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政権交代のポテンシャルのある政党・ない政党

 立憲民主党と日本維新の会の主導権争いが激化しています。先の参院選では、日本維新の会が比例得票率で野党第一党になることを目標に掲げ、実際に達成しています。一方、保有議席という点では衆参ともに立民が維新を上回っており、国会では立民が引き続き野党第一党として振る舞う見込みです。この2党への支持、不支持は人それぞれでしょうが、今回は両党の政権交代可能性について書こうと思います。

立民疾風到来! 衆院選2017

 2017年の衆院選は立民疾風の吹き荒れた選挙でした。まず大まかな流れを確認すると

安倍総理(当時)が衆院解散の意向と報道
→小池都知事を中心として希望の党結党
→前原民進党代表(当時)が党として希望の党への合流を表明
※この頃からにわかに小池疾風が吹き始める
→(中道)保守的な政策の受け入れを公認の条件とする希望の党の方針が一部の民進党議員から反発を受ける
→枝野議員が担ぎ出されてリベラル路線の立憲民主党結党
※この頃から小池都知事の排除発言もあり希望の党は失速、代わって立憲民主党が日に日に勢いを増す
→立憲民主党が希望の党を上回り野党第一党となる

となります。
 さて、強い追い風を受けた立民ですが、その比例得票率は19.88%…となんとも心もとない数字……。自民党の33.28%には遠くおよびません。また、同じリベラル路線をとる共産党、社民党と足し合わせても29.47%と自公の合計である45.79%に水をあけられるどころか、自民一党の得票率にも達していません。
 その後立民は得票率拡大に苦労します。2019年の参院選では15.81%と減少、2021年の衆院選では(旧)国民民主党議員の多くや民主系無所属議員と合流して挑んだものの20.00%と伸び悩み、直近の参院選2022に至っては12.8%と過去最低を記録しています。もちろん各選挙区では政党への支持の他に候補者個人の人柄への評価も結果に影響しますが、素地となる党の支持がこれだけ低いと政権交代をおこせるほど議席を伸ばすのは極めて困難と言えるでしょう。

 

日本維新の会の軌跡とポテンシャル 

 一方、日本維新の会は2012年の衆院選比例で得票率20.37%を獲得しました。ただ、この頃の維新の会は自民党、民主党、異なる地域にルーツを持つ少数政党の集合体で政策的なまとまりに欠けていました。その後離合集散を経て現在に近い形におさまったのは2015年のことです。(ただし当時の名称は「おおさか維新の会」でした)それ以降、9.20%(参院選2016)→6.07%(衆院選2017)→9.80%(参院選2019)→14.01%(衆院選2021)→14.8%(参院選2022、現時点の数字)と2017年の衆院選を除いて順調に得票率を拡大してきました。(2017年の衆院選に関しては希望の党に穏健保守・中道票が奪われたことが得票減の原因として考えられます) 
 さて、上昇傾向にある維新の会ですが、その数字(14.8%)は立民と同様に自民には遠くおよびません。しかし、一人区で有力な野党の候補者が維新1人だけならば自民に勝てる可能性は十分にあると考えられます。

自民VS野党のシュミレーション

 一般に各党の政治的立ち位置は
(革新・リベラル)共産・社民・れいわ→立民→国民・維新・公明→自民(保守)
とされています。
 ここで例えば自民と立民が一対一で戦う選挙区があったとします。そうすると自民は公明から推薦をうけますので自民支持票に加えて公明支持票の大半を固められるでしょう。一方の立民も立民支持層と共産・社民・れいわ支持層は固められるのですが、(共産は拒否感を持つ有権者が多いのであからさまに共産と選挙協力すれば立民支持層も逃げる可能性がありますが逃げなかったとして)上述の通り自公には全く及びません。そこで国民・維新支持層から票を取りにいくのですが、自民との票の取り合いになります。そしてはれてこの2党の票もほぼ全て取れればやっと互角の戦いができるという大変厳しい戦いになるのです。
 それならば無党派層から票を取れば良いと考える方もいるかもしれませんが、これもかなり厳しいと言わざるを得ません。というのも無党派層は支持する政党がない層であって自らの政治的スタンスを持たない層ではないからです。迷いながらも国民や維新、公明、自民に投票した中道から穏健保守の思想を持つ無党派の人がちょっとしたきっかけですんなり立民支持を受け入れる可能性は低いのです。(実際立民が無党派層から支持を得たとされる衆院選2017でもその得票率は20%に満たなかった)
 一方、維新か国民と自民の一騎打ちの場合は野党の候補者に勝算があるでしょう。高い与党支持率下で行われた直近の参院選でも自公の得票率の合計は46.1%なのに対して、維新、国民、立民、社民、れいわ、共産の得票率の合計は47.2%と与党を上回っています。また、政策的立ち位置の近い公明党支持層の切り崩しも狙えるでしょう。(実際、京都選挙区の出口調査では公明支持層の過半数が維新候補に投票しています)

野党第一党争いの重要性

 問題はどのようにして穏健派野党VS与党の一対一の構図を作るかです。維新や国民が政策的な妥協をして立民に候補者をおろしてもらえば従来からの穏健な支持層が離れてしまいます。
 ここで注目したいのがまともな選挙戦をしようとすると候補者を1人たてるだけで莫大なエネルギーがかかることです。ある選挙区で有力候補となるためには、供託金の他に選挙カー、事務所、ポスター、ポスター貼り要因など大量の人的、金銭的資源が必要です。こうした資源を得るためには国会で議席を増やすことが重要になります。議席を増やすことで当然人的資源も増えますし、現在の日本のシステムでは政党交付金支給額も比例して増えます。さらに野党第一党になることで次の選挙以降他野党に対して有利になります。国会対応などで有権者の認知度を高める機会が多くなるからです。(立民はこのメリットをもってしても維新に比例第一党争いで負けたのです…)立民が野党第一党から転落した場合、この野党第一党効果が得られなくなり、候補者擁立能力は激減すると考えられます。(逆に維新は高くなる)
 ただし共産党については引き続き候補者を擁立してくるでしょう。共産党は事業収入が(減っているとはいえ)多い上、地方議員数も他野党を上回っているからです。よって共産支持者からの票はあまり期待できません。
 それでも共産党候補以外で主要野党の候補が穏健派一人となれば十分に政権選択選挙に持ち込めるでしょう。直近の参院選では共産党を除いた主要野党の得票率は自公を5.5%ほど下回っていますが、これはあくまでも与党支持率が非常に高かった選挙の話。そもそも実際には上述の通り公明党の票は切り崩されますから、(京都選挙区のように過半数を切り崩せれば野党が勝てる)大接戦となるでしょう。

 55年体制以降、野党ではかなりストイックなリベラル政党(社会党)が強い時代が長く続きました。その後自民離党者の作った穏健な新党によって8党連立政権が成立しますが、すぐに自民に政権を奪い返されます。これらの新党にもともとあった中道とされた公明、民社、社民連が加わり新進党が結党されますが、内部分裂ですぐに崩壊。旧新進党所属議員と旧社会党所属議員の寄り合い所帯となった民主党は政権を奪ったものの、政権奪取後すぐに内部分裂をおこし大敗。
 こうした時代を経てある程度政策的に一致した穏健政党が今成長してきのです。さらに今回は現実路線の労働組合や若者から強く支持される国民民主党とも一部連携が見込めます。まだ紆余曲折はあると思いますが、現実路線の野党の成長を期待しながら見守ろうと思います。


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