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【国会議員の目】日本維新の会 参議院議員 浅田 均氏

自由で開かれた世界を守るため国際協力・人道支援を強化 ~日本人のプレゼンス高め、中国の拡張主義に歯止めを~

経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部勤務の経験もある浅田均氏は、地域政党「大阪維新の会」を立ち上げ、日本維新の会政調会長などを歴任し、「日本維新の会の政策の要」とも評される。中国への対応、国際情勢の見方を含め、国際協力についての考えを聞いた。
                   (構成:本誌ライター 三澤一孔)

日本維新の会 参議院議員 浅田 均氏

あさだ・ひとし
1950年大阪府生まれ。日本放送協会(NHK)職員、経済協力開発機構(OECD)日本政府代表部専門調査員を経て、1999年から大阪府議を5期務め、2011年から2014年まで議長。2010年、大阪都構想を実現させるため地域政党「大阪維新の会」を結党。2016年、参議院議員に初当選(現在2期)。党政調会長、参議院予算委員会理事、外交防衛委員会委員などを経て、現在、党参議院会長。

浅田氏の公式HPはこちらから
※本記事は『月刊 国際開発ジャーナル2024年6月号』の掲載記事です。


実践の成果 FOIPが守った

 国会の委員会でもよく取り上げているが、政府開発援助(ODA)予算は、一番多かった時期には約1兆円以上あった。今は約 5,700億円だ。北岡伸一先生(国際協力機構 =JICA= 前理事長)と一緒に「ODA 予算を増やすべき」と言ってきた。
 しかし、日本で 30 年間、給料が上がっていない中、「外国を助けるぐらいなら、若い日本人を助けるべき」と言われると、最後はその理屈に負けてしまう。国自体が昔のように年に2%、3%、成長できるような経済力を付けていく必要がある。
 中国は、ODA の無償資金協力対象だったときから、アフリカやアジアに独自の援助をしてきた。そうしたことが何十年も続き、関係が強化される。
 開発援助は、額は多くなくても、その地域の国内総生産(GDP)がどれくらいになるまでは 安定的に続けるというようなスタンスを持つべきだ。
 「債務のわな」とも言われるが、中国は援助として途上国のインフラを整備し、債務が返済できなかったら政府の息のかかった会社に買い取らせる。世界のいろいろなところに中国の拠点ができ、西側としては、その地域が分断されてしまう。
 中国の軍事力も今までと比べ物にならないほど強化されている。その緊張関係を和らげる意味でも、日本やアメリカ、西側が協力・協調して対抗していく必要がある。
 安倍晋三前首相と北岡先生が進められた自由で開かれたインド太平洋(FOIP=Free and Open Indo-Pacific)の考えは重要だ。オーストラリアとインドを巻き込んだのは成果だと思う。
 日本は、世界の貧しい国々やそうした国の人々に資する協力をやってきた。FOIP によって、日本の国益を守ると同時に、途上国や人々への協力の成果を中国に取られてしまわずに守っているという状況だと思う。

国会で質問に立つ浅田氏

民主主義の価値を広める必要

 軍事政権となったミャンマーや民主主義からの逸脱が指摘されているカンボジアへの対応は、難しい。アメリカなどは、政府が自由な選挙で成立しているかどうかで民主主義かどうかを判断する。しかし、経済協力開発機構(OECD)の分類では、デモクラシーではないがグッドガバナンス(良い統治)が達成されているという国もある。
 一方、ロシアが最たる例だが、自由や人権、民主主義、「法の支配」といった価値観に対立する国もある。そのことも念頭に置きながら、自由や民主主義などの価値観を共有してくれる国を増やしていかなくてならない。
 インドは、どちらかというと西側に入るが、途上国的な側面もある。将来は GDP が世界一になる可能性もある。インドとの関係は昔からあるが、これからも大事にしていかなければならない。
 国際協力で力を入れていくべき分野は、やはり、アフリカなどのインフラだ。学校でも道路でも形として残る。「日本のODAによってできた」と顕彰もされ、日本のプレゼンスも高まる。
 インフラ整備や人材育成、SDGs の達成を応援することはいいが、FOIP の脅威となるようなところをどう対応するのかという課題もある。例えば、スリランカに対して、そうした協力をすることが中国の利益になってしまわないか、見極めが難しい。
 人道支援と国益のバランスについて言うと、FOIP は私たちの価値観を守っているが、中国のように価値体系が全然違う国もある。考え方が違うなら違うで共存できるならいいが、攻めてこないようにこちらを守るというのが第一だ。
 ウクライナに対し、日本政府は最初、手袋とマスクを提供しただけで、「防衛に役に立つもの」を送っていなかった。そこで日本維新の会は2023年3月、ピックアップトラック 20 台を送った。歳費を 20%カットし積み立てた資金が原資だ。ドローン攻撃のための電波をかく乱する装置を積んで活用されている。これが引き金となって、日本政府も自衛隊の持つトラック約 100 台を提供した。
 日本全国をみると、空いている公営住宅がたくさんあるので、ウクライナの人をもっと受け入れることもできる。まだまだできることがあると思う。

中東、アフリカにある親近感

 同じような人たちで考えていたら、同じような考えしか出てこない。国際協力の活動を通じ、違う人たちと一緒に考えていくと、別の考えがあると気づく。国際協力によってインスパイアされる部分があり、それが GDP の上昇にもなっていく。
 現在、宇宙では、いろいろな国の人が協力する共同プロジェクトがある。こうしたところで本当に開かれているのは、アメリカしかないが、それをアジアをターゲットに絞ってやっていく。半導体や量子コンピュータ、再生医療などの分野で、アジアの優秀な人に日本に来てもらい、共同のプロジェクトを進めていく。そうしたことをすれば、中国も一目置く。
 北岡先生がずっとおっしゃっていたのだが、中東やアフリカには、日本へのシンパシーがある。国に帰って自分の国の開発の役に立ちたい、国のために働きたいと、日本で勉強し、技術を身に付けようとする人たちがいる。
 人材を育てることにもなるし、こうした人が帰国して、いいポジションに就けば、親日的な関係もできる。この最たる例が、アフガニスタンだったが、タリバンの政権復帰で、日本で勉強していたことがあるというだけでも標的にされるようになってしまった。
 アフリカや中東、東欧では、日本のモノはあふれているが、日本人は見たことがないという人が多い。日本人が「ここにいる」とプレゼンスを高めていくことで、親密さも増す。日本の ODA 予算額が減り、中国の援助が増えても、日本人のプレゼンスで関係は強まる。
 人と人のつながりをつくっていくことが必要で、そのためにはJICA 海外協力隊のような活動が大変重要だ。


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本記事は国際開発ジャーナル2024年6月号に掲載されています。
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