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京セラ:コンサルとクリエイティブのワンチームで生まれる唯一無二の価値

京セラ株式会社(以下、京セラ)の「ハウスマイルe」は、太陽光発電・蓄電システムを初期費用0円で導入できるエネルギーシステム定額サービスです。

次世代のエネルギーソリューション事業として立ち上げたこの新規事業には、株式会社みずほ銀行およびみずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社(以下、みずほ)とイグニション・ポイントが深く関わり、その事業化とブランディングをサポートしています。

今回は、京セラ、みずほ、イグニション・ポイントの主要メンバーによる座談会を通じて、このプロジェクトの価値創造のプロセスを詳しく紹介します。

話し手
京セラ株式会社 エネルギーソリューション事業部
住宅みらい推進部 責任者 岩田洋平氏、
みらい創作課責任者 佐藤順平氏、
DXシステム課プロモーション係責任者 田簑裕美子氏

株式会社みずほ銀行
京都営業部 営業チーム 部長代理 瀧聡志氏

聞き手
イグニション・ポイント株式会社 コンサルティング事業本部
エクスペリエンスデザインユニット シニアマネージャー 坂本、
シニアエクスペリエンスクリエイティブディレクター 武田、坪井


課題──ハウスマイルeの認知獲得と、エネルギーソリューション事業部のコンセプト明確化

ハウスマイルeのサービスブランディング

2023年10月、京セラが新たにローンチした太陽光発電を基軸とした定額制エネルギーサービスハウスマイルe。当プロジェクトをリードした京セラの岩田氏は、当時の取り組みを振り返ります。

岩田氏「京セラはもともとメーカーですが、価格競争の激化などを背景に、『モノ売りからコト売りへ』というスローガンのもと、定額制サービスを開始しました。

通常、太陽光発電を用いた再生可能エネルギーによる電力販売には、発電所を設置する必要があります。その手段の一つが、ハウスマイルeという定額サービスです。太陽光で発電した電気をお客様自身が消費しつつ、余った電力は京セラが買い取り、当社の工場などで活用します。これにより、再生可能エネルギーのエコシステムを構築します」

▲ 京セラ 岩田洋平氏

支援側で携わったみずほの瀧氏は、

瀧氏「京セラさんの企業価値を向上させるため、みずほグループ一体となり、日々ご提案活動を行っています。今回は、みずほリサーチ&テクノロジーズと連携し、本プロジェクトのビジネスモデルの設計、事業化に向けた販売戦略の立案、事業計画の策定などの支援を行いました」

イグニション・ポイントは、京セラのサービス開始に向けてのブランディングやプロモーションのパートナー候補として瀧氏からのご紹介を受け、本プロジェクトの事業化決定時にジョインしました。イグニション・ポイントのプロジェクトマネージャーを務めた坂本は、当時を次のように振り返ります。

坂本「ご紹介を受けた際は、まだハウスマイルeという名称がなく、『消費者やビルダーへのプロモーションがしたい』が当初のご依頼内容でした。提案や議論を重ねるうちに、京セラさんにまず必要なのは『プロモーション案』ではなく『新サービスのブランディング』であるということが明確になり、私たちはブランディングのご支援で参画しました」

ハウスマイルe ブランドサイト

エネルギーソリューション事業部のブランディング

ハウスマイルeの価値を明確にした上で、その価値を社内外に伝えるには、エネルギーソリューション事業部自体のブランディングも同時に進める必要がありました。

坂本「社内外で共感していただける事業コンセプトを作るには、まずエネルギーソリューション事業部が未来に向かって何を目指すのかという、根本的な部分を明確にすることが重要だと考えました。この事業の意義を社内の複数の事業部で共通認識として持ち、社外のパートナーや生活者にもしっかりと伝えるためには、事業部全体のブランディングが不可欠でした」

プロモーションや販促を担った京セラの田簑氏は、サービスと事業部で両方のブランディングが必要だった理由を次のように説明します。

田簑氏「京セラの太陽光パネルには認知がありますが、定額制サービスとしての認知はまだ不足しています。このサービスの事業展開を担当するエネルギーソリューション事業部にとって、『モノ』ではなく『コト』としての認知を獲得するには、事業部自体のブランディングも非常に重要です」


▲ 京セラ 田簑裕美子氏

サービスと事業部の両方のブランディングを通じて、認知度と事業の拡大を図る。この課題解決のために、各パートナーが連携し、ブランディング支援を行いました。

▲ エネルギーソリューション事業 ブランドサイト

決め手──表層的なクリエイティブやデザイン制作に終始しない事業理解の深さ

先述の通り、そもそもイグニション・ポイントにお声がけをいただいたきっかけは、みずほの瀧氏からでしたが、なぜイグニション・ポイントを選ばれたのでしょうか?

瀧氏「本プロジェクトが2022年から始まっていた中で、京セラさんの企業としての想いを形にすることが、サービスの差別化につながるのではないか、との議論をずっと続けてきました。しかし、プロモーションの打ち出し方など私たちにはクリエイティブのノウハウがほとんどありませんでした。

そこで、京セラさんの社内向けUI / UX勉強会などですでにサポートしていただいていたイグニション・ポイントさんにご相談したことが最初のきっかけでした」

▲ みずほ銀行 瀧聡志氏

勉強会を通じて、当社の介在価値をすでに感じてくださっていたそうです。

瀧氏「共に作り上げる姿勢を非常に感じました。ブランディングのフレームワークやモデルを導入しつつ、『みずほなら、京セラさんならどう考えるか』と、私たちと一緒に形作ろうとしてくださって。京セラさんが求めていた『共に作り上げる』を達成できそうだとも感じました。

さらにもう一つ、事業理解への姿勢の貪欲さに驚かされました。様々なコンサルティング企業がある中で、必ずしも事業に対して専門性が高い企業ばかりとは限りません。しかし、イグニション・ポイントさんは、サービスの特徴や業界の特色、競合の分析など戦略の部分もしっかりキャッチアップしながら提案を作り上げるなど、クライアント理解が深く、戦略とクリエイティブの両方を兼ね備えている点がとても魅力的です。本当に一緒にやって良かったです」

その点について、岩田氏も同意します。

岩田氏「表面的なデザインやクリエイティブにとどまらず、事業に対して一歩踏み込んだ提案をしてくださいました。最初は価格に対して少し不安もありましたが、その価値を十分に感じることができましたし、他社の提案と比べても内容に確かな強さがありました。

例えば、提案内容に対してメンバーにも評価をつけてもらいましたが、イグニション・ポイントさんの提案内容は点数が高かった。もちろん、クリエイティブというのは好みの部分もあるのですが、それを差し引いても、イグニション・ポイントさんの提案は全体的な満足度が高かったです」

エネルギーソリューション事業部のブランディングを担当した京セラの佐藤氏は、

佐藤氏「一般的なコンサルティングファームや広告代理店は基本的に、まず予算を聞いてきて、予算いっぱいの提案をされることが多い中、イグニション・ポイントさんは、私たちの意図を汲んだ上で必要なクリエイティブを提案してくださった。そもそもの提案内容のレベルが違うと感じました」

▲ (左)京セラ 佐藤順平氏、(右) 岩田洋平氏

こうしてイグニション・ポイントは信頼を得て、ブランディング支援の取り組みをスタートしました。

取り組み──当事者意識、一人ひとりと向き合いワンチームで生み出す価値の定義

イグニション・ポイントは、プロジェクトマネージャーの坂本、サービスブランディング担当の武田、事業ブランディング担当の坪井・木下を中心に支援を進めました。

岩田氏「イグニション・ポイントさんとの最初の接点は、スマートフォンのUI/UX設計に関するレクチャーから始まりました。そこからプロジェクトが進展する中で、お客様への提供価値やその価値を効果的に伝えるための制作物について、密なコミュニケーションを取りながら進めていきました」

ハウスマイルeのサービスブランディングの支援を担当した武田は、プロジェクトの進行について以下のように述べています。

武田「商品やサービスの価値を明確にするために、ブランドの提供価値や機能価値、情緒的価値、人格などを定義するフレームワークを使用しました。当初より、皆さんの想いが強く、方向性をまとめるのに時間がかかりましたが、ファシリテーションを進める中で次第に形が見えてきました。京セラさんのプロダクトの圧倒的なクオリティが基盤にあることを理解し、その信頼をもとに体験やサービスといった『コト』を提供できると確信しました。

ハウスマイルeというエンドユーザーにとって分かりやすいネーミングが決まった瞬間から、プロジェクトが一気に前進したと感じています」

どのような点で、イグニション・ポイントは介在価値を発揮したのでしょうか。

武田「自分の意見を押し付けるのではなく、コンサルティング事業のクリエイティブ職として、京セラさんやみずほさんの皆さんの言葉を引き出し、それを形にすることに注力しました。

いい意味で京セラさんは民主主義の文化。皆さんが同じ声の大きさで発言をされます。通常、決定権を持つ方を中心に議論が進むことが多いですが、今回は一人ひとりの意見を丁寧に咀嚼することが求められました。最初は戸惑いもありましたが、次第にこの文化の素晴らしさに気づき、話を整理していきました。その結果、チーム全体が納得する方向に進むことができたと感じています」

▲ (左)みずほ銀行 瀧聡志氏、(中央)イグニション・ポイント 武田、(右)イグニション・ポイント 坂本

一方、エネルギーソリューション事業部のブランディングを担当した坪井は、

坪井「ワークショップを通して伺えた事業に対する想いや情熱が本当に素敵で、できるだけ丁寧に言葉を汲み取りながら、当社の木下と一緒に形にしていくことに集中しました。
上手に作る、魅せることも大切ですが、京セラさんの皆さんの想いを正しく表現し、情熱が伝わるようにすることにフォーカスし続けました。

想いや情熱が次第に制作チームの皆へも伝染されていく様はクリエイティブの人間として感動的でしたし、キャリアの中でも思い出深いプロジェクトになりました」

岩田氏「坪井さんは京セラメンバーの考えを深く理解し、デザインにそのエッセンスを反映させるために尽力されました」

坂本「ワンチームで進めていく意識の強いプロジェクトで、イグニション・ポイントが第三者の立場的に提案するというよりも、当事者として皆で進めていく感覚でした。私はその過程で参加する誰もが取り残されないようにケアしながら、プロジェクト全体を楽しくすることを意識して、武田と坪井に任せていました」

一人ひとりが真剣に取り組む京セラのカルチャーだからこそ、みずほとイグニション・ポイントはより一層真摯に向き合う。その相乗効果により、ワンチームとして良い関係を築けました。

▲ イグニション・ポイント 坪井

成果──社員のレベルが上がり、想いが言語化され、持てるようになった自信

今後も再生可能エネルギーのさらなる普及を目指して活動を続けるハウスマイルe。今の時点で、イグニション・ポイントをどのように評価していただいているのでしょうか。

岩田氏「イグニション・ポイントさんと事業ブランディングのお仕事ができて、本当に良かったです。当社のメンバー20名ほどが参加したワークショップで、事業に対する各人の想いがカタチになりました。ノウハウ豊富な坂本さんに仕切っていただき、あの取り組みのおかげで事業部全体が一体となり、スイッチが入ったと感じています。

本当に勉強になりましたし、関わったメンバーを中心に社員のレベルが向上したと実感しています。事業理解の方法を示唆していただいたことで、考えるきっかけを得られ、ミッションやビジョン、事業目的についても皆が一貫して答えられるようになったと思います。

また、現在進めている協業パートナーとの打ち合わせで使用している提案書も、イグニション・ポイントさんやみずほさんと一緒に練り上げた内容が反映されています。その提案がスムーズに通っていることもあり、この体制で進められたことに非常に満足しています」

佐藤氏「共創のパートナーがイグニション・ポイントさんで本当に良かったと思っています。坂本さんのコンサルタントとしての役割が欠けていても、クリエイティブの武田さんや坪井さんの役割が欠けていても、プロジェクトの成功は難しかったでしょう。一緒にお付き合いをしていく上では両方が必要なので、クリエイティブだけを提案される関係性では生まれなかったアウトプットが生まれたし、今回の体制はとても良かったと思います」

田簑氏「当初の提案から、他社と比べても戦略部分の厚みが全く異なり、自分たちだけでは到達できなかった境地までポテンシャルを引き出してもらいました。これは、クリエイティブとコンサルティングの両方を提案していただいたからこそだと、プロジェクトを通じて実感しました。普段は秘められている京セラメンバーたちの想いが言語化されて、自分たちの仕事に対する愛着や自信が深まったと感じています。

制作した事業ブランディングのブックやムービーも好評で、営業メンバーからは『早く使いたい』という声が上がるほどです。未来の方向性を示すものを具体的な形で手にすることができ、ここから先へ進むための基盤を築けたと思っています。もしこれがクリエイティブ専業の代理店であったなら、アウトプットが期待に応えきれない可能性もあったかもしれません。現在も、ランディングページのアドバイザーとして協力いただいており、このプロジェクトで得た学びを今後どのように発信し、成果に結びつけていくかを考えながら継続していきたいと思います」

どんなパートナー企業との関係性が理想なのか、最後に質問してみました。

岩田氏「人間でも、企業単位でも、見えている世界の視野角は違います。京セラは歴史のある企業ですから、偏ったものの見方も持っているかもしれません。だからこそ、外部からの視点をもとに顧客と支援者の立場を超えて向き合い、譲れない部分を正面から発信してくれるパートナーだと我々はやりやすいですし、ワンチームになれるパートナーが理想的な関係だと考えます」

戦略立案や事業理解だけでは終わらず、表層的なデザインやブランディングだけでも終わらない。両方の視点を併せ持つアプローチが、今回のプロジェクトの成果に結びついた好事例です。


(記載内容は2024年8月時点のものです)

取材・文:山岸 裕一


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