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【小説】 小さな一歩の繰り返し。


 燃え尽き症候群は一瞬だった。燃え尽きたはずなのに、すぐに火がついた。全国ツアー翌日から、私は新曲の制作に入った。とはいえ、常に新曲は作り続けているんだけど、レコーディングが念頭に置かれると、少し様子が変わってくる。ある意味、いつも蓄えている新曲は習作と言ってもいい。まあ、よく聞くデモテープってやつかな。その程度。マネージャーに盤にしてもらう許可をもらうためにも、そのデモのクオリティを上げなければいけなくなる。単純にパソコンとにらめっこする時間が長くなる。

 曲作りをするようになって二、三年しか経ってないけど、作曲に対する抵抗はスッカリなくなった。毎日、何かしらのフレーズを作って、頭の中で編集作業、ツギハギ状態でもなんとかまとめ上げる。正直、誰だってできるよ。私でもできるんだから。でも、みんなドロップアウトしてしまう。地味な作業だから、向き不向きがあるのかな。

 クオリティなんて低くて当然、とにかく最初は完成させるところから。
 出来たという実感、認識が自分を前進させてくれる。
 小さな一歩、小さな一歩。その繰り返し。

 

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