0101.前髪改革
最近、前髪改革に勤しんでいる。
というのも今まで自分のトレードマークのようであったぱっつん前髪が年々似合わなくなってきた(ような気がする)からだ。
「おでこを見せることは下着を見せることと同じくらいなんですよ!恥ずかしいんですよ!」
ふざけてこんなことを言ったことも幾度となくある。そしてそれは割と本心だった。物心ついたときから眉の上で切り揃えられた前髪はいつしかそこにあって当たり前のものになっており、ないと落ち着かないものになった。
中学の頃クラスで流行ったポンパドール。家でこっそり試したこともあったけれど、デコ丸出しの自分がどうにも落ち武者にしか見えなくてそっとヘアピンを抜いた。
高校の頃雑誌で見たシースルー前髪。一度美容院でやってもらったけれど、OKバブリーな香りがプンプンしてしまい毎晩前髪を引っ張ったりしてひたすら元通り伸びるのを待った。
そんな感じで、色を変えたり長さを変えたり巻いたり伸ばしたりすることはあっても、頑なに前髪だけは変えずに生きてきた
んだけれども
なんだろう、少し前からとても前髪の居所が気になるのだ。今までのようにお決まり位置で切ってもなんとも違和感がある。鏡の前でハサミ片手に眉をしかめていると、昔共演させていただいた先輩が仰っていた言葉がぴゅんと脳裏に浮かんだ。
「特に女の人はねー、25歳越えたくらいで似合うメイクも髪型も色も一気に変わるんだよ。ほんとに」
もしや、あれなのか。「来た」のか。
そのまま鏡の前で前髪をいじくり回し、おでこを出したり前髪を薄く取ってみると、なんとなくしっくりくる。衝撃。おもしろい。なんでだ。
たかが前髪。されど前髪。
私にとってこれは結構衝撃だったので、「これまでみたいに」とか「いつもの」とか、そういう小さな身の回りの慣れをなんとなく更新しながら生きてみよう、という抱負を持って今年を生きることにした。
慣れから脱却するのは勇気がいるけれど、同じくらい、それ以上に楽しい。見慣れた窓に新しいカーテンをつけるように、おでこに陽のひかりを取り込んで2021年を過ごしてみようと思う。
もし稽古場や劇場で会った私が落ち武者やバブリーガールになっていたら、ああ改革中なのねと思って静かにそっと笑ってください。
どうか、今年も私たちにとって素敵な年になりますよう。
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