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なぜ、“1個850円の卵”に予約が殺到するのか?

埼玉県・秩父にある養鶏場には、1個850円の卵があると言う。1パック850円でも高いと思うが、1個850円である。この卵に予約が殺到し、最長2ヵ月待ちになることもあるらしい。

想像をはるかに超える価格に驚くばかりで、失礼ながら、何か「からくり」があるのではないかと思ってしまう。

そんな高額な卵を生む鶏は、シャモを主体とし、数年かけて改良したものである。エサ、水、飼育方法にこだわり、1000坪の敷地に2000羽のみを放し飼いにしている。

その中でも、この高級卵を生む鶏は150羽程度である。希少性が、高額な理由なのだろうか。高級な卵を作っている養鶏場は他にもあるが、ここまで極端な価格にはしていない。

一般に広く知られる「ヨード卵・光」は、1個60円程度。「天美卵(てんびらん)」「特選太陽卵」「伊勢の卵・赤玉」という、“卵界”で知られたものは、100〜130円。

青い卵として有名な「アローカナの青い卵」で、160円程度。そして、「神果卵(しんからん)」「身土不二(しんどふじ)・青玉」というものは、330円程度。いわゆる“高級ブランド”である。

1個850円は、そんな有名ブランドをもはるかに突き放すほどの価格である。なぜ、そこまで高額でも売れるのだろうか。その理由を調べてみると、中途半端なこだわりではないことがわかった。

まずは、エサの違い。とうもろこしを主体に、魚粉、海藻、天然ミネラル、カルシウム、漢方薬など、25種類をブレンドしたものを与えている。

ここで使っている天然ミネラルとは、2億年前から海底に堆積している天然成分のことで、カルシウム、リン、マンガン、コバルト、マグネシウムなどを含有している。

次に、水。秩父という自然豊かな土地の湧き水や源流水などを与えている。汲み置きをせず、常に新しい水を飲ませている。

そして、広大な土地とストレスのない飼育数。鶏の卵は、エサや飼育環境が味に大きく影響するので、まさに理想的な飼育方法だと言える。

徹底的なこだわりによって、1個850円でも売れる卵が作り出されているのである。こだわり抜いた卵があって、高くてもそれを求める消費者がいる。

需給のバランスが合っていて、優れたビジネスモデルとして成立している。

だが、私には疑問がある。本当に850円の価値があるのか。実際に食べてみればわかるのかもしれないが、私は食べていない。価格に疑問があるので、食べる気もない。なので、味について批判するつもりもない。

「本当に美味しかったとしても、1個850円は高すぎる」という主観のみである。

リピーターはその価値に納得しているから、買い続けるのだろう。だが私は、リピーターに尋ねてみたい。「1個20円の卵と850円の卵とでは、そこまでの違いがあるのか」と。

そう思うのは、私の経験と雑誌による実験データからである。私は、烏骨鶏やヨード卵などと1個20円の卵を食べ比べたことがあり、その違いをさほど感じなかったのである。弾力などの食感はそれぞれ違ったが、味の違いはほとんどわからなかった。

雑誌の実験でも、さまざまな調理法による味の違いを調べていた。ゆで玉子にすると、多少の違いはあったものの、他の調理法ではまったくわからなかったのである。こうしたことから、私は高い卵に対して懐疑的なのである。

消費者が、“高級品”という言葉に惑わされているのではないか。手に入らないことに価値を感じ、味のレベルを押し上げているのではないか。

「希少なものは高く売れる」。マーケティング的には、どこにでもある事例である。高級ファッションブランドと同じだと捉えれば良いのだが、どうも腑に落ちない。

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