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レバレッジとは?

 こんにちは、Identity academy2期生の柴田博史です。
今回はレバレッジについて!ということでやっていきたいと思います。
社会人がよく「この業務ではレバレッジかかってない」などと話されるのを聞いたことがあるのですが、レバレッジって効率のことなの?などと思っていたら実はこれ、金融の深みが覗ける大事な指標だったのです。今回はそんなレバレッジについて、その意味から巧拙までじっくり勉強していきます。

1.レバレッジとは?

 そもそもレバレッジとはなんでしょうか。金融業界におけるレバレッジとは、借り入れを利用して運用することで元手のみで運用した際より大きなリターンを期待すること、というふうに説明されます。
英語でLeverageは梃子のことを指しますが、梃子を上手く使えば少ない力で大きな力を生むことができるように、少額の元手でも多くリターンを得られるところがレバレッジという語の由来です。特に株をレバレッジかけて運用する場合には信用取引という言葉を使うようです。

 具体例で考えてみましょう。例えば1%上がる商品を100万円買うとすると、よくて1万円しか稼げません。一方で、銀行から900万円借りて運用できたとすると、元々の100万円と合わせて1000万円で運用していることになりますから、10倍稼げるようになります。このように、余所からお金を借りてきて元本より大きく運用することをレバレッジといいます。この場合だと元手100万円に対して借入金を加えて合計1000万円で運用しているため、レバレッジとしては10倍となります。稼ぎを1万円から10万円へと増やせていますので、うまくレバレッジの旨味を利かせられたということになるでしょう。

2.WHYレバレッジ?

 さてこのレバレッジという考え方ですが、この考え方は株のリスク計算とも似ているように思われます。上の例で言うと、元々1%の値動きをするものが10%の値動きをするものになった、とみることもできるでしょう。10倍のレバレッジをかけることで、ボラティリティを10倍にしているのです。
そうすると気になるのが、なぜわざわざレバレッジをかけるのか?ということです。稼ぎたいなら元々リスクの高い商品を買えばいいのではないでしょうか。

 これは無駄なく稼ぐのに必要だから、と説明できます。

 例えば、絶対に10%上昇する商品があるとします。絶対に上がるということはないのですが、あなたがその商品について詳しく知っていて絶対に上がると確信しているということにしましょう。さてこの商品を買うとして、手持ちの100万円だけだと運用益はたったの10万円です。ここで再びレバレッジ10倍(合計1000万円)で運用できるとすると、一気に100万円も稼ぐことができます。絶対に上がるという前提のもとだったら、こちらの方が稼ぎ幅を増やせてお得ですよね。

3.レバレッジの巧拙

 さて、レバレッジを使えば商品が上がった際の儲けを増やせることがわかりましたが、同じように商品が下がった際の損失も大きくなるのがレバレッジの難しい所です。森山先生曰く、「投資の巧拙はレバレッジで決まる」とのことですが、何がレバレッジの巧拙を分けるのでしょうか。

 話を始める前に、そもそもレバレッジの巧拙とは何を指すのか明らかにしておきましょう。いくつか方法はありますが、今回はIRRという指標で考えていきたいと思います。IRRは「1年あたり何%増で運用したか」を示す指標。例えば100円のものを運用して144万円に2年でした時、1年あたり1.2倍と換算でき、IRRとしては20%といえます。

 さて、どうやったら上手くレバレッジかけられるのでしょうか。まずはありがちな失敗パターンから。

ケースA:
Iさんは所持金100万円に対して9900万円を借り、1億円でアパートを運用。この時運悪くアパートの資産価値が1%下がってしまったため100万円の損失に。Iさんは所持金が尽きてしまい資産売却を余儀なくされた。

 これは手元資金が尽きた場合です。手元にあるお金が少ないため、運悪く資産が下がってしまった際にその分の支払いができずゲームオーバーとなってしまいました。
大事なのは、どんなに良い資産だと思っても下がる可能性があること。判断を間違ってしまう可能性もあります(プロのトレーダーでさえ勝率は60%行かないそうです)し、長期的には上昇する資産も短期的に下がることだってざらにあります。運悪く下がってしまった際も致命傷を負わない運用を心がけるべきですし、そういった運負けを減らすためには資産のボラティリティが低いこともポイントになってきます。

 では次に、成功パターンを見ていきましょう。

ケースB:
Iさんは1000万円を元手に9000万円を金利1%で借入、1億円のアパートを運用。毎年家賃収入として600万円がある状態で5年保有し、その後1億円で売却した。
1年当たりでは家賃収入としての600万円から9000万円の1%に当たる90万円を差し引いた510万円が儲けとなったため、5年で2550万円の儲けとなり、IRRは29%となった。

 売却コストや毎年の元本返済など簡略化してはいますが、理想的といってもいいような成功パターンです。一番の勝因としてはしっかり収入が入ること、つまりキャッシュフローが安定していることとなっています。キャッシュフローがないと、取引コストや運用コスト、利子などで儲からなくなってしまうとのことです。

4.ROEとROAから見るお金の本質

 さて、話は飛びますが、ここでROEとROAという指標について考えてみたいと思います。第5回の記事 で紹介しましたが簡単におさらいを。ROEは投資収益率を見る指標で、当期純利益を自己資本で割ることで計算できます。一方ROAは当期純利益を総資産で割った値となり、借り入れも含めて資産をどれくらい増やせるかが問われる指標です。
 ここで注目したいのは、頻繁に評価指標として使われるROEでは資本金を借りているほど評価が上がるということです。いかに効率よくお金を増やしているか見るのであれば、一見すると総資産からの増え幅を考えるROAの方が指標として適切に思われます。それでもROEが指標として使われるということからは、企業の価値には「どれほど余所から金を借りてこられるか」という信用力も含まれていることが考察できるのではないでしょうか。

 例えばファンド経営を考えてみましょう。ある将来有望な会社があった際に、「この会社がこんだけ伸びるからうちにお金を預けて!」とてお金を集められるならばそれだけレバレッジが利く、つまり儲けやすくなります。一方で、実績や信頼のないファンドだと資金集めもできず、結果儲け幅としても大きくなりません。ファンドの場合においても、余所からお金を借りてこられるかどうかはファンドの収益力を左右する重要な要素なのです。

 本稿を読んで「簡単にレバレッジをかけるというけど、お金を借りてくるって大変だよな」と思った方もいるかもしれません。こう見てみると、まさにお金を借りてくる力、裏返せばこの人になら金を預けてもいいと信用される力こそレバレッジの肝なのではないでしょうか。成果を出し、人間力を身に付けることの重要さが改めて身に染みる回でした。

5.まとめ

・手持ちのお金以上に儲けが出るような工夫がレバレッジ。
・レバレッジでは損失も大きくなる。手元資金がマイナスになりやすいため十分なリスク管理が必要。
・キャッシュフローを十分に生み出せることがレバレッジ成功への第一歩。
・レバレッジかけられる力、金を借りられる信用力も重要なのではないだろうか。

とのことでした!
ここまでお読みくださりありがとうございました。おまけとして計算問題もつけてみたので、よろしければ試してみてください。

おまけ.計算問題

授業で実際に取り扱った計算問題です。ぜひチャレンジしてみてください!

ケースC:
Iさんは10億円で事業を買収しました。事業収益は年間1億円で、買収のためのお金の内3億はエクイティで集め残り7億は1%の金利、期間7年で借入ました。
経営のプロを年間1000万で雇い改革を行ったところ、1年目、2年目、3年目の事業収益はそれぞれ1億、1.5億、2億となりました。
将来的には事業収益が4億円にまで成長するというストーリーが信用されたことで、EBITDAマルチプル12倍で3年目終了時に売却できました。
このプロジェクトのIRRを求めなさい
簡略のため毎年の元本返済は1億、金利返済は700万、事業買収・売却にかかるコストは価格の5%とします。 
※EBITDAマルチプル12倍とは、年度当たり事業収益の12倍の企業価値を認められたということです。この場合だと3年目の事業収益2億に対して、この事業を24億で売却できたことを指しています。

解説
年次ごとに計算するなど方法は多々ありますが、ここでは借入した7億などは相殺した上で、儲けの増加分と減少分にのみ着目してみます。

<増加分>
事業収益分:1+1.5+2=4.5億
事業売却益―事業購入費:24-10=14億
<減少分>
人件費:0.1×3=0.3億
金利返済分:0.07×3=0.21億
買収・売却コスト:(10+24)×0.05=1.7億
<総計>
18.5-2.21=16.29億の得となります。
元手が3.5億円(買収用の3億円に、事業買収コストである0.5億円を足しています)、期間が3年間となるため、IRRとしては78%となります。

コメント
16.29億と大変な黒字になった今回の買収ですが、順調に事業収益を増加させられたことが一つ大きな成功要因になっていることがわかります。買収・売却にかかるコストの大きさも印象的ですね。
それにしても、年間1000万円で雇えるのか疑問に思うほど優秀な経営者ですね。。。

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