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春学期の輪読~巨人の肩に乗る練習~

Здравствуйте!5期生の横田です。

今回は井口ゼミの3年生が春学期に行う輪読について概要をご紹介する。といっても2020年度募集の方々が輪読する本は何も決まっていないので我々5期生が行った輪読本を例に説明させて頂く。

そもそも輪読とは何を目的に、何をするのか

研究会の目的は特定のテーマに沿って研究を行うことである。しかし、日本の大学教育制度が大学2年生までは一般教養を中心に学び、大学3年生から専門を深めるという制度であるが故に、大学3年生は大学3年生になったからといって突然研究を始められるような素養がある訳がない。

そこで、研究会に入りたての3年生の多くが春学期に行うのが輪読である。

輪読ってそもそも何?とググってみると色んな記事がヒットする。

Google先生によると、輪読とは結局複数人が同じ本を読み、感想や意見を交わすことであり、輪読の目的は①知識レベルを同じにすること、②ディスカッションを通して更に学びを深めること、に集約される。

様々な組織が輪読会を開催し、上記②に工夫を凝らしている。本を読み自由に感想をいうも良し、感想について特定のテーマを設定し議論するも良し。井口ゼミは後者の「感想について特定のテーマを設定し議論する」タイプの輪読を行っている。

井口ゼミの輪読の流れは①章ごとに担当者を決める、②担当者が担当章の説明パワーポイントを作成し、本ゼミでゼミ生に説明、③担当者が設定したテーマに沿って議論を行う、である。(ここでパワポスキルがぐっと身に着く。卒業後、一般企業に入社してパワポで苦戦することはまずない。)

※尚担当者にならなくても、全員が同じ本を読み、全員が要約を作成する必要がある(ここでワードスキルがぐっと…以下略)。

5期生が輪読を行った本たち

1冊目:浅川和宏著『グローバル経営入門』

国際経営学だったらまずこれをしっかり読めば大体大丈夫。特に日系企業の海外進出に関するニュースは大体「あーね」となれるすごい本。

2冊目:林倬史著『新興国市場の性質と新たなBOP戦略』

BOPと聴いてピンとくる方はいらっしゃるだろうか。Base of the Pyramid、つまり人口ピラミッドの下層の方々を指す言葉だ。定義は組織によって様々であるが、イメージは東南アジアの貧しい暮らしをしている方々である。

WEF(2009) の定義:年所得3000ドル以下、一日8ドル以下​
Prahalad(2002) の定義:年所得730ドル以下、一日2ドル以下    ​

本書では、従来のBOP論とは距離をおきつつ、現実に即したフィールドワークを交えたBOP論を語っている、とっても興奮する本である。もし貧困層を対象としたビジネスをしつつ、彼らが豊かになる…ことに胸が熱くなる方がいたらまずグラミン銀行について調べることをオススメする(JICAの記事リンクをそっと埋め込む)。

3冊目:クレイトン・クリステンセン他著『イノベーションへの解』

イノベーションのジレンマを著した偉大なるクリステンセンの著作である。商学徒であればクリステンセンは一度は手にしておきたいところだが、結構しっかりした専門書なので、最初一人では手が伸びにくいかもしれない。しかし、井口ゼミではみんなで輪読できるので安心、安全。直にこういった専門書も一人で勝手にEDMを聞きながら楽しみながら読める力がつく。

4冊目:小田切 宏之著『イノベーション時代の競争政策』

イノベーション!ときくとシリコンバレーなどの華々しい何かを想像しがちだが、イノベーションに欠かせないのが知財戦略である。イノベーションを起こしても特許で法により守らなければ誰しもが模倣し放題、せっかく発明したのに誰かにパクられて終わりである。本書を通じて、重要無形資産である特許に関する理論やそれを取り巻く様々な問題を議論した。

5冊目:浦田 秀次郎 ほか著『躍動・陸のASEAN、南部経済回廊の潜在力』

「チャイナ・プラスワン」を知ってる方はいっらしゃるだろうか。一応リンクを入れておくが、人件費が安いから何でも生産拠点を中国においていたけど、よく考えたら政治リスクとか色々あるな?じゃあ他の国に移設しよう、ということである。これのタイバージョンが「タイ・プラスワン」である。タイの場合は政治リスクというよりは人件費が高騰、2011年洪水などが要因になっている。本書の副題が「メコン経済圏」となっているのは、タイからの移設先がまさしくメコン川流域の国々になっているからである。移設に伴い交通インフラが整い、ますます経済が活発に…ということである。

※Amazonのリンクを貼ったのでこんな高い本いっぱい買えないよと思った方!大丈夫、たしかゼミ費?なるもので賄われていたのでこれらに一銭も出していない。

質の高いアウトプットには質の高いインプット~巨人の肩に乗る練習~

井口ゼミは三田論だけではなく卒論にも注力している、まぎれもない「ちゃんと学問をやる」ゼミである。しかしただの大学3年生の人間がいきなり「ちゃんと学問」をやれるわけがない。なので、まず練習が必要なのだ。それが輪読である。

学問には「巨人の肩に乗る」という言葉がある。論文はまず先行研究を紹介してから、仮説構築を行うが、まず自分の研究テーマを絞るためには偉大なる先人の知識にアクセスし、吸収する必要がある。

春学期の輪読は、ゆくゆくは自分の研究のために一人で専門書や論文を読み込むための練習である。まずは必要な知識をつけ、そして読み方を身に着け、研究テーマの膨らませ方を知る。

最初は「えー!こんなの読めないよ」と思うかもしれない。

しかし、自分で要約し、説明資料を作成し、説明し、議論をファシリテートし、とやれば段々慣れてくるものである。まず全力で挑戦し、井口教授の優しくも鋭いコメントに自分の至らなさを勉強し、学友の発想の豊かさに驚愕し、学問を通じた成長と、学問を通じた一生の友を得ることが出来るのである。

学問を通じた一生の友との旅行記はTwitterにて発信中!!


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