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ワン・セコンド・反骨心

一年ちょっと前、「っしゃー!留学でもすっぜ!」と会社を辞め、辞めるその日くらいから世界的にコロナウィルスがマジでやばいみたいな雰囲気になり、結局留学なんてできないままお金ももったいないので実家に帰りのんびりと過ごす事にした。

仕事を辞める前から漠然と「文章書いて生きていくってかっこいいじゃん」と思い、本当に何となく脚本家を目指す事にしてみた。
異常なほど有り余る時間の中で、きっと自分がやらなければいけないことはたくさんあった。

例えばそれは何でもいいから物語の種をたくさん作る事だったり、どんなに駄文でもいいから文章を書く事だったり、とりあえず誰かに会ったり何かをすることで創作の糧になる行動を起こす事だったり、その他諸&諸…

ただ、自分が何をしていたかというと、まぁ端的に言えば
何もしていなかった。
強いて言えば何もしない事に対して毎夜自己憐憫に陥る日々を過ごしていた。
いつも寝る時は「んぉぉぉぉ!!今日も何もしなかった!!格闘技のYoutubeめっちゃ見ちゃったぁぁ!!んくそぉぉ!!」と心の中で自分をビシビシと叩きながら床についていた。
実際悩みが積もって眠れない日もあった。

そんな時いつも思っていた
「このままだと「鬱」ってやつになってしまう…」

が、しかしだ。これは大いに自分の性分というか性格に感謝すべきなんだろうが自分は「鬱」ってやつにはどうにもこうにもかからないくらいあっぱれな人間らしい。

ふと目が覚めれば昨日の悩みはどこへやら、見たい映画やYoutubeやら今日の時間の潰し方やらが頭を駆け巡る。
そういえば前の会社の時から、上司に怒られたり、上手く仕事が出来なかった時にとんでもなく悔しい気持ちになって「あいつ…俺の才能で黙らせる、目に物見せてやる」「俺なら出来る、あんな仕事一瞬で片付けられる」と意気込んでも、次の朝を迎えると
「やばいな…悔しさとか全部消えている」
と、自然にマインドチェンジできてしまっていることが多かった。
寝ると悔しい気持ちや、成長したいという気持ちもリセットされてしまう。
根っこの向上心が欠けているからこそ大事なはずの「反骨心」が一夜にして消えて無くなってしまう。

この「反骨心が一瞬で冷める」という性格は良いか悪いかは分からない。
きっとその力でぐんぐん成長できる人だってだくさんいるはずだ。
でもまぁとにかくどう頑張ってもそうなれないのが自分なのだからそれを上手く背負いながら上手いこと生きていくしかない。

「汝、自分を知るべし」とは良く言ったもので、自分のどうなっても変わらない変な性質を知っていると割と楽に生きられる。
逆に言えばすぐに消えてしまう反骨心だから、芽生えたときには精一杯イイ子イイ子して慈しんで、消えないメモやら何やらで残しておくのがきっと重要だ。

と…まぁそーんなことをイキナリだけど浅井リョウさんの「世界地図の下書き」という本を読んで漠然と思った。(最近朝井さんの作品を連続で読んでいる)

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個人的には他の朝井リョウ作品に比べたら、それらが持つ毒っけやみたいなものが物足りない部分はあったんだけど、最後の方で「「逃げる」という選択肢の重要性」を感じさせる部分や、「希望は減らない」という台詞が、甘美な甘えにも感じられるけど、まさしく寝て起きたらマインドチェンジしてしまうあっぱれな自分を正当化してくれているみたいで嬉しかった。

そう、明日には明日の希望があり、逃げた場所にも逃げた場所の希望があるのだ、きっと。

それに、すっかり忘れた悔しさや苛立ちだって心のどこかでふつふつとマグマみたいに熱を帯びているはず。しかるべきときにそれをすくって全力でぶっかけてやればいい。

と、いうわけで朝井リョウさんの「世界地図の下書き」、毒っけのある朝井リョウ節は少し薄めだけどカラッと明るくてオススメです。

急角度からの本のおすすめでした。

またね!!

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