異次元コロナウイルス

SFといえば、宇宙人の侵略や、タイムスリップものがふつうだけど、自分の見ている現実が本当なのか妄想なのか、区別がつかなくなるホラーなSFの構想をしている。

テレビのワイドショーや新聞がめちゃくちゃなことを言っているから、何がなんだか誰もわからなくなっている。

ウイルスというのはコロナに限らず、変異しつづけるものだから、人体に悪い影響を及ぼすだけじゃなくて、もっと超常現象のような進化もありえると思った。

たとえば、進化したウイルスが、時間をこえて過去とか未来の世界に飛沫するというのはいかにもSFだ。

ドラッグストアに3次元マスクというのが売っていた。

もしも4次元マスクというのが発明されると、それをつけることで、咳き込んだ時の飛沫をウイルスごと遠い未来の、どこかの星に飛ばすことができる。地球ではたんなる風邪なんだけど、どこかの惑星では未知のウイルスかもしれず、4次元マスクをして咳き込むことで、つぎつぎといろんな時代の、いろいろな惑星の文明をほろぼしてしまうもしれない。

そして4次元マスクをつけることで、突然、大昔の偉人の格言をつぶやいたり、口からクレオパトラを殺したコブラや、エクスカリバーが飛び出してくることもありえる。

ウイルスの超常現象的な変異に、異次元ウイルスへの変異ということも考えられる。

ウイルスというのはわれわれの住んでいる世界で感染がひろがるものだけど、異次元ウイルスは、現実とフィクションの区別なく、どこにでも拡散する。

異次元ウイルスに感染したマンガや小説のキャラクターは常に咳をしつづけるから、マンガのほとんどの吹き出しが「ゴホンゴホン」「ゲホゲホゲホ」になってしまったり、小説の文章が最後のページまで「ごほごほごほごほごほごほ」だったり、キャラクター全員がマスクをし始める。ウイルスに感染した主人公が死んで、話がまったく変わってしまうこともよくある。

『でもこんなことって、ありえるのか??』


ずっと前に買ったマンガや、昔の映画の内容がある日突然、まったく変わってしまうのである。

これは本当に、フィクションの世界にまで侵入する異次元ウイルスに感染したからかもしれないし、われわれ人類は現実と空想の区別がつかなくなって、妄想をしているだけかもしれない。

自分だけが妄想に取りつかれておかしくなっているのかもしれないし、みんな気が狂って集団幻覚を見ているのか。

自分自身、正常な判断をすることができなくなっているから、これはもうわからない。

少なくとも自分の主観に頼って、世の中を見ると、小説や映画の世界の登場人物までウイルスにやられているし、まわりの人も次々と死んでいる。

『バカヤロー』『コノヤロー』

気が狂ったかもしれないおれは劇場でたけし監督の映画を見ていたのだが、銃撃のシーンで、スクリーンから飛び出した流れ弾に当たって観客がつぎつぎと死んでいった。

『異次元ウイルスのしわざだ!』

異次元ウイルスはフィクションのキャラクターまで、ウイルスに感染させて死に至らしめるだけでなく、フィクションへの侵入の過程で、現実とフィクションの世界の境界をどろどろに溶かしてしまい、創作の世界のキャラクターが現実世界に迷い込んでしまうことがあるのだ。

ゴジラやフランケンシュタインがスクリーンから出てきたり、世界に何百人ものロバートデニーロもいたり、死んだ映画スターが平然と街を歩いていることがよくある。今日も東京メトロの通気口の上で、飛び上がるスカートを押さえているマリリンモンローを目撃した。

それでもゴジラを見たという人もいれば、そんなものが存在するわけがないもいう人もいる。


『やっぱり異次元ウイルスなんてありえず、おれの気が狂っているのか、みんなおかしくなってしまったのか?』


そういえば、銃撃シーンの流れ弾で大勢の観客が死んだ時に、劇場で機関銃を乱射するテロリストがいた。

本当はスクリーンから実弾が飛び出すことなんてありえず、テロリストが殺したのか、この頃はこういう劇場を狙ったテロ行為も日常茶飯事のことだから、なにがなんだかわからない。もしかしてスクリーンから実弾が飛び出したことも、テロリストが機関銃を乱射したのも、どっちも同時に起こったことかもしれない。

こうして水爆を扱った終末核戦争がテーマの映画を上映してる時に、本当に世界は核でほろんでしまった。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?