見出し画像

もの作りやデザインするのが好きな人にとってはたまらないぐらい刺激的な仕事! ~設計士として働かれている方へのインタビュー~

第五回の建設取材をさせていただきました。
今回は組織設計事務所で働かれているとしを様(X・旧Twitterのアカウント:@1t1s0k8)にお話を伺いました!建築業界で建築士として働かれている方へのお話だったので、建築学生さんはかなり参考になるのではないか・・・と感じております!ではご覧ください!
もし、「これ頑張ってるな」「良いね」と思ってもらえたら、ぜひnoteにスキやシェアをしてもらえたら嬉しいです!

【対象者様の情報】

・その会社で働いて何年目か:現在6年目 
・建築業界に入って何年目か・給料:6年目 500~650万円
・職種:設計職
・働く場所(オフィスか現場か):オフィスの事務所

【インタビュー内容】

(インタビュアー:梅野(以下、U)、今回のインタビュー対象者:としを様(以下、T)とします)

U:本日はこうして貴重なお時間いただき取材を受けてくださりありがとうございます!以前もその建築士の方にお話を伺うことがあったんですけど、現在は不動産業界で建築士として働かれていたり、空間デザイナーとして働かれていたりという方で、設計事務所で働かれている建築士の方にインタビューするのは初めてなのでどんなお話が聴けるのかワクワクしています!
では早速質問していきます!現在の会社に入られて何年目かという部分を教えてください。

T:今、6年目になります。大学院を卒業して24歳から今の会社に就職しています。

U:そうなんですね。ということは建設業界に入られてから6年目ですね。

T:そうです!

U:ありがとうございます。


取材風景1(左からとしを様、梅野)

初期段階の設計から工事の監理まで行える会社


U:では早速、結構ガッツリした内容に入っていきますね。現在働かれている設計事務所はどのような会社でしょうか?

T:はい、僕のところはいわゆる組織設計事務所と呼ばれる会社ですね。建築の設計を主に行う会社です。組織設計事務所というのは、建物のデザインなどを考える意匠設計という分野の他に、構造計算をして構造の提案をする構造の分野と、空調などの機械設備、電気設備等の設備を担当する設備分野の環境設計と呼ばれるところ、その他にコストをマネジメントするコスト部ですとか、現場の工事を担当する管理部、あとインテリア部もあったりします。建築に直接関わるのがそのあたりの部になっていまして、一応組織設計事務所に設計を頼んでいただければ、初期段階の設計から、工事の監理までを一括して行えるというような会社が組織設計事務所と呼ばれる会社になります。会社としては、そういったような体制ですね、仕事をしているというふうな形になります。

U:ありがとうございます。組織設計事務所はそういった感じなのですね。存じていませんでした。

T:そうなんですね。梅野さんは大学院生ですか。学部生ですか。

U:学部生です!

T:そうなんですね。工事っていうのは、まず施主さんという建物建てたいよっていうお客さんがいて、その方が組織設計事務所なり建築士の人に、こういう建物を建てたいんですというご依頼をいただくんですね。
ただ設計職の仕事は、図面を書くお仕事までなんですね。なので、実際に工事を行う会社さんは別になっていまして、工事をしてくれるのはゼネコンさんや、規模が住宅規模だと工務店さんが工事を行います。僕たちは図面を書き、図面をお客さんに納品します。その後、実際に工事を行うゼネコンさんや、工務店さんにその図面を持ってこういう建物を建ててくださいと依頼をします。これが工事を発注する仕組みになってます。その図面を書いてそのまま終わりというのではなくて、建物が図面通りにできているかなど、工事を監理します。監理というお仕事では設計した建物は、基本的に我々で監理も行わせていただくというのが多いですね。そういった意味での監理ですね。「かんり」には「管理」と「監理」があるのですが、「管理」はやっていなくてあくまでも工事までの監理をしています。

U:ありがとうございます。丁寧に説明してくださったので理解できました。今会社の説明をしていただきましたが、木曽さんはどのようなお仕事をされているかを教えてください。

T:はい、僕はいろいろ業種がある組織設計事務所の中で意匠設計を担当しておりまして、主にデザインの部分をやっています。意匠設計は、今までお話した構造設計、環境設計を束ねるような仕事です。実際にお客さんと打ち合わせをさせていただいて、どういう建物がいいのか等の希望を聞き取って、そのご要望に対して構造設計部や環境設計部とかに、こういうことを実現させたいんだけどどうしようかという様なことを相談して案をまとめていくというリーダーシップをとる感じな仕事をします。
今僕がやっているので分かりやすいのが国公立の小学校の建て替えの仕事です。主にバリアフリーへの配慮、老朽化による建て替えを行う学校が多いんです。
お客さんはその地方自治体にある建築に特化した部署に所属する建築の専門の方と教育委員会の方です。こういう現状の小学校の建て替えをしたくて、このぐらいの面積でこういう教室にしたい、こういう仕様で建ててほしいといったご要望をいただいて、そのお話を社内に持ち帰って、構造設計と環境設計に今回こういうご要望の建物だから○○な構造にしてはどうかとか、空調計画はこういう構造ならこうしようっていうのを社内でまとめて、設計図にしていくという様なお仕事になります。

U:ありがとうございます。具体的なお話をしていただいたので、イメージしやすかったです!お客様と実際に関わって、社内の方への橋渡しや、案のまとめも行うという感じですね。

T:そうです!そんな感じです!

建築学生の時からの慣れでキツイのに気づいていなかった


U:では、次の質問にいきます。現在、どのくらいの勤務時間でしょうか。

T:9:30に出社して大体夜の9時ぐらいまで働きます。休憩を除いて10時間〜11時間ぐらい働いてますね。土日は休みです。月の残業時間は50時間前後です。残業時間を聞いても感覚的に分からないと思うんですけど、他の方のインタビューで残業時間は月いくらというのを聞いたりしますか。

U:はい、2024年問題から残業時間の目安というか水準は存じています。なので今お聞きしてやや多いなと感じましたね。

T:ぶっちゃけ、建築の組織設計事務所、設計事務所の中で自分の会社はホワイトな方だと思っています。もう少しやっている事務所はやってるんじゃないかなとは思いますね。これでも少ない方だと思います。

U:そうなんですね。では次にどのぐらいの給料かというのを教えてください。

T:年収500~650万ぐらいですね。

U:ありがとうございます。先ほどのお話に戻るのですが、自分は働いてないので、月50時間の残業がどれぐらいしんどいのかがあまり想像できないのですが、ぶっちゃけしんどいですか?

T:梅野さんって建築学科ですよね?

U:いえ、私は理系なのですが建築学科ではないんですよ・・。

T:違うんですね!!
建築の仕事をしている人って建築学科卒が多くて、在学中は割と授業が長かったり、時間がかかる課題が多かったりするのでその頃からの慣れみたいなのは正直あると思います。
僕も一時期むらがあって、残業時間が20時間とかで済んでいたときもあるんですよ。入社してから50時間前後でやっていたので多いのに慣れていたんですけど、一回20時間とかになると今まであんなきついことをしていたのかとなりますし、そこからいざ50時間に戻るとやっぱりきついと感じます。学生の頃から大変なのでキツイっていうのにあまり気づいてないっていう時期はあったと思いますね(笑)。

U:そんなお忙しい中、取材していただいて・・貴重なお時間をありがとうございます!

住宅課題で作られた模型

建築は終わりのないもの


U:世間の流れ的に残業時間を減らそうという流れになっていますが、建築業界では難しいのでしょうか。

T:どこの会社もそうだと思うんですけど、10年前とかはもっと残業しまくりなところが多かったんですね。でも過労死等の問題が起こって、社会全体的に変えていこうってなったタイミングで、うちの会社は残業時間を減らそうという態度というか意識が大きかったんですね。なので現在は50時間になっていますね。17時ぐらいになると早く帰るという風にはしていってる会社だとは思います。なので、僕の会社は割と残業時間を減らそうという意識がある方だろうなとは感じています。

U:はい、ありがとうございます。納品といった締め切りに間に合わせなきゃいけないとなったら、残業は多くなってしまいますよね。

T:そうですね。なかなか残業なしっていうわけにもいかないですね。というのも、建築というのは他の業界と比べて特殊なところがあって、終わりがないものなんです。
デザインの話というと分かりやすいと思うのですが、デザインはやればやるほど良くなってくという考え方があって、つまり時間をかければかけるほど良いものになっていくだろうという思想でやっていくんですね。建築もデザインの1種なので、そういう部分があります。なので、時間をかけてより良いものを作りたいという人たちが集まっているので、どうしても残業時間が長くなってしまうっていうところはありますね。

U:確かに仰る通りですね。何か良いものを作りたいという気持ちで頑張られているという部分に魂を感じます。建築業界以外の方が建築はブラックだみたいな声ばかりが多いですけど、良いものを作るためにこだわっている熱い思いがあるのが建築業界以外の方にも伝わって欲しいと感じました。

T:そうですね~。法改正や社会の流れでどんどん変わってきてるところもあるので全体的には良くなってきているものの、業界によっては好きで時間かけている人がいるから残業時間がなかなか減らないという実態もあると思っています(笑)。
建築が好きな人って本当に好きなので、何時間でもやれちゃうところがあるんですよね。なので、本当にそういう意味でのブラックだって言ってる人はそれはそれで正しいことを言ってると思っています。それで実際に過労死とかも起きているので、そこは減らしていくべきだろうなとは思いつつ、何か好きでやってる人たちがどこまで抑制できるかっていうと、その建築が好きな人たちは生きがいの1つという気持ちでやっている部分があると思います。趣味ではないけど生きがいというか、そんな感じの部分があると思います。それが建築業界の良いところでもあり、良くないところでもあるように捉えています。

U:ありがとうございます。先ほど建築が好きかどうかといったお話がありましたが、木曽さんはどうですか?

T:建築は好きですね。きついきついと言いながらも、好きだからやってるっていうところは大きいですね。

U:良かったです。


取材風景2(左からとしを様、梅野)

自分の思い描いた建物がその場に立ち上がることの達成感


U:木曽さんのお仕事のやりがいをお聞きしたいです。

T:はい、僕はまだ6年目なので実際に自分がゼロから図面を書いて建物が立ち上がったという経験はまだないんですけど、1年目から担当した物件が実際に立ったり、そこを使ってくれる人がいたりというのを見たときに、自分の思い描いた建物がその場に立ち上がるということの達成感と、こう使ってほしいとか、この建物によってこういう社会になってほしいという何らかの思いを込めてデザインをして設計をしているので、思い通りに使ってくれるとか、デザインによる効果が伝わっていくというのがやりがいですね。
自分が考えたものが世の中に残って、ものによっては100年とかの長生きも起こり得るので、ずっと社会に残っていって人々に使われるっていうのはやっぱり嬉しいし、良いことだなと思いますね。

U:先ほどその小学校の、お話とかありましたけど、それこそ利用してくれる人が多いのでその分思いが伝わる機会自体が多くなって、よりやりがいを感じられそうです。

T:そうですね。小学校ってわかりやすくて僕らも実際に使ったことのある建物じゃないですか。1年間で100人~200人の子たちが入って卒業してっていうのを繰り返して、幼少期で長い時間を過ごす空間なので、その環境というものが子供たちに与える影響は大きいと思っています。もちろん、大枠の教育は現場の先生方によって行われるという部分は大前提です。
わかりやすい話で言うと、いじめがどうしたら起きにくい学校になるかとか、どうしたら先生の話に集中できるような環境を作ってあげられるかとかを考えるんですね。そういう建築の一つ一つのデザインがそこを使ってくれる人たちの過ごす時間に大きい影響を与えているって信じて僕らもデザインをしているので、そういう意味では不特定多数の大勢の人に時間を過ごしてもらえるというのは、すごいやりがいのある仕事だなと思っています。

U:私が小学校6年生の時に、校舎の建て替えがあって卒業寸前に新校舎が完成したことがあったんですね。6年生だから特別にそこで最後の参観授業をしようというのがあったんですけど、新しいというだけでテンションが上がりましたね。あとは、図工の時間に習ったバリアフリーのものを友達と発見して盛り上がったりしました(笑)。お話を聞いて今それを思い出しました。

T:まさにそんな感じです!

U:建築でどうデザインしたら、学校の生活がより良くなるかという部分まで私の想像以上に考えられてできていたんだというのをお話を聞いてより実感することができました。そのお話を聞けて凄く良かったです。今のお話は熱いですね~。


としを様の担当物件が雑誌の表紙になったもの

学ぶことをイメージできるものだったから選んだ


U:では次に建築士を目指したきっかけというのをお願いします。

T:建築学科をなぜ選んだかというきっかけになった話をしますね。母が不動産会社で働いていて、仲介や内見をする仕事をしていたんですね。よく退去後の物件に一緒に付いて行って見せてもらっていたんですね。高いタワマンとかも見せてもらったことがあるんですけど、そういうので家とか建物って面白いなと思うようになりました。元々「大改造!!劇的ビフォーアフター」(以前放送されていたテレビ番組)を見るのが好きだったんですよ。そんな感じで家や建物が好きというのが発端ですね。
そこから高校に進学して得意、不得意とかで理系に進みました。大学に進学する為には学部を選ばないといけませんよね。ここに進学したいというのが決まっていなかったので、どこの学部にしようかなと一覧を見ると建築学部、機械学部、情報学部や物理学部・・・と様々あって、そのラインナップを見て建築学部以外は具体的に何をするのかが思い浮かばなかったんですね(笑)。建築って文字から「建物作る」って分かるじゃないですか。だからここにしようという消去法の様な感じでしたね(笑)。
そこから実際に大学に進学して、建築学科に入った頃はオシャレな建物を作りたいなぐらいにしか思っていなかったんですけど、勉強していく中で建築が社会にもたらす影響等の専門的な勉強をしていって建築って面白いんだなと思いました。
いつも生活しているのは建物の中ですし、都市とか町とかっていうのが生活の基盤になっていますよね。それらは全て建築が関わっているので、それぞれを大学で勉強して、建築って面白いなと感じて建築が好きになっていって、さっき話したことですね。デベロッパーに行こうかな設計に行こうかなとなって、大学院に進学して今は設計職に至るという様な感じですね。

U:ありがとうございます。バックグラウンドをお話していただいて、聞いていて面白かったです。

T:本当ですか?入院した病院の作りが良くて建築学科を選んだという後輩がいたので、自分のは薄いなあと少し思っていたのですが、良かったです(笑)。

もの作りやデザインするのが好きな人にとってはたまらないぐらい刺激的な仕事


U:次が最後の質問になります。建築学生の方にメッセージをお願いします!これ知っといた方がいいよということでも構いませんのでお願いします!

T:建築業界は忙しくて大変なので自分に合わないとなると、ただ辛いだけだと思うんですね。建築学科に進学したからといって、必ずしも建築の仕事に進まなきゃいけないというものではないし、合わないって思ったのなら無理して建築業界に身を置く必要はないかなと思います。ただ、もの作りやデザインするのが好きな人にとってはたまらないぐらい刺激的な仕事だと思っています。お客さんや社内の人と打ち合わせをしていって何か新しいものを生み出していくということは、やっぱりとても楽しいことですし、社会にとって、そこを使う人にとって、良い影響を及ぼすと信じてやれる仕事です。さっきも話したように、建物が完成して使われ始める時の感動は凄く大きいものなので、そこに共感できるという方はぜひ建築業界に入って、もの作りをやっていけたらいいのではないかなと思っております。

U:深イイです!!心に響きました!建築学生で建築業界に進もうか悩んでいる方にとって凄くメッセージ性のあるお言葉ではないかと思います。
私の理解度に配慮して丁寧に説明してくださってありがとうございました!知らなかったお話までお聞きすることができてとても楽しかったですし、勉強になりました!


これを読んで建設業界のリアルややりがいを少しでも感じてもらえたら幸いです!


また取材記事も頑張ってアップしていきますので、繰り返しになりますが、ぜひnoteにスキやシェアをしてもらえたら嬉しいです!最後までお読みいただきありがとうございました!!

〈インタビュー・編集:梅野紗良〉

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?