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アフリカの課題はリソース不足

これからのグローバルヘルス

中国の武漢で発生した新型コロナウイルスは瞬く間に全世界へ広まり、人の移動や貿易活動の停滞など、人々の生活や経済活動に影響を及ぼしている。さらなる感染拡大を防ぎ、新たなパンデミックを防ぐための新次元の感染症対策が求められる中、国際保健協力の在り方は今後、どう変わっていくのか。最前線で感染症と戦うアクターたちの展望を聞く。

ODAで円借款や民間投資の促進を

2014年に西アフリカで猛威を奮ったエボラウイルス病。18~19年にもコンゴ民主共和国で流行し、当時同国の保健次官付顧問だった仲佐保氏も封じ込めに尽力した。同氏に、アフリカで求められる感染症対策支援について聞いた。

(特活)シェア=国際保健協力市民の会 代表理事
仲佐 保氏
広島大学医学部を卒業後、国立国際医療研究センター(NCGM)に勤務。1986年にNCGM国際医療協力局に入職し、運営企画部長などを歴任。95年にジョンズホプキンス公衆衛生大学校で修士号取得。2020年3月、第48回医療功労賞(海外部門)の中央表彰を受賞。4月から現職

武装勢力の活動地域で流行

 これまでカンボジア難民医療や国際協力機構(JICA)の母子保健プロジェクトなど、さまざまな国際医療協力に携わってきた。今は、カンボジア難民医療や青年海外協力隊の経験者らと設立したNGOの代表理事を務めている。

 2020年3月までの2年間は、国立国際医療研究センター国際医療協力局付のJICA専門家としてコンゴ民主共和国保健次官付顧問を務めていた。ここでは保健人材の育成とエボラ対策に携わった。コンゴ民は南米のアマゾンや中国南部と並んで、「感染症の三大ホットスポット」と呼ばれている。これらは熱帯雨林を有している、もしくは近隣に熱帯雨林が存在しており、動物と人間の接触頻度が高い。動物が持つウイルスが人間に伝播して多くの感染症が発生しているのだ。それでも、モブツ政権時代のコンゴ民(当時はザイー
ル)は、アフリカで最も医療体制が整っている国だった。首都にあるキンシャサ大学には周辺国から多くの人が医療を学びにきていた。だが、その後の内戦により医療体制は破壊され、今なお脆弱だ。

 そうした中で、私が赴任してから2カ月後の2018年5月、同国北部の赤道州でエボラが発生した。ただ、同国ではこれまで何度も局地的にエボラが流行しており、同州の流行も3カ月程で収まった。しかし直後、今度は北東部の北キブ州でこれまでと少し遺伝型の異なるエボラウイルスが見つかった。
それでも同国は2020年4月時点で終結宣言間近という状況にまで落ち着いている。その要因は三つある。うち二つは、新薬の使用と検査体制の拡充だ。

 最後の一つは、北キブ州での医療従事者や住民を対象とした大規模なワクチン接種の実施だ。全体の対策は保健省が担い、ワクチン接種は世界保健機関(WHO)が主導したが、治安の悪さが障害となった。何故なら北キブ州は、携帯電話に使われるコルタンなどの鉱物資源(レアメタル)が豊富な
ため、それを狙ってウガンダやルワンダの支援を受けた武装勢力が政府機関などを襲撃するからだ。

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国際開発ジャーナル6月号での特集「コロナ危機が問う国際協力」で掲載した新型コロナ関連記事を抜粋したマガジンです。 保健医療を中心に国際協力…

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