小説 M1グランプリ

俺はお笑いが好きなんだよ。と言いたいところなんだけど、知り合いに違うと言われて、頭にきてんだよ。

M1グランプリ決勝放送直後、知り合いとこんなやり取りをしたんだよ。

「おい、このやろう。お前はお笑いが好きなのか?」

「はい。」

「じゃあ、当然M1グランプリは見たよな?」

「見てません。見たんですか?」

「なんだと、このやろう。見てるに決まってるだろ。」

「じゃあ、どんな内容だったか教えてください。」

「え?」

「だから、M1見たなら、出演者の方のそれぞれの漫才の内容を教えてください。」

「今はいいじゃないかよ。あとで、自分で見てくれよ。それより、見てないって話しにならないよ。お笑いが好きだったら見てるだろ。」

「あのー、すいません。」

(怯えながら)「なんだよ。」

「見てないですよね?」

「え?」

「M1見てないですよね?」

(小声で)「見たよ、去年のは。」

「何て言ったんですか?」

「去年のM1は見たよ。」

「去年?どう考えても、今は今年のM1を見たかどうかを話してるのだと思いますけど、ふざけないでください。」 

「今年のは見てないよ。M1見たって言ったのは去年のM1のことだったんだよ、このやろう。」

「もうじゃあ、それでいいですけど、じゃあ、去年のM1決勝の内容を教えてください。順位まではいいです。出演者の方の名前とその漫才の内容を教えてください。」

「え?」

「見てないですよね?去年も。」

「忘れちゃったんだよ。」

「そうなのだとしたら、お笑いが好きとは言わないでください。」

「ちきしょう。」

頭にきたが、よく考えたら、悔しいが、お笑い好きと名乗れない気がしてきた。

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