テスト

「テストで良い点取りなさい」
ずっとそう言われてきた。小学生の頃も、中学生になっても、高校生になってからなんか入試に向けて良い点数を取ることが全てかのように耳にタコができるほど、足が八本に増えるほど、命の危険を感じると墨を吐くようになるほど、ずっとずっと言われてきた。

幸い高校の中ではテストの順位はずっと上位だった。先生からは一目置かれていた。周りからも評価されていた。そうして、テストで良い点を取れば褒められ尊敬されるから、何をやってもいいと思っていた。

提出物なんかほとんど1度も出さなかった。
「だって、テストで点取れるから」
先生に怒られたらそう言っていた。先生はいつもテストで点が取れるようにと言ってくるから許されると思っていた。ある先生は
「そういう問題じゃないんだよ!いずれ困るぞ」
と僕を叱っていたが気にもとめなかった。内申を大学入試で使わないからいいんだよ、と。

校内テストはトップ、模試の結果もトップだったから学校内選抜も通って海外研修に数回参加した。北大研修にも何度も参加したし、北海道インターナショナルフェアで高校として優秀賞も取った。志望校も基本A判定かB判定で志望者内で1位を取ったこともある。何度も褒められた。何度も尊敬された。「こいつはひと味違う」そう言われてきた。

一発勝負のテストで良い点を取ればずっと褒められてきた。良い経験もできた。大学入試もテストで良い点を取ればいいだけだったから、第1志望には受からなかったものの、他の受験校は全て合格。全て第1志望のようなものだったからうれしかった。合格基準からプラス50~60点で割と上位の方で合格した。校内で今の大学に受かったのは自分だけだった。全国的にも名前がある程度知られている大学だから神童のように扱われた。親も先生も友達もみんなすごいと言ってくれた。

テストで良い点取れさえすればいいんだ。人生上手くいくんだ。そう思った。

大学生活、地元を出たから周りは知らない人ばかり。元々人見知りな自分はなかなか自分から友達を作れずにいた。しかしオリエンテーションではグループで仲を深め合うように言われ、授業も初めの頃はグループワークが多かった。しんどかった。もっと学術的な内容を初回からどんどん進められると思っていた。その理想とのギャップに加え、当時深夜のコンビニバイトを始め生活リズムが崩れてきていたのが合わさり、授業をサボりがちになった。
「僕はテストで良い点を取れるから大丈夫」
そう思っていた。

現実は甘くなかった。単位なんかほとんど取れていなかった。毎回取られる出席、毎週出されるレポート、一切やってこなかったのだ。当然の結果である。
信じたくなかった。だって自分はテストで良い点取れるんだから。この大学に上位で合格してるんだから。おかしい。こんなはずじゃない。俺はこいつらより上なんだ。いつも褒められてきた。テストで良い点取れさえすればいいはずなのに。

大学に行かなくなった。現実から目を逸らしたかった。理想と現実のギャップに耐えられなかった。

どこで間違えたのだろう。今も大学にはほとんど通えてない。ずっと点さえ取れればいいと思ってきた。あの時、あの言葉に耳を傾けていれば。

「そういう問題じゃないんだよ!いずれ困るぞ」

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