【うーん】学校が保護者等に求める押印の見直し及び学校・保護者等間における連絡手段のデジタル化の推進通知を斬る(独断)

連絡手段のデジタル化の推進通知-01

はじめに

本日2020年10月20日付で、文科省からの全国の教育委員会などに向けて発信された「学校が保護者等に求める押印の見直し及び学校・保護者等間における連絡手段のデジタル化の推進(通知)」について、この半年、公教育のICT化について学んできた一保護者の立場から代表の吉澤が独断で斬ってみたいと思います。

①「学校まで確実に周知いただくようお願い致します。」がアツい

この通知のp1。冒頭の囲み部分。ここはアツいです。

01囲み部分

「え、じゃあいままでの通知はどうなっていたの?」

そうなんです。いままでは教育委員会に通知が出ても、学校まで確実に周知されていなかった、ということなんです。

実際、5月に出たこれを読んで、おお、日本の教育もようやく変わるのか!と期待した方もいたと思いますが実際の学校現場にどのくらい伝わったのかというと、???でした。実際には事務連絡と通知では取り扱いも違うし、比較の対象にならないということもあろうかと思いますが、どれも学校現場まではあまり届いていないことに変わりはないかと。しかし、今回のこの囲みにはその轍は踏まないぞ、という文科省の意欲を感じます。

02強調部分

p2にもまた、念押しの文章が出てきました。うーん、いままでの通知も学校運営に影響が大きい事項だったと思うけどなw。文部科学省もいよいよ危機感を覚えている、ということでそこは期待を膨らませます。

連絡手段のデジタル化の推進通知-02

②「押印の効果は限定的」ってそりゃそうだろう、、、

1.保護者等による押印の効力について

2.押印の省略、デジタル化への移行について

3.デジタル化した際の保護者等からの意思表示であることの証明について

そもそも問題は押印や承認ではなく、情報のやりとりそのものであると思うのですが、その問題認識が最初に示されていない点でズレを感じました。方向性に異議はないのですが、さきに力説することが「押印の効果は限定的」って、どうなんだろう。ときの政権からの影響でこの通知が出たって感じだとすると、問題の本質にもっと迫っていただきたいと思うところです。

連絡手段のデジタル化の推進通知-03

③大事なのはオンラインでのコミュニケーション機能のほう!

4.GIGA スクール構想に基づき整備された端末等に付随する機能の活用について

最初に来るのはこっちでしょう、と思います。なんらかオンラインでのコミュニケーション機能を「総合的・俯瞰的」にみて全国津々浦々で活用するのは、今年一番実現してほしいことです。学習面での活用は、端末がいきわたるまでの時間、活用に至るまでの教員の負荷、ネット環境の根本的改善まで、課題は山積みです。でも、これはやればできる。方法もいろいろあります。

6.デジタル環境への対応が難しい御家庭への配慮について

経済的事情でスマホ、携帯を持てないケースがもし本当に懸案なら、受け手にもSIM入りの端末でもルーターでも配って(貸与して)連絡手段を確保し、学校の負荷を下げ、トータルコストを下げた方が絶対いいです。

ちなみに、世田谷区ではなんらか連絡手段としてのスマホ携帯の所有率はほぼ100%という調査結果が出てました。学習用端末は最終的に1000台程度貸与されたので、オンライン連絡手段がないケースはほぼ皆無と思います。今後、多子家庭における端末確保とかは、BYOD対応が一般化するのにあわせ、購入補助などは必要と思いますが、連絡手段については今すぐやりましょう。


④「手続き等に遺漏なきよう留意されたいこと。」じゃなーい!バカバカバカー!


5.個人情報の取扱いについて

各地方公共団体等によっては、個人情報を取り扱う事務において、実施機関(教育委員会等)は、当該実施機関以外のものとの間において、個人情報を提供し、又は個人情報の提供を受けるために電子計算機(端末、サーバ等)を結合する場合は、当該地方公共団体の個人情報保護条例等に基づき、個人情報保護審議会等の意見を聴かなければならない場合もあるため、手続き等に遺漏なきよう留意されたいこと。

ここ、この文書で最大の残念ポイントです!!!バカバカバカー!

すでに総務省は「結合」についての件は、H29のこの通知で「国の機関では、じゃんじゃんやってるのに地方公共団体は不自由でばかばかしいから、条例変えようっ」て言ってるのに「手続きに遺漏なきよう留意されたいこと」って最悪です。

ここはちゃんと通知を改めてほしい。

根底には各自治体が個人情報保護条例をそれぞれ持っていることが問題としてあげられます。いい機会なので、文科省からぜひこの紙面で一元化を求める声明を上げてもらうぐらいがちょうどいいと思います。河野大臣も応援してくれるはず。

総務省通知 総行情 第 3 3 号平成 29 年5月 19 日より引用

5 オンライン結合制限
個人情報保護条例におけるオンライン結合(通信回線を通じた電子計算機の結合をいう。)による個人情報の提供について、多くの地方公共団体では制限されているが、個人情報保護審議会等の意見を聴いた上で、公益上の必要があると認める場合などには、個人情報保護条例に基づきオンライン結合が認められている。
一方、行政機関個人情報保護法では、オンライン結合を禁止しておらず、地方公共団体においても、ITの活用により行政サービスの向上や行政運営の効率化が図られていることから、オンライン結合制限については、行政機関個人情報保護法の趣旨を踏まえながら、その見直しを行うなど、各地方公共団体において適切に判断する必要がある。

⑤大事なのは具体的な方法ですね

連絡手段のデジタル化の推進通知-09

連絡手段のデジタル化の推進通知-10

連絡手段のデジタル化の推進通知-11

別添1はスルーして、別添2には具体的な方法が記載されています。フォームの活用のおすすめですか、、、たしかにこれは大事ですが、発信の部分は大丈夫と踏んでいるのでしょうか?問題は双方向にまたがっているのですが、、、むむむ。

そして、先の残念ポイントがあるため、このへんの仕組み、無償だとしても「オンライン結合」なので、オフィシャルには個人情報保護審議会に答申しないと使えないっていう自治体も多いはず。(こちらのnoteをご参照ください)

また、この部分をみて「なんでもかんでも教えられないとできないのか学校は!」という声をFB上でみかけましたが、そりゃそうですよ、実際できてないし。能力の問題ではなく、個人情報保護条例やら、バリアが高いことが問題の核だと思います。

この部分で大事なのは、MSにしてもGoogleにしても無償アカウントを取得してまず活用せよ、という部分だと思います。こういうの使っていいのよ、大丈夫なのよ、なんかあったら全力で守ります!って枝葉末節に至るまでこの変化が浸透するためのメッセージ、メンタルモデルを変えるための丁寧な情報発信が必要なのでは?と思いました。それこそ「通達」を発するべきところ、だと思います。なので、個人情報保護条例も文科省が自ら突破者になるべきなのです。

もし万が一、文科省が特定のビジネスに加担するとは何事だ、という声にひるんでいるなんてことがあるなら、もっと事例を豊富に用意し、学校現場が多様な選択肢を持てるよう、試せるように全力で支援していただきたい。どこの誰にカネが落ちたとしても、この学校の停滞が改善されるための一歩は、これからの日本の社会に大きな意味をもつ一歩になります。

おわりに

先週この通知が出るらしいと伝え聞いたのですが、「さてどうなるか」という軽い疑いの気持ちがほとんどあたってしまったな、という感があります。

これを読んで「ああ、これで現場が動く」と思った方はいるのでしょうか?

各種フォームの活用などはぜひこれを見てトライしていただきたいものですが、そもそもその通知が紙で来るのが前提になっているって、まだまだ道のりは遠いな、、、という感があります。

ICTのCはコミュニケーションのC。双方向のオンライン化を早急に実現できるよう、さらに丁寧な発信サポート、そして学校の現場がホントに変わるところまでの踏み込みをこれからますますお願いしたいと思います。

★世田谷での公教育ICTに関する活動、7月のオンラインミーティング以降あまり動けていないのですが、皆さんがアンケートを通じて要望されていたことは、まだまだ視界が開けていないことばかりです。この通知を踏まえた今後に少しだけ期待しつつ、もっと状況が拓けるような動き、どんなものがあるのか、考え続けたいと思います。



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