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【聞いてみた】研究者の就職先としての、大学&民間企業


王道の大学教員

心理学系の分野で博士課程を修了した場合、理工系に比べると教員になる人の割合が高いようです(工学部の大学教員への就職は16.1%)。

理工系と違って企業の研究職のポストが少ない社会科学・人文科学系にとっては、大学への就職は「王道」かつ「成功」というようなイメージがあります。

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民間企業の研究者に聞いてみよう

とはいえ、これからますます多様化する時代に向けて、就職先は今よりもっと選択肢が増えるような気がします。大学で教員になるという王道コースと、イデアラボのように民間で研究職を続けるということについて、実際の声を聞いてみました。


民間で研究職&非常勤講師の児玉さん

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児玉さんは、山梨大学教育学部で専任講師として働いたのち、イデアラボで心理学の研究員として働いています。現在も非常勤講師として大学での教育活動を続けています。

民間企業であるイデアラボの仕事(詳細はこちらの記事をご覧ください)は、主にクライアントの商品やサービスに関する課題を、学術的な心理学の枠で課題解決に向けたサポートをすることです。

広報の私からすれば、イデアラボの仕事は教育とは関係がないのかと思っていましたが、児玉さん曰く、「大学でもイデアラボでも、どちらも“研究と教育活動”をしているのは共通点」とのこと。

教育学の博士号を持つ専門家から見て、大学と民間の違いがどこにあるのか?児玉さんの経験からお話ししてもらいました。


「研究」の違いはテーマにあり

◆大学における「研究」
 ・自分の興味関心のある研究+α
 ・申請が通れば科研費が取れる

◆民間企業における「研究」
 ・他企業との共同研究+自分の興味関心のある研究
 ・科研費の対象機関ではないものの、学会出張や調査、論文の英語校閲など自分の研究を金銭面でサポートする体制がある(※イデアラボの場合)


「教育」の違いは人生への関与度?

◆大学における「教育」
 ・ 学生の知的財産を増やす知識の伝達が主目的
 ・個人の人生に関われるというやりがい
  (自分との出会いや、与えた知識がその学生の価値観や意見の発信力、その他諸々の発達に少なからず寄与する感じ)
 ・ ゼミで卒論などの作品を共に作り上げたとき、学生の理解や関心が深まった姿などを見て純粋な喜びを感じられる


◆民間における「教育」
 ・クライアントへの知識の伝達だけではなく,クライアントが持つ課題や目的を達成するための道筋を示してサポートするのが主目的
 ・大学における教育よりも,より短期的な成果が求められる
 ・共同研究的な立場も多いので,一方向ではない教育
  (こちら側にもビジネス現場からの学びがある)
 ・商品やサービスがより良くなるプロセスを通じて、社会の未来がより良くなることに関わるやりがい

児玉さんは「自分の働きかけが,この学生,この企業,この社会にとって何かポジティブになるかなっていう感覚があることが教育活動に共通する報酬(魅力)だと思う」と感じているようです。


それぞれのデメリット

◆大学のここが大変
 ・そもそも就職ポストが少なく激戦
 ・授業や委員会などの拘束が強い
 ・任期付きのポストの場合、次の職場が世界のどこになるか未定

◆民間のここが大変
 ・クライアントありきのビジネスなので、研究とは別のスキルも必要
 ・キャリアとして前例が少なく、先駆者が故の苦労がある
 ・アカデミックポストではないと思われがち(現状の制度では科研費の申請ができないなど…)


あなたはどっちのタイプ?

◆大学に向いているかも
 ・自分のゼミ(ファミリー)を持ちたい
 ・自分の興味のある研究を中心にしたい
 ・科研費をとりたい&個人研究費が必要
 ・アカデミックキャリアの「王道」を歩みたい

◆民間企業に向いているかも
 ・自分の研究テーマだけでは接することのない領域の研究で、知識が広がることを楽しいと思える
 ・ビジネスの世界のことを知りたい、関わりたい
 ・新しいアカデミックキャリアの先駆者になりたい
 ・良い待遇が欲しい(※求人によっては正規雇用や高収入が望めることも…。ちなみにイデアラボには博士手当てなどの福利厚生が色々あります(宣伝))


まとめ

最後に児玉さんに、今の選択肢(民間就職)ってぶっちゃけどうですか?やっぱりいつかは大学に戻りたいんですか? と、聞いてみました。

私は今の選択肢で200%満足しています!笑 
大学で働いた経験も良かったんですけど(山梨大では本当に良くしていただいていたので,好きだった),今に満足しているから,いつか大学に絶対戻るぞということは考えてないって感じですかね。
個人的な想いとしては,イデアラボも「アカデミックポスト」なんだよって伝えたいんですよね。よく知り合いから「アカデミックに戻らないの?」って質問をされるんですけど,「え,今アカデミックにいますけど?」って思うんですよ。そのたびにもやぁ~っとしていて。
大学を否定したいとか,どっちが良い/悪いとかは全く思っていないし,伝えるつもりはなくて。ただただ,「大学=アカデミック」という王道コースのスティグマを少しでも軽くしたいなって思います。
どこに所属していても自分の研究テーマを追求してアウトプットしていく限り,その分野の第一人者になることは可能だと思うので。
そうすると,後輩たちが抵抗なく「大学じゃない選択肢」を選ぶこともできるようになるのかな~って。

ちなみに、イデアラボは会社の方針として「大学(研究機関)と民間企業で人材が流動的になることは良いこと」と考えています。

イデアラボからアカデミアに転職できることは、イデアラボのキャリアがアカデミアにも認められているということで、アカデミックキャリアの多様性に貢献していることにもなるからです。

そのため、転職活動は隠さずにしてくださいと社員に伝えて、「サバティカル制度」も設けています(イデアラボから任期付きのポストに転職する際、本人が希望すれば任期終了後、元の待遇でイデアラボに戻れる…!)。

今の時代は、博士を取ったら大学教授!というだけでなく、新しく多様なキャリアがいろいろなところで開いていっています。研究に関わってきた人の膨大な知識や知的な体力は、あらゆるところで能力を発揮できる強い基盤になるはずです。「個の時代」と言われている今、あなたはどこでどう生きる?には人の数だけ答えがあった方が、楽しいですね。

【お知らせ】
2020年4月から久しぶりに公募を開始しました(※詳細)。
一緒に新しいアカデミックなキャリアを築いていきましょう!

研究の知見を正しくビジネス現場に応用することで、研究で食べていける社会を目指しています。