見出し画像

楽食探訪:庶民の「ステーキ」を超庶民が体験する。

その情報に、私は「ヤッター!」と興奮した。

やや気軽に行ける場所に、
あの憧れの存在がやって来たのだ。

テレビで観て、絶対に行きたいと思っていたお店。

『いきなり! ステーキ』。

都会の人は「な〜んだ」と思ったかもしれないが、
山奥に住んでいる私には、夢のような出来事なのだ。

しかも、庶民の夢を叶えてくれるお店だ。

ステーキだぞ、ステーキ!

と、子どものようにはしゃいでしまうのは、
私が貧乏だからである。

当然、普通のステーキ屋さんになど行けるはずもなく、
ステーキへの憧れは人二倍強い。

ステーキガストやカウボーイ家族には
行ったことがあるが、明らかに安っぽい味なので、
心は満たされなかった。

いきなり!さんは、いつかは行きたい、
必ず行ってみせる、と誓ったお店だ。

それが、こんなに早く実現するとは。

早速、嫁はんとツアーを組んだ。

大袈裟だが、
「いきなり! ステーキ ファーストコンタクト
 ミッションツアー」と言っても良いくらいである。

♪ルンル ルンルン ルンル ルンルン〜♪
と、わけのわからない喜びミュージックを口にしながら、
2時間半の車の旅。

掛かった時間に驚いた人もいるだろうが、
私たちには普通のことだ。

高速を使えば速いが、もったいないし、
その分を食べ物にまわすことができる。

で、到着。

昼前なのに、すでに行列。

初めてのお店なので、私は基本型を注文。

ワイルドステーキ200g
(ランチはライス・サラダ・スープつき)。

嫁はんは、なんと、アンガスビーフサーロイン200g。

贅沢だ。
しかも、このメニューにはランチセットがないので、
ライス&サラダを追加しやがった。

ワクワク! ワクワク!

ジャ、ジャーンッ!

目の前に現れたその方は、ジュージュー音を立てて、
私を金持ちの世界へと誘う。

トレーを持って、近くのカウンターへ。

そこには、バターにニンニクと特製ソースを練り込んだ、
オリジナルバターや塩、胡椒、わさび、
ニンニクなどが置かれ、
自分で好きなものをステーキに掛ける。

ここは、お店のお奨めであろう、
オリジナルバターをのせて、空いた席へ移動した。

この店舗はフードコートにあるので、どこでも座れる。

都会のいきなり!さんは、立ち食いが多いと聞くが、
その点では楽である。

さぁ、いざ、遥かなる宇宙へ。
そのくらいの気持ちである。

嬉しいな! 嬉しいな!

あと数年で年金暮らしの
おっさんの感情とは思えないだろうが、
それほど憧れていた。

まずは、切ったひと切れをパクッ!

おおおぉぉぉ〜〜〜〜〜肉だ!
当たり前だけど。

安いから、ちょっと固めだけど、これくらいは
「適度な噛みごたえの、肉らしい肉だ」
で済ませることはできる。

旨い! 旨いよぉ〜!
これがステーキだよ。

この瞬間、私の人生は変わった。

この先、私の食生活にステーキが参入したのである。

年に数回。いや、一度かもしれないが、
ステーキを食べることができる。

なんという幸せなんだ。
これが、豊かさというものなのか。

バカにするなら、すればいい。
それでも、私は幸せだ。

で、隣のサーロインをもらって、パクッ!

ゲゲゲッ!
こっちの方が旨い。

やっぱ高い肉は、柔らかくて旨いや。
クソッ!

でも、私は満足だ。
この日を一生忘れないだろう。

庶民の夢を叶えてくれるいきなり!さんに感謝する。

次は、いつ行けるだろうか。

という幸せな体験をしてから、
すでに数年が経った。

いきなり!さんは、評判も悪くなり、
お店も次々に潰れ、私が行ったお店も閉店。

もう行けないし、行かないだろう。

ちょっと寂しい。

よろしければサポートをお願いします!頂いたサポートは、取材活動に使わせていただきます。