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【JICA Volunteer’s Next Stage】人と人との出会いをつくる”つなげ役”

エクアドルで異文化を認めあう大切さ実感


☆本コーナーでは日本で活躍するJICA海外協力隊経験者のその後の進路や現在の仕事について紹介します。

小林 みずほさん
●出身地 : 山形県山形市出身
●隊 次 : 2011年度4次隊
●任 国 : エクアドル
●職 種 : 青少年活動
●現在の職業 : 山形市職員


日本人も在留外国人も同じ山形県民
 山形市職員として国際交流センターで勤務する小林みずほさん。「役所を市民も外国人も気軽に来られるようにフラットな場所にしたい」と思いを持ち、海外から山形市に引っ越してきた在留外国人の相談を受けたり、彼らと外国について知りたいと思っている市民らが交流する場所を設けたりし、市民の国際交流活動に貢献している。小林さんは仕事をする中で「日本人と外国人という関係ではなくて、みんなが山形市民だ」と気付いたと言い、「形だけの多文化理解でなく、顔と顔が見える関係を作ることをサポートすることで、多様な背景を持つ市民も住みやすくなる街にしていきたい」と話す。
 最近では、探求学習の一環で高校生が国際交流センターに勉強しに来ることが増えている。学生に向けて一緒に話す機会があるというJICA山形デスクの村岡智子さんは、「小林さんはただ話すだけでなく、学生に『貧困とは?学校を建てる意味は?』などと自身で考える問い掛けをたくさんしていることに感心する。ネットワークが豊富でどんどんバトンを渡してくれるので、学生も小林さんを信頼して話を聞きに来ている」と話し、若い世代からも人望が厚いことが伺える。
 本業以外でも小林さんは山形県の青年国際交流機構(IYEO)の事務局長、NPO法人山形県青年海外協力協会(YOCA)理事、山形歴史たてもの研究会の国際交流事業を担うなど、地元の国際交流事業に精力的に関わっている。
 小林さんの父親が立ち上げた団体である「歴史たてもの研究会」では、主に外国人と山形の古い建築物をつなげる活動をする。例えば、陶芸の里として有名な山形市の平清水地区で陶芸教室を開いたり、同市にある宝珠山立石寺の参道に建つ登録有形文化財「旧山寺ホテル」で着物の着付け体験を行ったり、海外からの訪問客に山形の歴史的建物とその歴史を楽しんでもらい、かつ日本文化を体験してもらう機会を提供している。「古い建物は、むしろ外国人の方が純和風でいいねと喜んでくれる。案内した場所を、彼らがSNSで世界に発進してくれることで、より多くの人に山形を知ってもらえるし、それが古い建物を残す一つの手段にもつながる。どんな人にとっても一つの場所として記憶に残る体験を志している」と語る。

旧山寺ホテルで行った着物文化体験=本人提供
協力隊の活動についてのトークイベントに登壇する小林さん(中央奥)=米沢市立図書館

関係づくり・居場所づくりに注力 
 このようにさまざまな立場で国際交流を進めるのは、青年海外協力隊として、現地で一外国人とし生活し、多くの場面で助けられてきたことが生きている。日本に来て困っている人がいたらその思いに共感できることが小林さんの強みの一つである。
 小林さんは2010年にJICA短期ボランティアとしてガーナに赴任し、JICA-SONY連携プロジェクトとしてワールドカップパブリックビューイングとエイズ対策の啓もう活動を長期隊員と一緒に行っていた。その際に長期隊員が現地の人たちと泣き笑いする姿に心を打たれ、いつか自分も長期隊員として関わりたいと思いを抱くようになった。そして2012年3月、思いを実現。長期隊員としてエクアドルで、児童労働撲滅を目指すNGOに所属し、貧困家庭の親子の、関係づくり・居場所づくりに取り組んだ。子どもたちには日本語や折り紙などの文化講座を開き、貧困解決には教育が鍵を握っていると保護者には教育の力・生きる力について伝えていった。「うまくいくことばかりではなかったが、交流を重ねて互いを知り、みんなで理解しあって異文化を認め合うことの大切さを学んだ」。
 相手を尊重し、相互に理解する姿勢に多くの人が信頼を寄せている。小林さんは“つなげ役”として、「個々の思いをつなげ、人々が集まることで思い出にもなり、その価値を再発見できる。記憶に残る出会いを増やしていきたい」と語る。
 取材中に小林さんが発した「人と会えることが財産」という一言に彼女の人柄が込められていると感じた。小林さんが出会った魅力的な人や場所について話してくれる際も、真剣なまなざしと紡がれた言葉には、会ってみたい行ってみたいと思わせる説得力があった。きっとこれが多くの人を惹きつける理由であろう。同じ山形県出身者としても、山形の国際協力の幅を広げ、さらに地域の活性化にも貢献している小林さんの取り組みを応援したい。
                        (編集部・吉田 実祝)

協力隊で小学生への折り紙教室を行った=本人提供
エクアドルでホストファミリーと水かけ祭り「カーニバル」に参加した=本人提供

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本記事は国際開発ジャーナル2024年5月号に掲載されています
(電子版はこちらから)

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