落ちてきた空の下で
昔、空は鳥と人の物だった。
今は、鳥だけの物だ。
大空墜〈アトラスダウン〉により全人類と人造物は空から閉めだされた。高さ1.5mより上は不可視の障壁により何人たりとも立ち入れない。地上に住む物好きは這人(ローチャー)か矮人(ドワーフ)くらい。
私は新宿駅に暮らす普通の女子高生。普通じゃない点は人より背が高い事と、飛行機部の部長をしている事だ。
飛行機。空を支配していた機械。部の目標は、卒業までに自作の飛行機で空を飛ぶこと。
「迷った……」
様々なパーツが眠る秋葉原まで地上ルートで行く計画を立て実行したものの、全飛行機部員、即ち私と香澄は遭難の危機に瀕していた。人工衛星も墜落した現在GPSは過去の遺物だ。
「だから言ったじゃないですかあ」
背の低い香澄は普通に立っているが中腰で歩いている私は疲労困憊である。
「こういう時は冷静に太陽を見て方角をだな」
上を見て私は固まった。
空を、飛んでいる人がいた。
【続く】
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