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#2 素っ裸でいくと素っ裸で返ってくる | 音の建築 -空間にはすでに音がある-

表参道ヒルズ、東京銀座資生堂ビル、グランフロント大阪、電通ビル、愛知万博、浜名湖花博…多数の空間や建築を「音」の切り口からプロデュースしてきた井出 祐昭。音と建築について、その極意をお話します。

空間、人、モノ…どんな対象にも深い所にエネルギーがあるというお話を前回しました。
空間の場合、空間に入った第一印象でそれが分かります。「こうしてくれ」と言ってくれているようなものなのですが、それを感じ取るには少しコツがいります。今回はそのお話をします。


素っ裸でいくと、素っ裸で返ってくる

「音のプロデュース」の最大のコツがあるとすれば、初対面の時に自分を素っ裸にして、相手の中にあるもの、外に出てくるものを感じること。
「素っ裸」がポイントになります。

空間にはコンセプトや表現、ああしたい、こうしたい等、様々な想いが詰まっています。それらを一旦無しにします。

そうして裸の状況で行くと、スーッと入ってくるものがある。空間のほうも、素っ裸で返してくれるのです。
具体的には、物理的な(物としての)「重心」があるように、「くうき、或いはエネルギーの重心」のようなものです。
建物にも限らず、色々なものをプロデュースする機会があるんだけど、それが一番頼りになります。

第二段階としては、選ばずに、色々な音楽を掛けたりもします。例えば、表参道ヒルズはファッショナブルな音楽がはまりそうだけど、意外と森の音がはまっていたりする。空間がどうすればいいかをを教えてくれます。

どのように素っ裸になるか

既成概念を忘れる

「素っ裸になる」ってどういうことでしょう。

なってみた人にしか分からない…というと乱暴ですが、一つあるのは、思っている以上に、準備する段階で既成概念ができているので、そこで間違わないようにしています。

例えば、事前情報で「なんとなくこういうもんかな」とイメージをしてしまった場合には、必ず忘れるようにします。
そこに至るまでに業務上コミュニケーションは行いますが、それも一旦断ち切る。なので、当日あまり話しかけられると困ったりもします(笑)

自分を出そうとしない

自分を出そうとしてしまうと、ほとんどの場合、その対象の本来のものとぶつかります。

言ってみれば、静かな森に怖いおじさんが入っていった、お花畑にやばい人が座っているような….森や自然の平和を崩してはいけない。そういうことです。
特に、メジャーになると自分が付け加えてドカンとやろうと意気込みやすい。

訓練出来るわけでもなく、テクニカルな難しさでもないですが、赤ちゃんみたいになるって、簡単ではないですよね。
でも、みんな頑張れば出来る可能性があります。

空間のエネルギーを感じてくると…?

お互い素っ裸で感じ取ることが出来てくると、空間と「仲良くなった」と感じます。仲良くなったかどうか、これが分かるのは簡単です。
次回はそんなお話をします。


新レーベル IDEOTO RECORDS が始まりました。




井出 祐昭 HIROAKI IDE
サウンド・スペース・コンポーザーSound Space Composer

ヤマハ株式会社チーフプロデューサーを経て、2001年有限会社エル・プロデュースを設立。最先端技術を駆使し、音楽制作、音響デザイン、音場創成を総合的にプロデュースすることにより様々なエネルギー空間を創り出す「サウンド・スペース・コンポーズ」の新分野を確立。
主な作品として、30周年を迎えるJR新宿・渋谷駅発車ベル、愛知万博、上海万博、浜名湖花博、表参道ヒルズ、グランフロント大阪、東京銀座資生堂ビル、TOYOTA i-REALコンテンツ、TOYOTA Concept-愛i、SHARP AQUOS、立川シネマシティ、世界デザイン博など。
またアメリカ最大のがんセンターMD Anderson Cancer Centerで音楽療法の臨床研究を行う他、科学と音楽の融合に取り組んでいる。最近では、日本ロレアルと共同で髪や肌の健康状態を音で伝える技術を開発。米フロリダ州にて行われた化粧品業界のオリンピックである第29回IFSCC世界大会、PR分野の世界大会であるESOMAR 2017にてグランプリを受賞。メディア出演・講演多数。


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