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0201.それはあなたにふさわしい


2月になると、街にチョコレートが溢れて嬉しい。

バレンタインの思い出はいくつかあるけれど、なんだかんだ友達と教室で「友チョコ」を交換するのが一番楽しかったなと思い返す。
学生から遠く離れた最近は、Instagramでよく見るたべっ子どうぶつの乗ったブラウニーや雲の形のマカロンを見て「自分が学生だったなら意気込んでこれを作っていただろうな」「ああでも絶対被るだろうから、他のにしたほうがいいだろうな」などと妄想するのが楽しい。

そんなことを思いながら仕事から帰っていると、乗り換え駅にある百貨店の入口にバレンタインフェアの看板が出ているのを見つけた。
好奇心に負けたのでそっと潜入し、スイーツ売り場へ向かう。

きらきらとガヤガヤが混在している店内は、既にチョコレートでいっぱいになっていた。気のせいかもしれないけれど、いつもより甘い匂いがしている気がする。
ゆっくりとショーケースを覗きながら歩くと、ひとつのショーケースの真ん中で、赤いハートのかたちをしたチョコレートがちょんと座っているのを見つけた。
綺麗で、とっても丈夫そうな箱。傍らには「予約受付中」のポップ。添えてあるお値段に些か驚いてもう一度目線を戻すと、エナメルのようにつやつや輝いているその一粒のチョコレートがとても誇らしげな顔をしているように見えた。


もし私がこのつやつやチョコレートを食べるとしたら、絶対にすっぴん部屋着なんかでは食べられない。むしろ箱も開けられないな、と思う。もしそんなことをしたらチョコレートが逃げてしまいそうだ。

この綺麗な赤と向き合えるように、ちゃんと綺麗な服を着てメイクをして髪も巻いて、お気に入りのカップで紅茶を入れて…そこからやっと箱に手を伸ばす。ソワソワしながら。


人でも、物でも、チョコレートでも「自分に価値があることを知っている」モノを見るのは、よい。
それに触れようと考えるときに初めて認識できる自己がある。


今年はなにかひとつ、見るだけで背筋が伸びるようなチョコレートを買おうかと思う。


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