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三大栄養素(のキホン中のキホン)

皆さんこんにちは!このnoteでは基礎から栄養療法を学びたい方、NST専門療法士や管理栄養士を目指している方、栄養を学んで競技力を向上させたいアスリートの皆さんに向けて、まじめな講義をしていきます。
栄養を勉強するにあたっては、まずはどのような栄養素があり、そして、それらの役割を知る必要があります。今回は三大栄養素について勉強していきます。YouTube版もありますのでもご覧いただければ幸いです。ほぼ同じ内容です。


栄養素の種類と役割

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栄養素には、炭水化物(≒糖質)タンパク質脂質ビタミンミネラルがあります。中でも炭水化物、タンパク質、脂質を三大栄養素と呼び、これにビタミン・ミネラルを加えて五大栄養素と呼びます。YouTubeでも解説しているので興味のある方はぜひご覧ください(noteでも近々記事にします)。
ビタミン
多量ミネラル
微量ミネラル

少し話がそれますが、三大要素のことを英語の頭文字をとってPFCとも呼びます。
Protein=タンパク質
Fat=脂質
Carbohydrate=炭水化物(≒糖質)
トレーニーには、より馴染みがある呼び方かもしれません。

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栄養素には、
・筋肉や内臓などの身体を構成する
・力や熱などのエネルギー源となる
・体の調子を整える
といった3つの大きな役割があります。

身体の構成成分として、タンパク質は身体のありとあらゆるものを構成しています。細胞膜には脂質、骨などにはカルシムなどのミネラルが構成成分として関与しています。三大栄養素はすべてエネルギー源になります。そのためエネルギー産生栄養素とも言います。またビタミン・ミネラルはどちらも体の調子を整えるのに重要です。

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これら三大栄養素は食事でバランスよくとることが重要です。1日の摂取カロリーを100%とすると糖質はおよそ半分の50~65%とされています。カロリーにすると1,000kcal~1,300kcalで、ごはんにするとお茶碗で4~5杯程度です。タンパク質は13~20%で、推奨量は成人男性で一日60g、成人女性で50gとされています。筋肉を増やす必要があるアスリートはもっと必要です。脂質は残り1/4の20~30%が適切とされています。

この三大栄養素の摂取バランスですが、例えば糖尿病などは糖質の割合を下げるなど病態によって適切なバランスが変わります。将来的に疾患別の記事で詳しく解説していきたいと思います。

炭水化物

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炭水化物糖質食物繊維に分けられます。食物繊維は別枠で6番目の栄養素などと言うこともあります。糖質は、身体を動かすエネルギー源となります。食物繊維は、消化・吸収されにくく腸の調子を整える栄養素です。エネルギー的には炭水化物といえばほぼ糖質と考えてよいかと思います。

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糖質はすばやくエネルギーになる、生体における主要なエネルギー源です。1gあたり4kcalのエネルギーなります。単糖類、二糖類、多糖類に分類されます。単糖類の一つであるグルコース(=ブドウ糖)は糖質の最終分解物です。糖質はおもにそのグルコースの形で存在し、血糖維持の重要な役割を担っています。血糖はインスリンやグルカゴンで調整されます。
グルコースは神経や赤血球のエネルギー源ですが、特に脳のエネルギー源として重要です。赤血球のエネルギー源ですから糖質制限で貧血になることも十分にあり得ます!
糖質は肝臓と筋肉にグリコーゲンとして蓄えられます。このグリコーゲンは意外に貯蔵量が少なく全体で400g程度(1,600kcal相当)しか蓄えられません。
糖質が不足すると疲労や筋肉量減少(筋肉を分解してエネルギー源とするため)の原因となります。過度の糖質制限はパフォーマンスを著しく低下していますね。
また、すぐ使う量以上に食べた糖質は、体の中で脂肪となって蓄積し肥満の原因となります。過剰摂取は高血糖や生活習慣病の原因です。

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食物繊維不溶性食物繊維水溶性食物繊維に分けられ、腸の調子を整える栄養素です。「ヒトの小腸内で消化・吸収されにくく、消化管を介して健康の維持に役立つ生理作用を発現する食物成分」と定義されます。
水溶性食物繊維は栄養素の吸収を抑制し生活習慣病になりにくくするなどの作用があります。
一方の、不溶性食物繊維は便量を増やし便秘を改善するなどの作用があります。
海藻、豆類、野菜、きのこ、果実などに多く含まれます。食物繊維は不足しがちな栄養素です。目標量として年齢ごとに微妙に数値は違いますが、おおよそ成人男性21g以上、成人女性18g以上が設定されています(日本人の食事摂取基準;2020年版)。ちなみによくレタス○個分の食物繊維といいますが、レタス1個当たり含まれる食物繊維は約3g程度です。6~7個食べないと足りない計算になりますね。

✔ 炭水化物=糖質+食物繊維
✔ 糖質:身体を動かすエネルギー源で4kacl/g
✔ 食物繊維:消化・吸収されにくく腸の調子を整える栄養素
✔ 水溶性食物繊維と不溶性食物繊維がある
✔ エネルギー的には炭水化物といえばほぼ糖質

タンパク質

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タンパク質は身体を構成するあらゆるものの材料です。例えば筋肉、皮膚、骨、爪、毛髪、内臓、血液、酵素、ホルモンなどを構成しています。
タンパク質は20種類のアミノ酸が50から1,000個組み合わさって構成されます。タンパク質は約10万種類あり、アミノ酸の組み合わせ(配列といいます)によって形状や機能が異なります。エネルギー源としても利用され、糖質と同じく1g当たり4kcalです。
不足すると成長障害や筋力低下、免疫能低下などを引き起こします。低栄養の状態のひとつに「PEM(Protein energy malnutrition): タンパク質・エネルギー欠乏」がありますが近い将来解説したいと思います。

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アミノ酸は上図のような構造をしています。アミノ基に窒素を含みますので、アミノ酸からなる物質を窒素源とも言います。アミノ酸には体内で合成できないものがあり、これらを必須アミノ酸といい、全部で9種類あります。試験ではよく問われますので語呂合わせなどで覚えるとよいでしょう。

必須アミノ酸の語呂合わせ
「風呂場椅子独り占め」
ェニルアラニン、イシン、リン、ソロイシン、レオニン、スチジン、リプトファン、リジン、チオニン

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窒素源(=タンパク質)は食物からタンパク質の形で取り込まれ、体内でペプチドを経てアミノ酸まで分解され吸収されます。その後、体内でアミノ酸からタンパク質に合成され、皮膚や髪の毛などが作られます。

余談になりますが、例えばコラーゲンもタンパク質ですが、皮膚や髪の毛から吸収されることはありません。時々そのような商品を見かけますが、もしそれが本当なら腸が使えない患者さんでもタンパク質を吸収できるのでとても画期的な商品だと思います。賢明な皆様はそう言った成分が必要な場合には必ず腸管から吸収していただきたいと思います。

身体を構成するタンパク質の一部(約3%:250~300g)は毎日入れ替わっています。タンパク質は脂肪の様に、たくさん食べておいて蓄えておく、なんてことはできません。(※蓄えられないといいましたが、実際は筋トレをして筋肉をつければ蓄えておくことは可能です。)また、作り出せないもの(必須アミノ酸)もあります。ですから、毎日摂取する必要があります。また、摂りすぎたタンパク質は糖などに変換され最終的に脂肪として蓄えられるか、腎臓から尿として排泄されます。腎不全ではタンパクの過剰摂取には注意が必要です。

✔ タンパク質は身体のあらゆるものの材料
✔ 20種類のアミノ酸により構成される
✔ タンパク質→ペプチド→アミノ酸と分解
✔ 必須アミノ酸は9種類あり体内で合成できない
✔ タンパク質も4kcal/g


脂質

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生体成分のうち「水に溶けにくく有機溶媒に溶けるもの」を脂質といいます。脂質は効率の良いエネルギー源で糖質の約2倍です。脂質からは、1g当たり9kcalと、三大栄養素の中でも最も高いエネルギーを得ることができます。

不足すると、
・疲労
・脂溶性ビタミンの吸収障害によるビタミン不足
・皮膚のかさつき
などをきたします。

摂りすぎると、
・肥満
・高脂血症
・生活習慣病
を引き起こします。

脂質には以下のような種類があります。
中性脂肪(トリグリセリド):脂肪細胞に貯蔵される
・コレステロール:細胞膜の成分やステロイドホルモンや胆汁酸の材料となる
脂肪酸:脂質の材料となる
必須脂肪酸:ヒトに合成できない脂肪酸で人体に欠かせない
リン脂質:細胞膜の成分
この後、それぞれ簡単に解説します。

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中性脂肪はグリセリン3つの脂肪酸がくっついたもので、強力なエネルギー源(9kcal/g)です。皮下、腹腔内、血管周囲、骨格筋、乳腺などの脂肪組織に貯蔵されます。

脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があります。
飽和脂肪酸は二重結合を持たない脂肪酸です。バターや肉の脂身などの動物性脂肪に多く含まれています。凝固温度が高いため固まりやすい性質があります。血液の流れが悪くなり、血中の脂肪を増やす働きがあります。過剰に摂取すると健康を害します。
不飽和脂肪酸は二重結合が1つの一価不飽和脂肪酸(n-9系)と、二重結合が2つ以上ある多価不飽和脂肪酸n-3系n-6系)があります。不飽和脂肪酸は動脈硬化、血栓、高血圧の改善効果や、LDLコレステロールの低下作用など生活習慣病の予防に効果があります。

必須脂肪酸は体内で合成できない、または必要量が不足しているため食物から摂取しなければならない脂肪酸です。
・n-3系のα-リノレン酸
・n-6系のリノール酸
アラキドン酸(リノール酸から合成)
があります。

コレステロールにはLDLコレステロールとHDLコレステロールがあります。LDLコレステロールは悪玉コレステロールと呼ばれ肝臓から血液に乗りコレステロールを全身に届ける作用があります。動脈硬化の原因となります。
HDLコレステロールは善玉コレステロールと呼ばれ体中の余ったコレステロールを回収しています。

✔ 脂質は効率の良いエネルギー源で9kcal/g
✔ 中性脂肪(トリグリセリド):脂肪細胞に貯蔵、エネルギー源
✔ コレステロール: HDL(善玉)とLDL(悪玉)
✔ 脂肪酸:脂質の材料となる
 ▶飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
✔ 必須脂肪酸:αリノレン酸、リノール酸、アラキドン酸

で、試験には何が出るの?

最後に少し試験についてお話ししたいと思います。
NST専門療法士や管理栄養士の試験では本記事以上の内容が問われていることが多い様です。三大栄養素の代謝に関してはよく出題されいています。例えば、解糖系、クエン酸回路(TCA回路)、電子伝達系、糖新生などより突っ込んだ生化学的な内容です。いずれこれらの話もできればいいとは思いますが、きっと栄養の勉強が嫌になってしまうのでしばらくは封印しようと思います。
いずれにせよ、この記事レベルの知識は試験対策としても重要ですし、試験を受けないにしても栄養の基礎知識としてしっかり勉強してほしいと思います。
では、また!

参考資料

静脈経腸栄養テキストブック
認定試験基本問題集
NST専門療法士認定試験 過去問題集I
クエスチョン・バンク 管理栄養士国家試験問題解説 2021
栄養士・管理栄養士のためのなぜ?どうして?1 基礎栄養学
「『日本人の食事摂取基準(2020年版)』策定検討会報告書」



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