クラウドソーシングって、本当にやる意味あるの?という質問に、10年前に未経験からスタートしたわたしが答えます。
「クラウドソーシング」に否定的な人に何人かあったことがあります。「あ〜あんなん稼げへんで」「ろくな仕事ないで」と言われます。
よくよく話を聞いてみると、そう言う人は大抵の場合、クラウドソーシングを大して使っていません。ちょこっと使って「あかんわ」と判断しているだけのことが多いこと。しっかりわかっていないなら黙っておけばいいのに…と思います。「クラウドソーシングなんてあかんで。」なんて言って、誰かの未来の可能性をなくしてしまうかもしれないなんて、想像もしていないのでしょうけど。
クラウドソーシングで未経験からデザイナーに
さて、わたしは2013年にクラウドソーシングサイトに出会い、デザインの「デ」の字もわからないところから、コンペに出し続け、フリーランスのデザイナーへの道を獲得しました。
コンペはなかなか採用されません。しかし未経験で右も左もわからないわたしにとっては、クライアントが良いと判断したら報酬がもらえるという形式に安心ができましたし、いつ見ても常にコンペ案件が掲載されていて、チャレンジする機会がたくさんあることがとてもありがたかったです。
もちろん簡単に上手く行ったわけではなく、かなりの時間を費やしました。食べていける目処がついて、お弁当屋さんのバイトを辞めるまで1年半。1年半で作ったロゴは1000個以上。毎日毎日全ての空いた時間をロゴコンペに費やしました。
そうして、illustratorを使うスキル、ロゴを作る技術、クライアントとのコミュニケーション、クラウドソーシングでコンペを勝ち取るためのコツを得ていきました。
そして得たものはそれだけでなく、いろんなクライアントの出会い、仲間との出会い、それらがさらにわたしの可能性を広げてくれたと感じています。
お金がなくてもチャレンジできる
スクールに通ったり、本を買ったりするお金がないわたしが頼ったのはGoogle検索。とにかくインターネットで検索する毎日でした。素晴らしいことに、プロのデザイナーさんたちが、ブログやメディアでソフトの使い方やデザインのことをたくさん書いてくださっているのです。初心者には必要十分な情報が無料で手に入ります。
そして、クラウドソーシングも仕事を受注したら報酬の中から手数料を払う、という形。入会金を支払う必要もなければ、月額も必要ありません。お金がない中でもチャレンジしやすい環境です。
逆に必ず払わなければならなかったものは、インターネットとAdobeのillustratorというソフトの料金。パソコンは幸い当時持っていたものが使えましたが、インターネットとAdobeの料金の負担は当時はとても重たく感じていました。ですが、これを失うと全ての道が絶たれると思い、死守しました。
経済的に貧しい状況でも、チャレンジできる、そして頑張れば未来が開けるという環境は素晴らしいものだと思います。時代が違って生まれてきたらわたしには何の選択肢があったでしょうか。わたしの人生を支えてくれたICTやクラウドソーシングなどのwebツール、プラットフォームには感謝しても仕切れません。
クラウドソーシングでの経験から得たもの
クラウドソーシングを始めたころは、夫が育児や家事を担っていました。私が仕事を辞めたことによって、家計はみるみる苦くなりました。恥ずかしい話ですが、貯金もろくになく、夫に近所のスーパーにアルバイトに行ってもらいました。そうしてなんとか時間を稼ぎました。
最初は「在宅ワーク」と検索する日々。特に使えそうなスキルも持ち合わせていないので、見つかるのはアンケートやマイクロタスクと言われるような小さいものばかり。やれることがみつかるまでは、アンケートや座談会もそれなりにやりました。アンケートでたまる金額はせいぜい月に2000円。運良く座談会に出られると、数千円〜10,000円といったところです。一家3人が生活していくにはとても足りません。
「もう少し仕事らしい仕事をしないといけないんだ」と感じ、次にチャレンジしたのがライティング特化系のクラウドソーシングです。自分にスキルがないので、文章執筆ならできるのではないか、という大変甘い考えで挑戦してみることにしました。
当時はまだ医療系記事への規制もなく、インターネットで検索して医療関連のことを書くという仕事が多かったように記憶しています。報酬もそれなりで数も多かったので、わたしも医療記事案件にチャレンジしてみました。ですが、正確かどうかはっきりと言えない情報を発信する罪悪感に耐えられず、挫折しました。
今思うと、多動の気があり単純作業にすぐに飽きてしまい、と思えば凝り性でこだわりが強いというわたしの特性にはWebライティングは向いていないとわかるのですが、当時はやってみないとわかりませんでした。そして次にチャレンジしたのが「デザイン」です。
知り合いに何人かデザイナーがいて、なんとなくイメージがついた、というだけの理由です。
もちろんソフトも使えません。何をしたらいいのかもよくわからない。だけど、結果的にクラウドソーシングが踏み出すのに必要な全てを教えてくれました。もちろん、直接「こうしなさい」と教えてくれたわけではありません。
クラウドソーシングにはコンペや仕事がたくさん掲載されています。そこに掲載されているものが作れるようになれれば、その仕事を受けられる。それも非常に具体的な内容まで記載されています。何をすればいいかがこんなにはっきりわかるのはとてもありがたかったのです。
さっそく、デザインの仕事の内容を色々みてみて、とりあえず未経験でも問われない「コンペ」に応募することに決めました。ロゴコンペは毎日のように新しい案件が掲載され、実績を積む場としては最適な状況でした。
そして応募をしながら、落選しては工夫をし、当選した作品をみて学び、クライアントとやりとりして学び、ということを繰り返し、デザイナーとしての基礎を身につけることができました。
結局は大切なのは「自分」。クラウドソーシングは自分に機会を与えてくれるプラットフォーム。
自営型テレワーカーを支援していて感じるのは、「与えられること」「守られること」に慣れきってしまっている人が多い、ということです。
自分は消費者として、買い物をする時に価値を判断して購入しているはずです。価値がないものに喜んでお金を出す、という人はいないでしょう。
なのに仕事をする側になると急に、「研修してもらえるのが当たり前」「教えてもらえるのが当たり前」「仕事を与えてもらえるのが当たり前」という感覚になってしまいます。
『仕事=就職して誰かの指示のもとでタスクをこなすこと』だと無意識に感じ、それに慣れてしまっているのかもしれません。
「自分が価値を提供できるようになれば、その対価をもらえる」というごくごく単純なことです。クラウドソーシングだけでなく、資本主義の全てがそうです。だけど、「どこかに効率的な正解があるのではないか」と探し続けることに時間は割いても、自分の価値を高めることに時間は使わない人が多いのです。
確かに、わたしたちも仕事の受注から納品までを全て自分で行わなければならないという状況は非常に厳しいものであると認識し、チームランスを作って分業することでクリアにしようとチャレンジしています。
しかしそれも結局チームのメンバーが増えることで、その中で自然と競争が起こり、自分を高める必要性が出てきてしまいます。どんなプラットフォームがあっても、どんなチームがあっても、それは変わりません。
だから、「クラウドソーシングを使えば」「チームに入れば」「教えてもらえれば」と思っていても、解決にはなりません。
クラウドソーシングは解決方法ではなく、自分がチャレンジする機会をつくってくれるプラットフォームです。
時代が違えば、未経験からチャレンジすることもできなかったはずです。自分で自分の働き方をつくることは叶わなかったかもしれません。
そういったプラットフォームが無料で誰にでも開かれている、そのことに感謝し、自分を高める場として考えれば、自分にとってクラウドソーシングがどれだけ有用か見えてくるのではないでしょうか。
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