小説 俺は外見に気を使っているんだ

俺は外見にとても気を使ってんだよ。

知り合いとこんなやり取りになった。

「おい、このやろう。俺は自分の外見にとても気を使ってるんだけど、お前はどうなんだよ。」

「特に何も気を使ってないですけど。」

「なんだと。だめだろ、そんなんじゃあよ。俺はよう、自分で言うのもなんだけどな、あまり中身をいいと思ってないんだよ。だから、外見から改善をしようしてるんだ。」

「全然改善されてないじゃないですか。」

「なんだと、このやろう!どういう意味だ!」

「まず、靴を磨いてますか?」

「え?・・・ティッシュで拭いたことはあるよ、このやろう。」

「でも汚いじゃないですか。いつ拭いたんですか?」

「え?覚えてねーよ。」

「あと、服はアイロンはかけてるんですか?」

「かけたことはあるんじゃないのか。いちいち覚えてねーよ。」

「しわだらけじゃないですか。アイロンをかけたことないですよね。まず、持ってないですよね。」

「なんだ、このやろう。」

「あと、髪の毛も整えてくださいよ。」

「うるせーな。もう話しかけんな。」

「そちらから話しかけておいて、それはないでしょう。」

「じゃあ、おまえはどうなんだ?今指摘をしてきたことを全部やってんのかよ!」

「やってますよ。だから、普通の人生が送れているんですよ。あなたはどうですか?不満だらけでしょ?」

「このやろう!」


こんなやり取りはしたことがない。

実際の自分は、外見に何も気を使ってなければ、それについて意見してくる人もいない。中身と外見どちらからしても、誰も自分に話しかけたくないのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?