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「今こそ必要な融合 "Z世代×経営"」

 「同じアドバイスなのに親や配偶者からのアドバイスは感情的に強く反発し、外部の人であれば納得してしまう」そんな経験はないだろうか?
説得力と当事者の距離感というのは実は非常に大きな相関があり、日常の存在はなかなか的確なアドバイザーになるのが難しい。

 一方で適度な距離間のある上司―部下の関係で「Aの案に対して意見とか訂正点とかあれば言ってください」と上司に言われ、強い反対意見を述べられる人はどこまでいるだろうか?部下の立場から言えば、物言いをして上司の機嫌が悪くなることは見合わないと判断して何も言わないというのが短期的な最適解のように感じている人は多いだろう。

 いわば忖度である。距離感はあるが主従関係が明確だとこれまたフラットなコミュニケーションは難しくなる。適度な距離感はあるが、主従のない関係においてこそ、最適な付加価値の高いコミュニケーションは生まれる。

忖度の無い学生

 IAイノベーションはまさに適当な距離感がありながら忖度の無い関係である学生集団だからこそ大きな意味がある。
 採用活動の一貫としてのインターンであれば学生もいい子にふるまうことに注力するだろう。会社を代表してコンサルタントとして企業の案件に関われば、それは忖度の中でのコンサルテーションで、どこか客観的な分析に終始しやすい。戦略系コンサルに数千万円を投じてそんな感覚を覚えた人も少なからずいるのではないだろうか。

 IAイノベーションでは学生はその会社に就職するという意識もなければ、コンサルタントをしているという感覚もない。実践のお題を自由にゼロベースで考えて、机上の空論ではなく社会実装されるという可能性にワクワクを感じて突き進む。
 学校やインターンでのケーススタディはあくまで仮想の話で現実味が乏しく、そういうワークに飽きている彼らはこの実践の問題に強烈な熱量を出す。

計算の無い行動力

 学生のモチベーションはただひとえに評価されたいという承認欲求のみである。優秀なメンバーが5,6チームの複数に分けられてそれぞれのアイデアを出す。クライアント企業はそこからいくつかのチームのアイデアを選ぶ。学生同士のコンテストで勝ちたい、経営者に一目置かれ自分たちのアイデアが社会実装されたいという気持ちに突き動かされて学生は徹夜もいとわず作業をする。

 期限がいついつまでだから今日はこの辺にしておくかとか、自分たちの範疇外だから踏み込まずに終わらせるかなどという作業慣れした社会人のような発想は彼らにはない。故にある者は企業や研究機関にいきなり電話を入れて質問をし、理系学生の一部は研究室で模擬実験をする者までいる。興奮に突き動かされた行動力に限界はない。

予備知識がない故のゼロベース思考

 新しいアイデアを出すときに「ゼロベース思考」でやろうとよく言われる。それは既存の制約条件などを忘れて一端白紙の状態から発想を展開することである。しかし、長らく売り上げが発生してきた既存のビジネスを経験すると知らない間に発想はバイアスを受ける。私などは知らない業界に対してゼロベースでアプローチできるのではと思うのだが長い期間にわたり醸成された先入観が知らない間に思考回路に制約をかけている。

 IAイノベーションの学生たちは良くも悪くも社会経験がない。それが故に企業やビジネスに対しての先入観もなく、その発想は非常に豪快だ。当然Feasibility Checkという次の壁が出てくるのだが斬新なアイデアを出すうえで、実装可能かどうかに固執しないアプローチは非常に大事だ。まさにout of box の感がある。我々が子供の発想にたまに驚嘆するのと同じ感覚をZ世代の子たちの発想力には感じる。

大事な何かを気づかせてくれる

 もしかするとIAイノベーションでの最も大きな付加価値は若者のエネルギーそして向上心を同じ目線で確認できることかもしれない。私自身identity academyを運営して一番の喜びと収穫はこの部分である。20歳、30歳年の離れた若者と上下関係のない立場で同じプロジェクトを熱量をもって臨むこと自体があまりに貴重な体験だ。

 年を取ると「今の若い世代は…..」とややもすると批判的に見がちだが、実際の彼らはそのイメージとは全く異なる。われわれの想像よりもはるかに努力家だし、発想豊かだし、行動力がある。それを目の当たりにして感動すら覚えるし、自分自身がもう一度エネルギーリチャージされるのを感じる。
うんと年の離れた若いスポーツ選手や高校野球のひたむきさに感動を覚えるのと似ている感覚だ。実は彼らとのプロジェクトは我々が提供しているもの以上に得るものが大きいと感じる。特に意見をする人が少なくなった経営者層には大きな得るものがあると私は思う。

 Identity academyの学生は物心ついた時から呼吸するようにSNSやYouTubeが身近にあり、僕らが英語を学ぶように当たり前にプログラミングを言語を使う世代だ。我々が経営や社会に対して感じる課題は、未来のマーケットを作っていく彼らにとっては解くべき「問い」ではないかもしれない。そして我々は見える喫緊の課題ではなく未来の問いこそ目を向けるべき対象なのだ。

 未来に目を向け、未来を創ろうとしている学生たちと一緒に忖度なく物事を考えるのは、もっとも大事なことだと私は感じている。

Identity Academy 代表理事
森山博暢

Official Website : https://www.identity-academy.jp/

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