書いている、(そんなつもりはないが敢えて言うなら)女性に向けた話だ。女の人に安心してほしくて書いていることもある。
 平成に生まれたが、出来る限りは令和のルール感覚で書きたい。sexualな表現の諸々で、物語の要素上必要でなければ、粗末に扱われる女性は書きたくない。
 男性本位のセックスなんかまっぴらごめんだ。挿入ではイかない。イっちゃう!なんて言わない。咥えるのも相当好きな相手でなければ気分が悪い。精飲なんかゲロが出る。

 だから、官能小説としての私の作品は、死ぬほどつまらない。夢がないから。

 官能小説を求めている人には、極めて物足りないし、説教垂れられてる気分になって勃つものも勃たないだろう。

 でも方向転換する気もない。

 しかし、せめて両氏のように、方言を組み合わせてみたら多少は秘めたるノスタルジック感が出るのではないか、と思ったこともある。 
 幸か不幸か、私にも方言がある。

 ちなみにさっき書いた『去ね』が激烈に方言だと知ったのは大人になってからである。

 出身地を明かすつもりはないし、あちこち転々としていたからちょっとブレがあるけれど、私の訛りは京都や大阪や奈良のものではない。

 たとえば。

 ほんとだよね〜を『まっことじゃあ!!』とし、うるせえ騒ぐなを『ほたえな』とし、『失せろボケぶっ殺すぞ』を『去ね』とし、マジ無理なんだけどやめてよを『こらえてつかあさい』とし、もう帰るね〜は『いんでこーわい』、別にいいからを『かまんけん』、入ってはいけない場所のことは『ここには入られません』、おはようございますは『おはようございました』と過去終了の話になり、挙げ句の果てに一人称は『わし』である。

 ダメである。
 一歩どころか半歩間違えただけで孤狼の血である。
 孤狼の血の舞台になっている土地の出身ではないが親戚がめちゃくちゃいる。映画の方言は激ゆるだ。あんなもんじゃねえ。

 ご存じの方々、嫌だろう、『わだつみの沈黙』が孤狼の血のメインテーマと共に始まったら。趣旨が変わってくるし、吉岡と安田の刺青の模様や意味も変わってくるし、ロミ子が高級クラブの訳あり和装美女になるし、春子さんが銃を持っているかもしれないし『沈黙』の字面の構えもどことなく変わってくる。


 念のため『わだつみの沈黙』の勝手なテーマ曲はこちらの2曲だ。
 孤狼の血のタイトルとは掠りもしねえのだ。


 お二方には敵いもしないが、せめて方言がもうちょっとノスタルジックな感じであれば、また違った気持ちで官能小説の台詞回しとかを楽しめたかなあ、などと思いつつ、あらためて自分の持ち味『ミズノ節』に向き合えたいい機会だった。
 更新も新作も、心底待ち望んでいます。




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