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「頭の良さ」という囚われ

今回は、少し自己開示気味に、私のダークサイドと、そこから抜け出した話をお伝えさせていただきます。

今となってはもはや笑い話なのですが、実はつい最近まで、「頭の良さ」へのコンプレックスがありました。

コンプレックスというのは上手く向き合えば、自分を牽引するドライバーにもなります。20代の頃は、自己成長にがむしゃらに向き合っていたので、戦略コンサルティング会社や外資系投資銀行などで働く友人と自分を比較し、「頭の良さ」へのコンプレックスをひた隠しにしながら、「ありたい自分」との見えない競争をしていました。

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その後、英語を猛勉強して、30代前半に、P&Gのシンガポール・アジア統括本社採用という機会を得るのですが、そこでもまた衝撃が待ち受けてました。当然ながら、社内の会話は全て英語。また、シンガポール本社はアジア全域から直接採用を行っているため、シンガポール・マレーシア・フィリピン・インドといった、英語教育で育ったエリートたちがバンバン入社してきます。

特に、インド人のエネルギーは強烈です。インドの大学生にとって、新卒でシンガポールで就業というのは最も人気の就職先です。10億人以上を誇る英語圏から、エリート中のエリートだけが厳選されて入社してきます。実際、シンガポール本社の上層部はインド人の割合がかなり高いです。全員、めちゃくちゃ頭が良くて、リーダーシップが高くて、人間的にも魅力的な人ばかりです。何人もの素晴らしいグローバル・リーダーと一緒に仕事をすることができたのはかけがえのない経験でした。
(↓ 担当ブランドSK-IIのチームメンバーとバンドもやってました。)

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一方で、日本を飛び出して、グローバルに挑戦したら、とてつもなく頭の良い人材に出会いまくって、「頭の良さ」について、世界とのギャップも思い知ることになりました。

「頭の良さ」という、得体のしれないものを追い求め、比較し、自分には足りないことがコンプレックスで、日本で限界までがんばってみたら、世界の壁はもっと高かったというオチです。笑えない笑い話です(笑)

コンプレックスは人を牽引するドライバーになることがありますが、やはりそれは長続きしませんし、心にとってもヘルシーな状態とは言えません。もちろん、「頭の良さ」コンプレックスが日々の生活を難しくするようなものではありませんし、経営者としてできることも増えているので、大きな問題にはなっていなかったのですが、どこか心のブレーキになっているような気がしていました。

認知科学コーチングを勉強していくなかで、自分自身の心の制限について考えることが多くなっていたのですが、そのコンプレックスのルーツと言うか、「恐らくそうなんじゃないか」という根本原因が、ある時、突然ひらめきました。「謎が全て解けた」状態です。

私には、尊敬する祖母がいます。大正14年生まれ。第二次世界大戦を生きに抜き、戦後は祖父とともにベンチャー企業を経営し、社長であった祖父よりも社員から慕われ、頼られ、会社とは別に自分の事業も経営する、肝が座った豪快な人です。おかげさまで、このnoteを書いてる今日も、95歳で健在です。新型コロナウイルスの影響で、なかなか会えませんが。。。

私は物心つく前から、祖母から「あんたは頭が良い」と言われて育ちました。そのおかげか、小さい頃から勉強には苦手意識が無く、大抵のことはできるだろうと思って育ちました。中高一貫の私立の男子校に入ってからは、野球漬けの毎日でさっぱり勉強をしなくなりました。高校3年生の時に初めて受けた予備校の模試で、全国平均を大きく下回る成績に背筋が凍りつきましたが、最後の夏の大会に初戦であっさり負けたあと、気持ちを切り替えて猛勉強したことで、現役で地方の国立大学に合格することができました。

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すでに、お気づきの方もいるかもしれません。祖母から私にかけられた「あんたは頭が良い」という言葉は、勉強に苦手意識を無くしたり、大抵のことはできるだろうという根拠のない自信を形成した一方で、私の心の中に「頭が良い=良いこと」という無意識の尺度を生み出していたのです。

そこから転じて、私よりも頭の良い人の存在を感じると、私よりも良い人(もっと言えば、より祖母に認められる人)がいるという構図になり、それが長らく私の心を悩ませ、柔軟性を失わせていたようです。

この、私にとっての「頭が良いこと=良いこと」という思い込みが「ビリーフ」の一例です(*)。正確に言えば、私がそのように思い込むようになった原因は、祖母からの言葉だけではないかもしれません。厳格な教育者であった父親から、厳しく育てられたことも影響があったかも知れません。ビリーフは、様々な体験や思考が重なって、強化されてできあがるので、1つ大きな要因を探ることにあまり意味はありません。

*ビリーフ1つひとつには、ポジティブもネガティブもありません。コーヒーか紅茶なら、コーヒーが好きだ。これもビリーフです。物事をネガティブに制限してしまう思い込みを心理学では、リミッティングビリーフと呼びます。参考までに代表的な24のリミッティングビリーフを一番下に記載しておきます。

冷静になって考えてみれば、そもそも「頭の良さ」なんていうものは、一概に言えないものですし、「頭の良さ」が人生に成功をもたらすわけではありません。もちろん、計算を早くするとか、素早く情報をまとめるとか、そういったことで、一定の事務処理能力と「頭の良さ」のようなものが関係するところはあるでしょうが、それはそれ、です。

成功するための秘訣は簡単です。成功するまで諦めないことです。だから、情熱を注げるテーマを見つけて、全力で取り組むだけです。あなたがいま何ができるのか、あなたがいま何を持っているのか、そんなことは未来のゴールには1mmも関係が無いのです。

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私自身は、この「頭の良さ」というコンプレックスについて、偉大な祖母への大いなる感謝とともに、自分自身の論理矛盾を客観的に認識することで、「ああ、そういう自分もいたんだね」というくらいの笑い話になりました。

ということで、今回は、認知科学コーチングを勉強する過程で、自分の心の感度を高めていったら、思わぬところから自分のコンプレックスのルーツを発見して、気がついたらどこかに消え去ってしまった、というお話をさせていただきました。

今回のエピソードは、コーチングと言うよりも、カウンセリングやトラウマの解消というようなお話になりましたが、コーチングにご興味ある方はぜひこちらのnoteをご覧ください!

参考:
自分の思考に制限を生むの24の代表的なリミッティングビリーフ


「生存に関するリミッティングビリーフ」
1.存在してはいけない
2.ありのままの自分であってはいけない
3.自分の性別であってはいけない
4.愛着(愛情)を感じてはいけない
5.見えてはいけない

「人間関係に関するリミッティングビリーフ」
6.人に近づいてはいけない
7.人を信用してはいけない
8.集団に属してはいけない
9.感謝をしてはいけない

「成長に関するリミッティングビリーフ」
10.成長してはいけない
11.セクシーになってはいけない
12.子どもであってはいけない
13.親から自立してはいけない
14.自由に行動してはいけない(自分の人生を生きてはいけない)
15.考えてはいけない

「精神・身体に関するリミッティングビリーフ」
16.健康であってはいけない
17.正気であってはいけない
18.感じてはいけない、自分が感じたいように感じてはいけない
19.楽しんではいけない
20.くつろいではいけない

「自己重要感に関するリミッティングビリーフ」
21.重要な存在であってはいけない
22.欲しがってはいけない
23.成し遂げてはいけない
24.成功を感じてはいけない

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