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移住先の離島で土着文化の入り口に立つ

▪️ウタサ祭り GEZANの動画を漁り辿り着いた先で

民族衣装に身を包むアイヌの人々と、真っ赤な衣装を着たバンドの演奏。音楽的、文化的、そして精神的な交わり。

YouTubeのGEZANライブ -ウタサ祭り2023- が時を経つごとに沁みてきている。

ウタサ祭りは釧路市主催のアイヌ文化体験のためのイベントで、今年が4回目の開催。

北海道の東部に位置する阿寒湖には、約120人のアイヌ民族の方々が暮らすコタン(アイヌ語で集落の意味)があります。 夏は30℃を超え、冬は-20℃にもなる、きっぱりとした阿寒の季節のめぐりの中、アイヌ民族の歌や踊り、木彫りや手仕事を生業としてアイヌコタンの人々は生活しています。 2019年、アイヌ新法の成立により、日本の先住民族であると明記されましたが、その歴史、背景の認知が、この国にはまだほとんどありません。

阿寒ユーカラ「ウタサ祭り」の「ウタサ」とは、アイヌ語で「互いに交わる」という意味を現しています。このお祭りでは、アイヌ文化の担い手たちと国内外のアーティストたちが共鳴しあい互いに交わり、認め合い、まだ見たことのないまったく新しいライブステージ時間を共有、提供することを目的にスタート。

ウタサ祭りオフィシャルサイト

アイヌの人たちの独特のリズムや抑揚、何を言っているかわからないけれど聴いていてとても気持ちの良い歌声。そこに加わるGEZANの演奏。ヘビーメタルとオーケストラの融合がむかし流行ったが、ここにあるのは日本のロックとアイヌ音楽の交わり。新しいようで、どこか懐かしい気持ちになる不思議。夜中に何度も繰り返し再生し、見入った。

▪️天神祭 家島で遭遇しただんじり船と共同体により継承されてきた祭り

今年の春に兵庫県の離島に越してきた。姫路港から高速船で30分の場所に位置する家島と呼ばれる島に住んで、宿の管理人をしている。5.5 ㎢ほどの大きさの島におよそ2000人が住む。主な産業は砕石・海運業と漁業で、ガット船と呼ばれる船が海に浮かぶ風景は、瀬戸内の他の島とは一線を画している。

この島で春から夏の終わりまでを過ごした中で、土地に根付く文化の面白さ、そして日本の土着の文化に魅力を覚え、惹かれ始めている。

きっかけは毎年夏に開催される”天神祭”。だんじり船と呼ばれる船の上で、獅子舞が踊る2日間。200年に渡り継承されてきたお祭りだ。

海の安全などを祈り毎年七月に営まれる神社の例祭。国土交通省の「島の宝百景」に選ばれた。宮地区の宮浦神社で採火された御神火が提灯行列で家島神社に届けられ、絢爛豪華な壇尻船(だんじりせん)が祭りを彩る。御社殿などで披露される真浦地区の獅子舞は県の無形文化財。二百年近くもの間、途絶えることなく引き継がれてきた。

<ひょうご社寺巡礼2/ 神戸新聞社・編 神戸新聞総合出版センター 2012年出版 p130>

天神祭の1週間くらい前から、いつもと違うそわそわした空気と熱気の予兆みたいなものを町に感じた。コロナ禍で中止していた花火が今年は復活する、そんな話しをするご近所さんは嬉しそうだ。

本番2日前の予行演習。暮れた空の下で流れる笛と太鼓の音色、目を引く獅子舞の踊り、子どもたちは確かな動きで舞台を動き回り、夏の特別な数日間のはじまりを予感させる。

実際の練習風景 ↑
その模様を感動と共に宿のインスタグラムにあげた。

祭りは、時代とともに神祭りから次第にみて楽しむ、参加して楽しむ方向へと変化してきました。そうした祭りの移り変わりを示す事象として、家島町の家島神社の夏祭りをあげることができます。<中略>当初は神事として神を祀るだけの地味な祭りであったものが、風流化して、芸能をともない、屋台などの練り物が登場する、楽しむ祭りへと変化していったことを物語っています。つまり、私たちが見ている現在の祭りも、絶えず変化を続けていると言っても過言ではありません。私たちが祭りを見るとき、豪華な屋台や躍動的な獅子舞などの現象面に引きつけられます。屋台も歴史をたどっていけば、曳山や置山、そして、自然の山と密接に結びついていたことが分かってきます。それ故に、屋台を見るときに華やかさだけではなく、その背景が分かれば別の視点で祭りを楽しむことが出来ることでしょう。

<播磨の民俗探訪 / 神戸新聞総合出版センター 2005年出版 p236>

▪️天神祭 写真で振り返る各地区の様子と地域の歩み

真浦地区と宮地区で行われた天神祭、2日間の様子を交互に振り返る。

<真浦地区 -初日->

祭りのはじまり ↑
期間中、この動画の掛け声が頭の中でリフレインしていた。なんだかエモい歌声と光景。祭りでは天狗が常に列を先導していく。

真浦地区での実際の踊りの様子 ↑
兵庫県の無形民俗文化財に指定されている。リール動画は島を離れた人たちからも故郷を懐かしむ映像として喜んでもらえた。

<宮地区 -2日目- >

宮の海岸での踊りの様子 ↑
宮・真浦両地区のだんじり船が揃い、それぞれの獅子舞が奉納される。アクロバティックな演目があると教えてもらう。ひょっとこは最後、沖に出る船に飛び乗った。

<再び真浦地区 -祭りのおわり->

地域社会の進行を集める鎮守社の祭りは個人ではなく、共同体により継承されてきました。そして、祭りには地域社会のさまざまな活力が注ぎ込まれ、みなぎる力となって見るものを魅了します。このように、祭りは共同体をベースに行われてきたものであるがゆえに、祭りの諸相をひもとくことによって地域の歩み・歴史が見えてきます。祭りが地域社会にとって大きな意義を持つのは、そこに共同体そのものが反映されているからです。

<播磨の民俗探訪 / 神戸新聞総合出版センター 2005年出版 p238>

▪️終わりに 祭りとは土着文化と現代文化の架け橋なのかもしれない

以上が冒頭のGEZANのライブや、家島の天神祭をみて考えたこと。お祭りというハレの場での体験を通して土着文化は自分の中で共鳴し、ケの日常へと降りてきている。

家島でのつぎのお祭りは十一月の秋祭り。島のことはこちらのページから。

秋祭り:島の豊かな稔りと海上航行安全の願いを込めて、毎年11月2日から4日まで秋祭りが行われます。祭神である蛭子大神が奉られている恵美酒神社は、元慶7年(883年)より以前に建立されたといわれています。
当日は、島内を神興がねり歩き、威勢の良いかけ声が祭りを一層盛りあげます。

姫路市のホームページ 主な年中行事

注:この記事は所属団体を代表するものではなく、個人の見解によるものです

<文責:麻田 景太>

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